Play to the beat...本物のバンド物語

-1986年春-

 バンドリーダーの若松から電話が入った。
「明後日、福岡空港に2時集合な」
えっなんで?
「いや、レコーディングよ、デビュー決まったけ」
うそー!何それいきなり!!
「富士家のCMソングOK出たげな。ほいで事務所のもんが羽田空港に迎えに来るらしいよ、飛行機の切符はもう送ったから今日あたり着くやろうて」


 とんでもない話だった。地元北九州では結構人気はあったが、まさかホントにレコードデビューで上京とは...しかも話がいきなりすぎて良く分からない。
一足先にデビューを決めたup beatはもう去年から東京に行っているのにまだプロとしての活動はやってないと聞いていた。そう、それくらい準備期間が要るんじゃないのか?リーダーは電話口で今後のスケジュールを読み上げている。レコーディング、合宿、キャンペーン....ひと月後にはもうレコードが出るという、本当なのか?
 何ヶ月か前、レコード会社のディレクターが北九州小倉でのライブを見に来た。そしてえらく感動したらしく、「半年後に迎えに来るから」と言って東京に帰っていったのを急に思い出した。本当に来やがった...
それから、殆ど友達にも別れを言えないまま約束の飛行場へ向かい、そして初めて間近に見るジャンボジェットに興奮しながら「俺達これでもう芸能人ばい、ロックスターになるんよ!」と田舎っぺまるだしで搭乗口へ向かうメンバーは今後起こるであろう数々のトホホな事件を知る由もなかった...

つづく

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主な登場人物

この物語は限りなく実話に近いフィクションです