第84回公判報告
11月14日

暮早し雌雄を決すとき来たり 報告者 小泉義秀

2007年11月19日発行

★松崎被告への検察側反対質問を完璧に粉砕!

 被告人質問の2人目である松崎博己被告の第4回目である。松崎被告への弁護
側質問と検察側反対質問が行われた。検察側反対質問は、的外れのこじつけを押
しつけるような愚問ばかりだった。裁判長の最後の質問は、この事件の本質をつ
いたもので裁判長の心証の一端を反映したものだった。

○しゃがんでいた松崎被告が池田を蹴るのは無理

 12・9「国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会」全国集会は無罪獲得・国労再
生・1047名闘争勝利に向かって極めて重要な集会となった。公判前の昼街宣
はこの12・9集会への結集を呼びかけるビラをまく。公判の傍聴者は47名。傍聴
の感想を書いて下さっている下山房雄先生の他に、宮島尚史先生、戸塚秀雄先生
が傍聴に来てくれた。裁判見学の一般の傍聴者も数人。
 13時17分に開廷となり、一瀬敬一郎主任弁護人が質問を始める。一瀬弁護人は
池田事件についての池田自身の証言に対して松崎博己被告に問い「池田証言はデ
タラメ。私はホテルの入口と歩道の境界の外側にしゃがんでいたのですからね。
池田氏の証言は事実ではありません」との答え。池田は歩道から少し中に入った
ところで松崎被告に「両太股を膝蹴り」されたと証言しているのであるが、松崎
被告は、歩道の境界の外でしゃがんでビラを読んでいたのだから、池田を蹴るの
は不可能なのだ。以前、松崎被告がしゃがんでいた事実を弁護側が初めて明らか
にした時の検事のうろたえぶりが思い出される。検察側は松崎被告がしゃがんで
いたことを知らないで、池田事件を捏造したからあらゆる面でつじつまが合わな
くなってしまったのだ。
 幟旗をつける旗竿が法廷に持ち込まれていたのはなぜかと思っていたら、松崎
被告が平山にリュックを持つ手で押されてガードレールに押しつけられる場面が
法廷で再現された。旗竿はガードレールの上部の位置を特定する役目を果たした
。現場のガードレールの高さは0・78メートル。この場面の質問は小島好己弁
護人が担当した。
 再び一瀬弁護人、小島弁護人がいくつか質問した後で、大口昭彦弁護人が逮捕
後の取調べ過程のことを聞いて、5・27弾圧の不当性を浮き彫りにする。松崎被
告は取調べの公安刑事が述べたことで一番印象的な事柄を次のように話す。「大
体、労働組合じゃあこの程度のことはいくらでもある。普通なら事件にはしない
。しかし、今度は違う。背後に中核派がいるからだ。起訴されると3年は出られ
ない。だから、事実関係をはっきりさせればいいんだ。救援連絡センターの弁護
士を解任しろ」等々と公安刑事が述べた不当な取調べの実態を暴露した。

○的はずれの愚問を繰り返す検察官

 14時41分から14時55分まで休廷となり、検察官の反対質問が始まる。最初は高
橋基検事である。高橋検事は、第81回と82回公判で修善寺大会(1986年10月
)に関して「代議員宿舎のドアを蹴破って中の代議員を連れ出すようなことがあ
ったと述べましたが、あなた自身もそういうことをやったのですか」と問う。「
私自身はやっていない」との答え。次に、「2000年7・1臨大のときに壇上
に上がって『闘争団はみんな上がれ。新たな執行部を作ろう』と松崎被告が述べ
たのは事実ですか」という質問には「間違いない」と回答する。被告であなた以
外に上がった人はいますか、上がった人の名前を言えという質問に対しては、「
ビデオを見ればわかるし、正確さを欠いても困るので答えない」と回答を拒否す
る。
「5月27日当日、本郷の旅館からホテルへは誰と一緒に行ったのですか」という
問いには「向山さんを除くここにいる被告の6人と木村・出口さんら10人」と答
える。
 池田事件については「あなたは池田さんが出てくる時にしゃがんでいたと言い
ましたが、しゃがみ始めた時間はいつですか」と聞いてくる。「バスが到着して
、松田さんが東交の運転手に話をしていたのが終わったくらい」と回答。次に検
察官は池田がホテルから出てきた時にしゃがんでいた松崎被告が、どうして橘被
告がビラをまこうとするのが見えたのかとか、重要なビラまきであるはずなのに
なぜあなたはしゃがんでいたのかとか、池田さんが橘さんと松崎さんの間を通っ
ていくのは通りずらいのではないかとかいう愚問を投げかけてくる。
 松崎被告はホテル方向を向いてしゃがんでビラを読んでいたが、直ぐそばにい
る橘さんがビラをまこうとする動きは直ぐにわかる。しゃがんだままでいたのは
、1人で出てきた池田にビラを渡すのは橘さん一人で十分だと思ったからであり
、このあたりは弁護人の問いに答えて十二分に述べている点である。また、池田
が「関係ないからどけ」と言って橘さんの胸を押してきたから、松崎被告が「何
だ」と言って立ち上がったという状況になったわけで、池田がビラを受け取って
いたら、そのまま通り過ぎていたにちがいない。
 さらに検察官は、松崎被告が「急に頭の上で怒鳴り声がした」と述べた点をと
らえて、橘さんや池田を松崎被告が見ていたのに「急に声がしたと言うのはおか
しい」などと言い出す。「口を動かすのが見えたのか」「怒鳴り声を聞いたのと
、『何だ』と言ったのと、立ち上がったのは順番をつけるとどうなっているのか
」などと、これまたくだらないことを聞いてくる。松崎被告はと順番をつ
けるような感じではなく、それらは全部同時の感じと答える。口を動かすのを見
たかについては「わからない」と答えているのに、検察官は同じ質問をくり返す

