シーズン総括 - 2006


シーズン結果

優勝は本命だった浦和。厚い選手層は予想通りだったが、強さの秘訣は予想された攻撃力ではなく、強固な守備力だった。
川崎F の躍進と、大きく主力が抜けたG大阪が3位、若手主体の清水が4位と、やはりJリーグはちょっとしたことで大きく順位が変動するということが証明されたシーズンだった。

2006 年のジュビロ磐田

シーズン 5位という結果は決して悪い物ではない。しかし、内容に納得しているサポーターはいないだろう。
そしておそらく、ジュビロの歴史上で大きな変換点となった一年といえるだろう。

監督の交代から、完全にサッカーの方式変更が行われた。
アジウソン監督就任で一番大きなポイントはマンマークを基本とする守備。監督交代直後は明らかにその戸惑いが見られ、それが原因による失点と、敗戦がいくつか見られた。結果、シーズン終了まで過去に比べて披シュート数は増えた。どうしても “個の力” で守る傾向が強くなるので、個で負けた場合にピンチを生みやすいからだと考えられる。
しかし、この件に関しては好意的に評価したいと思う。というのはこれは必要なプロセスだと考えるから。かつてオフト時代にやっていたのがこのようなマンマークのシステムだった。それを三年かけてみっちりやった後でゾーンの守備となったが、この初期のマンマークがあったこその後の安定した守備力であったのではないかと感じるからである。服部や鈴木秀人などのデビュー時は完全にエースキラーのマンマーク要員であり、そこで経験を積んだ上で後の実力となった。
その “個の力で止める” は組織的な守備をしたところで、サッカーをやるかぎりどこかのポイントで必ず出てくることである。“個の力” を引き上げた上で、組織を作ることが将来必ず力となるはずだ。かつての全盛期のジュビロとは、そのメンバーが若い頃にそういった “個の力” を引き上げるような蓄積や、各種のシステムの経験を積んだ結果として生まれた物であり、将来再び全盛期を生み出すにはそういったものが必要だと考える。実際、シーズン終盤は激しく当たるようなしつこい守備がみられることが多くなった。全盛期のジュビロはあれくらいの激しい当たりの守備をしていた。これは良い兆候だと見る。
(最近のインタビューで福西も、オフト時代のマンマークの話を出していた。同じようなことを考えているのではないだろうか。それからドゥンガもジュビロで闘争心が失われたことをコメントしており、これも重なる話ではないだろうか。)

そして、若手起用というのがもうひとつの大きな変化である。
若手の抜擢は、外国人新監督ならではのことであると言える。(特に身内の) 日本人監督はどうしても大抜擢というのができない。外国人監督は自分のシステムを実践するために激しい好き嫌いを表面化させて大抜擢をする。オフトは奥を絶対使わない代わりに福西を抜擢し、フェリペは奥や山西を抜擢した。そうやって若い選手を抜擢して経験を積ませることは選手層の厚さにつながる。
アジウソンは上田と犬塚を抜擢し、我慢して起用している。これが必ず将来の糧となるはずだ。

もう一点、指摘されるのがリアクションサッカーであること。
この件については監督の影響も多少あるにしても、選手の特性による影響の方が大きいのではないかと考える。藤田、名波といったボール扱いのテクニックが優れた選手が中盤にいたことからボール回しをしてから攻めることができた。現在攻撃のキーマンは太田であるわけで、走ってカウンターができることが長所であり、それが目立つということではないだろか。
正直な話、(山本監督が軽視した) ボール回しをちゃんともう一度練習するようにしておいて、あとはボール扱いが上手く視野が広い選手が増えれば、自然にかつてのようなアクションサッカーをするようになるだろう。後者の選手編成は狙って出来るかどうかはわかないので実現でいるかどうか分からないが、前者のトレーニングをやり続けることが大切である。アジウソン監督就任後、ボールの回し方は明らかに以前に状態に戻ってきた。メディアの報道でも 「かつてジュビロがやっていたような練習」 に戻っているそうである。やるべきこととしては間違っていないと思う。

監督采配については疑問が残ることが多かったのも確か。
特にリードしたら守りに入る方式は、上に述べたように当初の戸惑いも一因と思われるが、結果が出ないことが多かった。おそらく、ブラジルでの監督時代には上手くいっていたのを、ジュビロでやったらうまくいかなかったというのが正直なところではないだろうか。シーズン終盤では多少そのような采配は減ったようである。このあたり、アジウソン監督がジュビロの選手とJリーグのレベルなど全てを見渡してうまくアジャストしたのか来季が見ものである。個人的には、エンターテインメント的にも守りに入るよりはもう一点取りに行く方が良いと思うのだが。
もう一点、相手に合わせてシステムを変えることについてはなんとも言えない。しかし、力がついてくればある程度の自分達のスタイルはできてくるのではないだろうか。

