ジャーナリスト 立山学   06年1月31日        

私は06年の年賀状に「おめでとうございます」と書けなかった。4.25の尼崎事故に続いて、12.25の羽越線事故が発生し、5名の尊い命がまた奪われたからである。
私は、7・15国鉄闘争日比谷野音集会で「民営化は人を殺す。民営化殺人を阻止するための『ノーモア尼崎キヤンペーン』を強化しよう」と呼びかけた。しかし、尼崎事故の再現というべき羽越線事故を阻止できなかった。私自身の力不足が悔やまれる。 
私は、年末・年始の予定は全て飛ばして、羽越線事故の取材と真相発表に取り組んだ。(羽越線事故問題についての立山コメントと論文 「東京新聞」12月27日号/ 「フライデー」1月20日号/「週刊金曜日」1月13日号/「週刊新社会」1月17日号/「地域と労働」2月号 「真実と展望」47号)
マスコミは羽越線事故は、予測不能の「ダウン・パースト」が原因だ、不運な「天災」だ、として、小さく扱っている。しかし、この事故は、尼崎事故と全く同じ性質のものだ。「安全より利益・運行優先」のJR経営体質がもたらした人災そのものである。余部事故などの過去の風による列車事故の教訓を生かしていれば事故は回避できたのに、JRは全く無視した。
第一が風速計の不備、第二が気象情報の無視、第三がお手盛り運行規制値のいいかげんさが事故につながっている。
気象予報士の森田正光氏は、「寒冷前線があの地域(事故発生地点)を30分もすれば通過
することも予測できた。つまり、一時間、我慢して、列車の運行を停止するか、せめて、徐行運転していれば、事故は起こらなかった可能性は高い。
JRは全く気象情報に注意を払っていなかったか、突風の危険性を承知の上で、走らせたか、そのどちらかでしょう」(「フライデー」1月20日号「突風は予測できた」参照)と断言している。

JRは、「西」も「東」も「東海」も「利益、効率優先」体質は同じであり、その体質を形成した「国鉄民営化政策」は、尼崎事故後もそのままだ。だから「民営化病」の症状としての事故が、JR全体で連続発生している。「民営化というガン」をたたかないで、気休めの「安全性向上計画」などで誤魔化していると、第三、第四の「尼崎・羽越線事故」がより大規模におこるだろう。何としてもこれを防がないといけない。それには、JRの安全監視の世論を高めること(「ノーモア尼崎キヤンペーン」の強化など)と、鉄道現場から、安全を要求して闘える労働運動を再生することが急務である。
国鉄民営化政策の最大の狙いは、「闘う労働運動潰し」にあった。私は、国鉄労働運動についての、過度の「賛美論」に組するつもりはないし、私自身のかつての国労とのかかり方についても反省することが多々ある。しかし、それを前提としても、鉄道事業の安全性の確保には、安全と命をまもるために闘う国鉄労働運動と、それを支えた活動家群がはたした役割は大であったと、事実を調べていくと結論する以外にない。(拙著「国鉄民営化連続殺人事件としての尼崎事故の真相」参照)
「世界一安全・正確な鉄道」と国際的にも評価されていた国鉄を「利益優先の事故連発の危ない鉄道」に変質させたのが、国鉄民営化路線であり、その核心が、安全闘争を闘う職場活動家の排除であった。
「1047名」は「利益優先・効率優先路線の民営化政策」に抵抗し、「安全優先」を要求して闘ったが故に、国家的不当労働行為によって、JRに差別不採用にされたのである。「鉄建公団訴訟」は、国鉄に、不当労働行為という違法行為があった事実を一部だが、裁判所にも認めさせた。
現在、マンション・ホテルなどの耐震強度偽造問題が大きな社会問題になっている。建築業者側は、建築物の安全に必要な、鉄筋を偽装設計で減らして、目先の利益を追及していた。「耐震偽装マンション」は、外観は立派だが、必要な鉄筋が間引きされ、強い地震がきたら、「殺人マンション」に変わる危険があるということで、関係自治体はマンションの使用禁止命令をだしている。
JRの危険度は、耐震強度偽造マンション以上である。鉄道職場で、安全を支える「鉄筋」の役割をはたしているのが、安全軽視を告発する労働運動であり、その活動家たちである。
経営側の安全無視を、現場から告発できる労働運動、活動家を、違法の不当労働行為で排除したのが、「1047名」問題である。それは「偽装設計」で、「鉄筋減らし」をした悪徳建設業者以上に、悪質で、危険性の高い「安全システム偽装設計」だ。民営化は、列車の外観はスマートにしたが、安全軽視で、「走る凶器」に変えている。毎日、数千万人が利用しているJRの安全システムが「偽装構造」なのだから、背筋が寒くなる。
国鉄民営分割政策、とりわけ、不当労働行為型労務政策が、いかに安全軽視の「偽装」かを、闘う労働者・市民が、調査し、告発し、民営化政策の見直し、撤回を迫っていくべき時である。
「1047名問題の解決なくして安全なし」であり、世論の監視と職場の闘う労働運動の再生なしには、鉄道の安全は守れないその「安全闘争再生力」が育つのを芽のうちに押さえ込んでしまおう、というのが、「四党合意」工作であり、「不当労働行為告発つぶし」の攻撃であり、「国労5.27臨時大会闘争弾圧」である。
これらの攻撃は、「民営化翼賛体制」に、国労本部や野党も組み込むことで、「闘いを放棄しない」部分を孤立させ、抵抗の芽をつみとろうというものである。
しかし、少し、長い目でみると、彼らの「民営化翼賛体制」づくりは、ことごとく破綻してきている。
JR連続事故、耐震強度偽装・ライブドア問題などの発生を契機に、日本社会を覆ってきた「民営化・規制緩和」神話にたいする世間の人々の疑念がひろがってきている。
国鉄民営化推進陣営にも、事故のショックと内部の矛盾が広がってきている。「国鉄改革三羽ガラス」の二羽がすでに、事故問題で墜落した。国鉄闘争陣営は、攻勢に転じる情勢である。
06年の冬の寒さは厳しく、春は名のみであるが、散歩道の傍らの梅の古木は、凛として、花芽をふくらませている。私は、今年は、国鉄闘争は、厳しい状況の下でも、各分野でさらなる前進の芽をふくらませるのではないか、と期待している。
最後に、佐藤昭夫弁護士のご奮闘に、心からの敬意を表しておきたい。同弁護士には、国鉄民営分割以前から、新宿中心の諸活動で、色々と教えていただき、ご協力いただいた。国鉄闘争20年の間に、私は、革新系の弁護士や学者も色々だということを経験から学んだ。佐藤さんは「真実一路」の「人生の先輩」として、私は尊敬している。健康をお大事に。