弁 護 人 冒 頭 意 見

              2003年4月21日
              弁護人 葉山 岳夫

 結 語

 弁護人冒頭意見の最後に、弁護人はあらためて、本件刑事事件が国鉄労働運動をつぶすことを意図した不当極まる政治弾圧であり、被告人全員が無罪であることを強く主張する。
 これまでの被告人の意見陳述、弁護人の冒頭意見により、被告人全員につき公訴を提起されるべき理由がなく、また、有罪とされる理由がないことがすでに明らかになったものと思料する。
 今までの意見陳述によって、今回の逮捕・勾留・起訴が、まさに刑事弾圧に他ならないことが明らかとなった。
 第1に、警察・検察権力は戦前に治安維持法とならぶ治安法として労働運動・農民運動などへの弾圧に猛威をふるった暴力行為等処罰に関する法律(以下暴処法もしくは本法という)を国鉄労働組合員が主体となって行った、国労組合員に対する「ビラまき・説得活動」に適用し、暴力行為をねつ造するという暴挙を行った。この日本国憲法と相容れない憲法違反にして、本来廃止すべき暴処法をもって国鉄労働運動の一環としての団体行動に適用した点において警察・検察当局は強く弾劾されなければならない。
 本件刑事事件は、国鉄分割・民営化にひき続く、森、小泉内閣の「4党合意」による国鉄労働運動つぶしの策動が、闘う国労闘争団を中心とした全力をあげた闘いによって、まさに粉砕されようとした時点で、小泉政権と結びついた警察・検察当局が国労本部派の労働者売り渡し策動と相まって、この闘いを戦前からの労働運動・農民運動鎮圧法である暴力行為等処罰に関する法律を用いて制圧せんとしたものである。まさに国鉄労働運動に対する国家権力による違法きわまる介入行為であり、不当弾圧として厳しく弾劾されなければならない。
 第2に、2002年5月27日の臨時全国大会は、同年4月26日の「3与党声明」によって開催せしめられたものである。「3与党声明」は「この対応が4党合意から丸2年を経過する本年5月30日までに国労執行部においてなされない場合は、与党としては、4党合意から離脱せざるをえない」として、「2つの矛盾」の解消、すなわち裁判の取り下げと「闘う闘争団」の切り捨てを5月30日までに迫るものであった。
 しかし、闘争団組合員の最高裁への第三者参加と鉄建公団訴訟の提起は、本部の闘争放棄という重大な危機にあって、国家的不当労働行為の最大の犠牲者として、その人間性のギリギリのところからなされたものであった。
 この第三者参加、鉄建公団訴訟の取り下げに応じない組合員に対して査問委員会に送致して統制処分を行うことおよび国鉄改革法関連訴訟の取り下げを決定しようとしたこの臨時大会に際して「国労が国労でなくなる日」だという正確な危機意識をもって、国労本部の方針案を断乎阻止することを訴えるために「ビラまき・説得活動」に立ち上がった本件被告人の行動の正当性はすでに明白である。
 このビラまき・説得活動は、まさに現憲法で保障されている労働者の団結権の行使であり、まったく正当な労働運動である。これを犯罪視することは絶対に許されない。
 警察・検察当局は、この権利を侵害したものであり、まさに違法な権力行為というべきである。そもそも公訴提起そのものが誤っていたのである。
 第3に、本件刑事事件は、東京地本一部執行部を先頭にした国労本部が逮捕・起訴を引き出したということである。
 本件は、東京地本一部執行部をはじめ国労本部による積極的な警察への協力、いわば被告人らを売り渡すことなしには決して成立しえなかったものというべきである。組合幹部が、同じ組合に所属する組合員を警察に差し出すようなことは、国労運動史上前例を見ない暴挙である。国鉄労働組合幹部にあるまじき所業である。国労本部をはじめ東京地本一部執行部がこのような暴挙に及んだのは、「政治解決」の名の下に推進してきた「4党合意」が破綻すれば、1047名の闘争団と家族を見捨てて連合系組織へスムースに逃亡することができず、自派組織の大崩壊につながりかねないからである。それ故にあえて労働組合の団結自治を自ら放り投げ、警察に組合員を売り渡していったのである。