正直な話、アジウソン監督でJリーグ制覇ができるかどうかはちょっとわからない。しかしながら、現在のジュビロに必要な、変化、若手の抜擢、といったものを実現してくれる上に、かつてのパスサッカーの方法をある程度尊重してくれている監督であり、現時点ではこれ以上望めない監督交代だったといえるのではないだろうか。来シーズン、このように若手に経験を積ませて成長を促しながら、同時に采配をチェックし、再来年に勝負ができる監督かどうかを見極めることが必要である。


最後に山本前監督の話を。
山本ジュビロと大熊 U20」 「失われた4年」に書いた話で、おそらくドゥンガはあのサッカーに賛成しないだろうと思っていたが、案の定最近のインタビューで一時のジュビロの方向性について痛烈な批判コメントを残していた。ああやっぱり、である。
どうして山本監督がああいう路線をするべきだと判断したのか理解に苦しむ。いずれにしても、山本監督の五輪代表とジュビロでの失敗は日本サッカーにとって痛かったけれども貴重な失敗経験であったということになるだろう。これが無駄にならないことを期待したい。

                 
  2006年 (終盤) の基本布陣    
                 
        前田        
                 
  船谷
(西、上田)
  福西   太田    
                 
    菊地
(上田)
  ファブリシオ  
                 
  上田
(服部)
  田中
(大井)
  鈴木
(金)
  犬塚
(鈴木)
 
                 
  川口  

 

選手個別の話を。

なんといっても現在のジュビロの中心は太田となったといえるシーズンだった。その運動量とスピードだけでなく、シュート力もチーム内でトップクラスであろう。この先しばらくは太田は攻撃の中心となるだろう。

それから代表入りした前田も、どこに出しても恥ずかしくないJリーグのトッププレーヤーまで成長した。あとはもっとわがままな FW になって欲しい。た
ただし、前田がいないとゲームにならないような状況がみられたのも確か。バックアップ選手が必要だし、場合によっては 2トップを組めるくらいの有能な助っ人 FW を獲得するのが筋かもしれない。(この辺りはチームの育成との組み合わせで考えるべきかも知れないので難しい問題だが。)

福西の強さ、上手さは相変わらず。ただし、軽率なプレーが多いのが気になる。現在は諸刃の剣と言えるだろう。アジウソン監督も福西を途中交代することが多いが、その処遇を悩んでいるのであろうか? かつてのように自重してくれるなら、ボランチでの起用が望ましい気がするが。

ファブリシオについては、特にシーズン後半はチームの柱のひとりであった。ここ数年獲得した外国人助っ人ではトップレベルの選手であろう。

抜擢された上田と犬塚について。
上田の前線への丁寧なパスは明らかに良い。服部に代わって起用されるのも納得だった。ここで考えて欲しいのは、藤田、名波はチームに入ったのが大卒の22歳。そして同じピッチにはファネンブルグやドゥンガがいた。それを考えると現時点の上田は十分な働きをしていると言えるだろう。まだ伸びシロもあるはず。更なる成長で、藤田、名波レベルの選手に成長することを期待したい。
犬塚はそのスピードに大きな可能性を見せてくれた。おそらくこの先壁にぶつかるだろうが、それを乗り越えて主力選手として活躍して欲しい。

ベテランDF 陣と GK川口は今年も最後まで踏ん張ってくれた。とはいえ、年齢からしても怪我が増えるのは仕方ないだろう。来季終了時にはスタメンは変わっているのではないだろうか。ただし金に関しては、おそらく韓国代表の五輪で抜ける上、助っ人としての野力は正直不満である。数年後チームにいるとは思えないし。(このあたりは外国人選手の獲得方針自体に不満。) アジウソン監督には彼以外の若手選手の抜擢を期待したい気もする。(来季復帰予定の加賀?)
ベストイレブンに選ばれた川口はもちろん十分な活躍をしてくれたわけだが、もう少し前線へのフィードはなんとかならないのだろうか。ライン際を意図的に狙っていることは知っているが、ラインを直接割るシーンが多すぎる。スローはかなり良いと思うのだが。

正直、船谷については少し期待外れだった。かなりのチャンスが与えられたはずで、もう少し可能性を見せて欲しかった。
それから残念に思ったのが競争に敗れて出場機会が少なかったカレン、森下、怪我に苦しんだ西、成岡。怪我から復帰する村井と共に来季に奮闘に期待したい。特に DF の高齢化が進む中、森下には頑張ってもらいたいところだが、もし監督の意向に合わないならば、数年レンタルで経験を積むべきであろう。


最後に、名波、服部の移籍は決まりのようである。彼らがこれまでの貢献は言うまでもない。本音を言えば、薄いDFの控えや、若い選手の経験不足を埋めるためにバックアップとして来季も残しておきたい人員ではあるが、スタメンを奪われた状態で移籍志願も当然。お互い良い結果になることを期待したい。