 反抗的だった池田がなぜ後ずさりしたのかという質問については、「私が『何
だ』と言って立ち上がったこともあるでしょう」と答える。
 次に検察官は松崎被告が池田にビラを渡そうとしたとき「何だよ」とか「何す
るんだよ」とかいう言葉を発したと述べたことと、ビデオに録音されている「何
するんだよ」という音声を重ね合わせ、誰が何を述べたのかわからないかのよう
な混乱した質問をしてきた。しかし、ビデオの「何するんだよ」の音声は、ビラ
を渡そうとした松崎被告の手を池田が叩いたのを見た出口さんが抗議の声を
あげたものであることは、出口さんの証言で明らかになっており、この質問も愚
問であった。

○墓穴を掘った高橋検事の質問

 松崎被告が池田に殴られた件について、高橋検事は「口で抗議するだけで収ま
りましたか」と聞いてくる。「収めなかったらしょうがない」との答え。しかし
、次の質問にはあきれてしまった。「あなたが殴られた場面は、国労本部派の人
に対してバスから降りてこいと言って顔を右に振った場面ではないですか」と述
べたからである。ビデオのこの場面は誰が見ても、池田が松崎被告を殴った結果
、顔が右に振れているのは明らかだからだ。そのシーンは3回あり、池田の拳が
ビデオに映っている場面もある。にもかかわらず、こういうことを高橋検事は得
意そうに述べたのだ。この質問が検察官の本質と水準を集中的に体現した愚問の
典型である点を強調しておきたい。高橋検事はこの質問で完全に墓穴を掘った。
 向山被告との関係について「あなたは事件前、向山さんの顔を知っていました
か」と問うて「ないです」の答え。「向山被告と会って会話をしたことはありま
すか」との質問には「会話をしたことはありません」と回答する。すると検察官
は「杉並ビデオ」の7時17分25〜30秒を再生する。コマ送りやスローで何回も繰
り返し、向山被告が松崎被告に話しかけたかのような場面を強調しようとする。
検察官は、松崎被告が向山被告と話をしているではないかと言いたいらしい。し
かし、松崎被告が答えたように「僕は会話をしてませんよ」というのが真相であ
る。「一度も面識のない人間に声をかけられて、その話に乗れるはずがないじゃ
ないか」という松崎被告の答えで、検事はこの質問をやめてしまった。
 高橋検事が松崎被告が逮捕された日に自宅から押収された文書を示し「見覚え
がありますか」と問うと「知らん」との答え。
 藤本治彦検事は5・27当日のビラを示して、誰が書いて、誰が印刷したかと聞
いてくる。これについても「知らない」と答える。被告人質問は証人尋問とは異
なり、答えたくないことは答えなくてもよい。被告人の黙秘権が保障されている
。この5・27当日のビラについては、国労共闘代表の吉野元久さんの証言ですで
に明らかになっている。
 検察官は最後に「杉並ビデオ」の7時13分30〜40秒を再生して、松崎被告が池
田の腹部を殴ったことを認めさせようとする。ビデオ再生でそういうことを印象
づけようとした。最後の質問が「池田さんがこの法廷でこの場面を何と証言した
か覚えていますか」であった。松崎被告は「覚えていない」と答え、検察官の質
問が終了する。ビデオには松崎被告が池田の腹部に腕を伸ばしている状況が映っ
ている。池田はこの場面は松崎被告に殴られて痛かったと証言したのだ。しかし
、松崎被告と池田の間にはガードレールがあった。この場面では、池田はバスの
中央乗降口の一番下のステップに立っているので、歩道にいる松崎被告がガード
レール越しに腕を伸ばしても池田の腹部に届くか届かないかというほどの距離が
あった。だから、松崎被告は殴っていない。
 この点以外にも池田証言には幾つもの嘘があり、嘘の池田証言を引き合いに出
してもしょうがないのだ。
 17時04分。青柳裁判長が「一点だけ聞きたい。本部派の組合員にビラをまこう
としてもみ合いが生じたとあなたは述べましたが、普通はビラまきでもみ合いは
生じないわけですね。もみ合いの原因は何だとあなたは思いますか」と聞いてく
る。「本部派が意志一致をして隊列を作ってバスに乗り込んできた。ビラをとら
ない意志一致をしていた。笹原・江田が先頭になってこういうふうに行くんだと
いうことを示してもみ合いになった」と松崎被告が答える。一点だけと言ってい
た裁判長はもう一つ「あなた自身がもめごとになったなと思ったのはいつですか
」という質問をぶつけてくる。「本部派が集団でぶつかってきてビラをとらなか
った時です」と返す。