 第4に、政府・与党の意を体した警視庁公安部・検察当局によるきわめて政治的な弾圧だ、ということである。
 1987年の国鉄分割・民営化は、中曽根の「戦後政治の総決算」攻撃の中心軸であった。この過程で10万人の国鉄労働者が職場を追われ、これに反対する国労、全動労、動労千葉にたいして容赦ない組合つぶしの攻撃が加えられ、国労、全動労、動労千葉の組合員ら1047名が解雇された。国労は、86年修善寺大会や国労闘争団の結成をとおして、曲がりなりにも全動労、動労千葉などとともに「国鉄1047名闘争」の中心組合として闘ってきた。
 「4党合意」は、首を切った自民党ら与党が、首を切られた国労に、「JRに法的責任なし」を認めさせ、「不当労働行為はなかった」とする「国家的不当労働行為の総仕上げ」をはかる攻撃であった。これにたいして、闘争団・家族をはじめ国労組合員、支援共闘から強い抵抗と反対の闘いがわき起こったのは当然である。
 その抵抗と闘いが、「4党合意」を破綻に追い込み、ついに2002年12月、「4党合意」は崩壊した。政府・与党が総がかりで進めてきた国労本部を取り込んだ国鉄闘争解体策動は、ここに大破産・大崩壊を遂げたのである。
 今回の弾圧は、こうした「4党合意」の大破産に大打撃を受けた政府・与党の意を体した警察の報復弾圧である。警察権力は、「4党合意」反対闘争の中心的な存在である被告らを逮捕・起訴することによって「4党合意」反対派総体に打撃を与え、これを分断し、国鉄闘争が「1047名闘争」として新たに発展することを押しつぶそうとしたのである。それは、戦争と有事立法、大失業下で、日本の労働運動が「国鉄1047名闘争」を水路に、新たな高揚と発展を遂げてゆくことを何としても押さえこむためでもあった。
 そのために、あえて憲法28条で保障された労働者の団結権、労働組合の団結自治を踏み破って治安法たる暴処法を適用するという不当介入を強行したのである。
 第5に、本件裁判において裁かれるべきは被告人たちではない。裁かれるべきは、国鉄分割・民営化によって国労を崩壊させようとした中曽根以来現在の小泉内閣に至る政府・与党であり、「国家的不当労働行為」に加担し、被告人らを逮捕・勾留した警視庁公安部、さらに起訴した検察当局である。また、頼りとした「4党合意」が崩壊したのに、その誤った指導の責任をとろうともせず、自らの延命のため団結自治を投げ捨て、警察の介入を呼び入れた国労執行部、束京地本一部執行部である。
 本裁判は、国鉄1047名闘争に重大な影響を与える裁判である。また有事立法下の労働者の団結権保障の帰趨のかかった憲法裁判である。日本の労働運動が戦前と同じような道を歩むのか否か、多くの人々が裁判の成り行きに関心を寄せている。
 咋年12月、元日弁連会長や学者、評論家など400を超える人々と団体が呼びかけ人になり、「国労5.27臨時大会闘争弾圧を許さない会」が作られ、この弾圧の不当性を広く訴える運動が進められている。多くの人々がこの裁判を注視し、公正な裁判、無罪判決を求めているのである。
 裁判長はじめ裁判官は、公正な裁判を進め、被告らの無罪判決を下されんことを切に求めるものである。
 また、8名の被告は、家族・友人から引き離され、未だ東京拘置所に勾留されたままである。しかも裁判の度に刑務官が両脇から挟む重戒護体制がとられ、一部解除されたとはいえ接見禁止を受け続けている。1日も早く保釈された上で、被告人らに無罪判決されることを切に要望し、まとめとする。