Play to the beat...本物のバンド物語                物語を最初から読む


1986年春 3

 オレ達は高級そうな焼肉店で社長やマネジャーと共に今後の方針などを話し合っていた。

社長「君たちのイメージコンセプトを決めようじゃないか」
メンバー「どうすかね〜」(食事に夢中)
マネジャー「社長、こんな奴らちょっとこの辺にはいないっしょ」
社長「そうだな、よし、知的な不良だ!」
メンバー「・・・」(それって一番たちの悪い奴らじゃ...)
マネジャー「いいですね、それ決まり!」

 そんなこんなで、わけの分からないまま宴は進んでいった。
そして、その晩からオレ達は吉祥寺のこれまた高級そうなホテル住まいと相成った。明日からは早速レコーディングだ、普通本番のレコーディングを前にデモテープなどを録って色々とディスカッションを交わすものだが、この時は何から何までいきなりである。その晩はメンバーみんな「母ちゃん、オレは日本の星となるばい!」とこれから歩き始めるであろうスター街道を夢見ながら眠りに就いたことだろう。

 さて、いよいよレコーディングスタジオにて作業が始まった、これは一般的にはあまり知られて無いんだがロックやポップスのレコーディングに於いては「ドンカマ」という所謂メトロノームをヘッドフォンで聴きながら録音を進めていく。一つには演奏リズムをきっちり一定に保つため、またエンジニアが編集の時に手際よく作業が出来るようにするためである。ところがオレ達そんなこと聞いたこともなかった、いつだって戸畑のハイハットがメトロノームだったし、若松のテレキャスターのヘッドが指揮棒だったからだ。もう大変だった。カチ、カチ、カチと聞こえていたドンカマが、ンカチ、ンカチ、ンカチになりやがてぐしゃぐしゃになってしまう。地元北九州では人気実力共にナンバーワンでは無かったか?後輩バンドに偉そうに講釈タラタラでは無かったか?プライドと自信がぼろぼろとメロンパンの皮のように崩れて行く...すっかりしょげてしまったメンバーは東京ラーメンの真っ黒いスープのせいにするしかなかった。

つづく



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主な登場人物

この物語は限りなく実話に近いフィクションです