Play to the beat...本物のバンド物語

1986年春 2

 初めて乗るボーイング747の機内でのオレ達は遠距離出張のオヤジ達のなかでさぞ滑稽だっただろう。金髪やら茶髪の兄ちゃん達が田舎なまりで大声で夢を語り合ってる。なんせオレは金髪だという理由だけで警察に職務質問を受けたことが有ったぐらい時代はまだパンチが主流だった(北九州では)

「やっぱザ・ベストテンって松田聖子と楽屋は別かのう?」とか
「ドレッシングはピエトロのを東京のヤツに見せびらかして持ち歩くかの」とか、フライトアテンダントの「左手には富士山が見えております」の声に全員窓に顔をくっつけて「上から見る富士山っちゃこんなんなっちょんやの」

 完全にアホのお上りさんである。そんなしょーもない話をしているうち、あっと言う間に羽田に着いた。もちろん機内で飲み食いできるモノは全部たいらげている。そして荷物を受け取りゲートを出るとお迎えが来ていた。そこにいたのはマネジャーになる予定の男で何と車は北九州ではやくざか議員しか乗ってなかった高級車である。
「おいおい、ベンツやんか!すげー!」
「やっぱちがうの〜さすが東京のプロダクションやん」
それから、目の回るような首都高速に乗り恐ろしい数のビルを横目に見ながら事務所に着いた、そしてスタッフのみんなと挨拶をすませると、社長が「よっしゃ食事に行こう!みんな焼肉でいいかい?」そしてまたベンツに乗り六本木だか渋谷だかの高そうな焼肉屋に連れていってくれた。オレ達はもう完全に舞い上がっていて、もはや東京を制覇したかのような気分になっていた。

つづく



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主な登場人物

この物語は限りなく実話に近いフィクションです