12・5第85回公判 ★富田益行被告人質問1回目
    ○12時15分〜傍聴券闘争   ○13時15分〜104号法廷  
12・9許さない会全国集会
 ○13時開場  ○かつしかシンフォニーヒルズ(京成青砥駅徒歩7分) 

●下山房雄の傍聴記
松崎さんの質問試合最終回
?防衛戦に勝利!

第84回公判を傍聴して

 今回公判は、被告・松崎さんに対する検事の反対質問が行われるということで
、何が起こるかと緊張しながら傍聴参加した。橘さんへの反対質問(80回公判)
傍聴には欠席だったので、検事の反対質問傍聴は初めて。その質問に先立って、
弁護側の最後の質問が行われた。一瀬弁護人から「池田事件」、小島弁護人から
「平山事件」、そして大口弁護人から2002年10月の逮捕・取調過程でのことにつ
き松崎さんに尋ねることが行われた。警視庁の公安警察官は、「この程度のトラ
ブルのあるビラ撒きは運動上よくあることでたいしたことはないのだから、事実
関係を述べれば事件にしない。だから言ってくれ」と、黙秘を貫いていた松崎さ
ん自身に迫ったのみならず、逮捕直後に奥さんにもそういう松崎さんへの説得工
作をやらせようとした。公安警察の卑劣なやりかたが、法廷で初めて陳述された
。この話は以前から聞いてはいたが、通常だったら事件にならないことを、中核
派が背後にいると決め付ければ世間は納得すると考えて、長期勾留、刑事起訴を
行った権力の卑劣さに改めて怒りを覚える。
 通常だったら刑事犯罪に問われることのない、対峙する二つの勢力の「もみ合
い」「押し合い」「小突き合い」が、特定の政治勢力と結びつけて認識され、そ
の勢力のレッテルを貼られた側が犯罪者となるのでは、思想裁判ではないかと私
は考える。私の政治的見解は、ヨーロッパ流に言えば左翼、日本流に言えば革新
の立場であって、革共同中核派=極左とは違う。しかし、ビラ配りなどの実力行
使による表現の自由の発揮なしに、民主社会は無いと考え、あの程度の有形力行
使が刑事犯罪とされたのでは、日本社会全体あるいはそれを支える労働組合等様
々な組織の民主主義は無いと考え、「国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会」の
活動に参加している。被告たちが背負っている思想が中核派であろうが無かろう
が、刑事弾圧にさらされている行為自身から判断しての支援参加である。
 この点で深刻に懸念されるのは、裁判所の態度だ。この傍聴報告連載で再々触
れてきたように、革マル派イメージで語られる「浦和電車区事件」では途中から
法廷入口での凶器検査が取り止められた(それで有罪判決になったわけではある
まい?!)。私がこの5・27裁判と並んで毎回傍聴している、共産党ビラ入れが犯
罪とされた世田谷国公事件では傍聴希望者数が104号傍聴席数にほぼ落ちついたと
ころで、公安刑事に顔をさらす場=傍聴券抽選場での待機が無くなり、凶器検査
はもともと無い。なぜ、この5・27法廷のみ、抽選待機と凶器検査を続けるのか
。裁判所が中核派背後存在の亡霊にとりつかれているとしか思えない。ことは公
判法廷の外のことかもしれない。しかしそうした外の体制が維持されることが、
公判そのもの自体を左右していないとは到底考えられないのだ。この思考の脈絡
で、青柳裁判長の今回公判最後の局面での「確認」(ビラ撒きが「もみあい」に
なった根拠を松崎さんに尋ね、それは本部派がビラを受けとらずと決めてバスに
向かったからと答えさせたもの)が何を意味するのか、訝る。ビラを受け取りた
くない者に無理に渡そうとしたから、ちょっとの衝突でも暴力犯罪としたいとい
うのか??
 検事がビデオ画面を映しながら、松崎さんの近接前進、注目、その他対峙する
相手への積極的アクションの確認を求めることへの回答は、殆ど「違う」「知ら
ない」であった。しかし、検事の言うとおりの行為であっても、それが暴力犯罪
であるわけがない。また、既に吉野証人が71回公判で事件前夜に労組交流センタ
ーの要請に国労共闘が応える形で旅館に参集、当日の行動につき協議したことを
証言しているのだが、松崎さんは国労共闘九州のメンバーであることも不知と答
えた。検事側は、天皇暦表現を松崎さんに「何のことかわからん」と言われて西
暦表現に言い直されたりするなど、彼を遠巻きにして、おろおろうろうろ応酬を
繰り返した感の反対質問であった。よい!