野球は足し算、サッカーは掛け算(内積) 〜 東京ヴェルディ 7連敗 〜
2007/05/04
サッカー J2 での 東京ベルディ 7連敗 (5/3 時点) には誰もが驚きました。
というのも、J1昇格を狙う東京V の今シーズンの補強は半端ではなかったからです。前年J2リーグ得点2位(25得点) のフッキを札幌から、柏のJ1昇格主力だったディエゴを獲得。これほど確実な外国人補強はありません。それから誰もが驚いたのが名波、服部といった元日本代表を磐田から獲得。その他にも新潟から船越、大宮から土屋と選手を次々と補強。総勢16人だそうで。これには他チームのサポーターが “反則” と呆れるほどで、誰もがJ1 昇格の大本命と見ていました。
そして開幕直後は期待通りに 4勝1分無敗の開幕ダッシュ。誰もが “やっぱり本命で決まりか” と思いました。ところがそこからまさかの 7連敗。順位も 9位に沈み、J1昇格へもはや赤信号です。
もちろんこれから立て直してJ1昇格を掴む可能性が無いわけではありませんが、それにしても 7連敗は酷すぎます。J2 (48試合) の 7連敗は、日本のプロ野球(144試合)でいうなら21連敗(144×7÷48) に相当し、プロ野球記録の18連敗(1998年千葉ロッテ) を上回ります。ちょっとデータは見つかりませんでしたが J2 連敗記録は甲府か水戸あたりが持っているかと思います。でも当時それらのチームが極めて貧弱な戦力であったのはご存知の通りです。 そう考えると、あの東京V の大補強は一体何なんだということになります。
これが “選手の補強がそのままチーム力の強化にならないことがある” というサッカーの特徴を示していると言えるでしょう。
ここで野球について考えてみます。
野球のチーム力は、ほぼ選手の力の足し算と言っていいでしょう。実際、チームの勝ち星予想などは各投手の勝ち星を並べます。A選手が15勝、B選手が10勝、……、合計80勝で優勝だ、といった風に。そして大抵の場合、実際に獲得してきた野手はその実力通りの力を発揮するでしょう。もちろんコンディションの波や、年毎の調子などはあると思いますが、ある選手があるチームに行った場合だけ実力が発揮できなくなるというようなことは考えにくいです。もちろん出場機会が減る増えるの違いはあるでしょう。移籍したチームの監督と喧嘩して起用されなくなるということもあるかもしれませんが、それも足し算(引き算) と言えなくもありません。
また、野球という競技の特徴である、ピッチャーの分業制、ローテーション、代打や代走、守備固め、などから選手層はそのままチーム力につながります。まさに足し算的な考え方をして良いでしょう。
それに対してサッカーの場合はどうでしょうか。
もちろんそれが全てというわけではありませんが、サッカーのチーム力は掛け算に近い要素があると考えられます。簡単な例でいうと、どんなに試合を優勢に進めても FW が全く能力が欠如していたら無得点に終わって勝つことができません。反対に、素晴らしい FW がいてもそこまでいいボールがつながらなければ得点することは難しいでしょう。またDF や GK の能力が欠如していたら簡単に大量失点して負けてしまいます。これらまさに掛け算をして、1以下の数字、あるいは 0 を掛けてしまうとチーム力が下がってしまう言えるでしょう。
ところが、話はそれほど単純ではありません。東京V は実績のある点取り屋がいて、元日本代表の MF や DF がいるチームです。掛け算しても小さくなるようには思えません。それなのに、なぜこんなことになるのでしょうか? それは、そのサッカーにおける “掛け算” といのがベクトルの掛け算(内積) のような物だからではないでしょうか。
中学校の数学を思い出してもらわないといけません。ベクトルの掛け算は |a|×|b|× cosθ。簡単な言葉で言い直すと、“どんなに掛け合わせる元の値が大きくても、角度が大きくずれていたら結果は小さくなってしまう” ということです。例えば掛け合わせるベクトルが全く違う方向で 90°で直行していたら、掛け合わせた結果は 0 になってしまいます。
この方向性を合わせることこそが監督の大切な仕事なわけです。能力のある選手を集めてくるのも大切ですが、集めた選手が別の方向を向いていたら掛け合わせても大きな値になりません。また、そもそも選手の得意な方向や不得意な方向も見極めなければなりません。中にはどうしても方向が合わない選手もいるかもしれないのです。それから対戦相手によって、あるいは試合展開によって試合中に方向を変える必要もあるでしょう。事前にそういった方向の微調整ができるようにする準備も必要です。これが監督に必要とされる能力です。
しばしば大量補強をしたチームが思い通り強くならないものこのことが関係しています。それまでのチームは同じメンバーで長く練習と試合をすることで、ある程度方向が一致しているはずです。ところが補強した選手が多数入ってくることで、その方向の一致が狂ってしまうわけです。結果的に元のチームより強くならないのです。
Jリーグを見る限りでは、レギュラーが同時に何人も変わるような大量補強をして上手くいったケースはあまりないようです。よっぽど監督の能力が高く、しかも同じ方向で一致できる選手を集めてこない限り、すぐには結果は出ないでしょう。
今年、絶対に J1 昇格を目指すという東京V こそ、大量補強はするべきではなかったと思います。これから方向を合わせるのは手遅れではないかと。
関連リンク
【2007 戦力分析レポート:東京V】J2クラブの中でも突出した陣容の東京V。「同じ轍は踏むまい」並々ならぬ決意の下、万全の状態でシーズンを迎える。 [ J's GOAL ]
とはいうものの、東京V の戦力自体が過大評価という面もあるでしょうね。特に、名波、服部は、磐田でレギュラーを失った選手。既に昨年の時点でかつての代表時代の能力がないのは明らかです。そして彼らが年々力が衰えていくのは当然のことです。
いずれにしてもそういうチームつくりをした監督の責任であることに違いはありません。