流行音楽についての雑記 (1999年春編)

1999/06/02

最近の流行音楽について。

日本語ラップ 『Grateful Days』

最近久々に、大いに気に入ったヒット曲があります。Dragon Ash の 『Grateful Days』。日本語ラップです。
最初に聴いたのは
スペースシャワーTVでやってたビデオクリップ。曲の途中から見たのですが、すぐに「これは!!」と思いました。すぐにクリップの最後に出てくるアーティスト名、曲名をチェック。「Dragon Ash ? あれ、彼らロックバンドじゃなかったっけ???」
ま、ともかくこれ、かっこいいです。日本語ラップ聴いてかっこいいと思ったのは初めて。

過去、日本語ラップのヒット曲といえば、小沢健二とスチャダラパーの『今夜はブギー・バック』。 EAST END×YURI の 『DA.YO.NE』 くらいでしょうか?
まあ前者はヒットの要因としては小沢健二のウェイトが大きいし、またスチャダラパーは「かっこいい系」ではない。後者はあきらかに「おもしろい」という要素で売れました。やはり、「かっこいい」という要素の日本語ラップのヒット曲は 『Grateful Days』 が初めてでしょう。

かっこいい要因。まず、歌詞が韻を踏んでいること。これぞラップだ、というかっこ良さです。
それから歌詞の内容がいい。今までの日本語ラップっていうのは、どうも照れ隠し的な、面白いおかしいものが多かったと思いますが、(まあ、アンダーグラウンドには真剣な歌詞のものもあったのだろうけど、) この歌詞については、むしろラップだからこそ「ぶっきらぼうに」素敵な事が言えたという面があったかもしれません。
それからサウンドがいい。特にビデオクリップになってるバージョンなんですが、かっこいいんだけど、心地よいです。そう、「心地よい」という言葉がこれほどしっくりくる曲はありません。
それで「なんで心地よいのかな?」ってしばらく考えていたのですが、わかりました。 『
パッヘルベルのカノン』 なんですね。一方の曲に、もう一方を重ねて口ずさんでも全く違和感がありません。カノンというのは、いわゆる輪唱のような形式の音楽ですから、同じコード進行が繰り返されることになります。その構造が HipHop や Techno といったジャンルの音楽と同じなのです。
で、それを意識して作ったのか、あるいは偶然似ているのか、とずっと疑問に思っていたのですが、ある時、Dragon Ash 系の Web page を見ると、この曲のストリングスの部分が 『パッヘルベルのカノン』 をサンプリングしていると書いてありました。なるほど、有名なフレーズの部分ではないので気が付きませんでしたが、確かに原曲の一部のようです。となると、素材を持ってきてから曲か出来たのかなぁ?ま、ちょっとわかりませんが。

いずれにせよ、この曲のヒットにより、日本語ラップに目覚める若者が増えることは間違いありません。昨年後半の UA、Misia で始まった R&B ブームに加えて、HipHop も日本の音楽のメインストリームに入って来るのは固いです。

Misia

出てきたついでに Misia の『BELIEVE』。これはいい曲です。気に入ってます。
ビデオクリップもいい感じです。あの階段が何を暗示してるのかよくわからないけど、やっぱり人生かな? 途中出てくるフクロウのアップも印象的。
難癖つけるとしたら、あの髪飾りなどのトータルの顔のメイクか?
maxell の CMの宇宙服の方が、同じく奇抜だけどかっこいいと思います。

ちなみに、僕はシンガーとしては Misia をかなり買ってます。歌ってる曲も僕好みのものが多いです。

宇多田ヒカル

さて、宇多田ヒカル。その R&B の流れで、一番恩恵を受けたのが彼女ですね。一応、流行物はチェックを入れることにしてるので当然アルバム「First Love」を買ってきました。
シングル曲はかなり気に入っていたんですが、アルバムを通すと思ったほどじゃないな、というのが正直な感想。なんか似たような曲が多い印象です。この曲とあの曲、サビを入れ替えてもそのまま使える、というようなものもありました。
歌詞の乗せ方にしても、それを新しい感性と評する人もいますが、やや稚拙な印象(?)も拭えません。言葉の音節と、音符のつながりは無茶苦茶と言ってもいいですね。子供に俳句をつくらせたら、ひとりの子供が 5・7・5 を無視するという発明をしてしまった、なんて例えると怒られるかなぁ? 思えばダンスについても、『Automatic』 はともかく、『Movin on without you』 は稚拙な印象があるんですがどうでしょう。僕だけかな……。
ただし、例によって若い世代にはそれが自然な状態に感じられるのかもしれません。

まあ、いずれにしても、現在の彼女の年齢を考えると、そのシンガーソングライターであるという点で、凄い才能であることには異論ありません。実際、似たような曲が多いという問題以外は、楽曲のクオリティは高いと思います。

番組企画ヒット曲

さて、R&B、HipHop と僕好みの音楽が広まる中で、別の広まり方をしているのが番組企画ヒット曲。

番組企画ヒット曲を語る前に、ドラマ主題歌、CM曲の話をしましょう。
一時は、ヒット曲が、ドラマ主題歌や、CM曲ばかりであるという批判がありました。しかし、これらに関しては僕は肯定的な見方をしています。
ヒット曲が生まれるにはまず、人々がその曲を耳にする必要があります。聞きなれることは、ヒットする重要な要素ですので、何度も耳にすることは有利に働きます。そういう面で、番組主題歌は有利だからそういう批判があったのはわかります。しかし、本当に対等な競争をするには、全ての新曲を一回づつ聞くしかありません。でも実際問題として全ての新作楽曲を聴くことはできないし、一回だけというのも無理な話。ですから、何らかの“選抜”が必要です。その“選抜”がドラマ主題歌やCM曲に選ばれることだと思うのです。
アメリカにおいても同じです。アメリカにおけるヒット曲はラジオでのオンエアー回数にかかっています。(今はビデオクリップなのかなぁ?) アメリカ中の多数のラジオDJがいい曲だと思えば何度もオンエアーされ、それだけ人々が耳にすることができます。
このラジオDJに相当するのが、日本においては番組やCM製作のプロデューサーです。彼ら、オピニオンリーダー、ファッションリーダーに相当する人達が「良い」と感じれば“一次選抜”突破です。
もちろん、昔のようにアイドルの所属プロダクションの力で賞レースの行方が決まってしまうような時代なら問題ですが、今はそんなことがないでしょう。また、ひと昔前とちがって、今は番組主題歌、CM曲の数が多数になっています。番組主題歌になったから、CM曲になったからといってヒットが約束されているわけではありません。同じく、別の番組主題歌やCM曲と十分な競争が行われています。そういうわけで肯定的に見ているわけです。

ということで、番組企画ヒット曲の話に戻します。
ここで言う番組企画ヒット曲とは、番組において、公開オーデイションで最初から思い入れのあるアーティストをデビューさせたり、アーティストのキャラを前面に押し出して売ったり、「○位以内に入らなければ解散」などのイベントをした結果、ヒットしている曲を指します。
おわかりかと思いますが、そこには楽曲が選抜されるという十分な競争がありません。そこが、上記の番組主題歌や CM 曲と比べて少し違うかな、と。もちろん、アーティストやプロデューサーが選択されている、とも言えますから、上記の話とは、単なる程度問題と考えることもできます。しかし、程度で語るなら僕の感性における程度の話として、それらはちょっと行き過ぎかと。

日本の流行音楽の全体の状況は、概ね良くなって来ているとは思っているのですが。