サッカーにおける一発逆転

2007/11/23

2005年に以下のコラムを書きました。

一発逆転の話

簡単に趣旨を説明します。

『一度に複数の得点が入る野球やバスケットボールには “一発逆転” のプレーがあるが、1点づつしか点が入らないサッカーには無い。だから野球やバスケットボールの “一発逆転” の興奮はサッカーでは味わうことができないのだ、という主張がある。
しかしながら、その逆転のプレーに影響されて興奮するのは結局は人間である。それはその人間が事前に感じている予測や期待の大きさ、そして結果とのバランスによって興奮の度合いが決まるわけである。とするとサッカーには逆転のプレーはないけれどもロスタイムの同点ゴールや勝ち越しゴールの興奮が、野球やバスケットボールの逆転のプレーに比べて興奮度で劣るとは言えないはずである。』

付け加えるならば、バレーボールにも一発逆転はありません。しかし、絶体絶命の劣勢状態から 1点づつ積み重ねて逆転することの興奮度が、他の競技の一発逆転劇の興奮度より劣るとは思いません。


さて、この考え方自体は今も変わっていないのですが、訂正しなければならないことがあります。

サッカーにも一発逆転のプレーがある” ことを見落としていました。

つい最近、そういうケースが二回もありました。

ひとつは、2007 ACL(アジア・クラブチャンピオンズリーグ) 決勝戦第ニ試合、浦和レッズvsセパハン(イラン)。
この試合は
アウェイゴールルールが採用されていました。アウェイゴールルールとは、“ホーム&アウェイの試合結果が、1勝1敗でかつ総得点が同じ場合、または 2引き分けの場合、アウェイで多くゴールをしたチームを勝者とする” というルールです。(アウェイゴール数も同じ場合は延長戦、PK戦、などを行います。)
決勝戦第一試合、浦和はアウェイでゴールをして 1-1 で引き分けました。従って、ホームで 0-0 引き分けの場合は浦和優勝、2-2以上の引き分けはセパハン優勝、となったのです。
結果は 2-0 で浦和の優勝となりましたが、もし 0-0 のまま試合終了を迎えたら浦和が優勝、しかしセパハンが得点して 1-0 で終わればセパハンの優勝、すなわちこれは一発逆転の状況でした。

もうひとつは、北京オリンピックアジア最終予選、日本vsサウジアラビア。
4チームのリーグ戦によって各チーム 6試合を戦うこの予選でしたが、最終的には日本とサウジアラビアの直接対戦でオリンピック出場が決まるという試合になりました。勝ち点制度のルールでは、勝てば勝ち点3、引き分ければ1、です。従ってここまでのリーグ戦の状況から、この最終戦は勝敗が付けば勝った方の出場権獲得、引き分ければ勝ち点でリードしている日本が出場権を獲得します。
結果は 0-0 引き分けでに日本が出場権獲得となりましたが、もしサウジアラビアが 1-0 でリードしてそのまま終わればサウジアラビアが出場権獲得、日本が 1-1 に追いつけば日本が出場権獲得、すなわちこれも一発逆転の状況でした。

ちょうどバスケットボールの試合で 1点差の状況とそっくりです。バスケットボールは通常のゴールで2点 (遠い距離の 3ポイントゴールを除きますが) 入ります。一度のゴールの度に勝者が入れ替わる状況なわけで、上記の状態はこれと全く同じでした。


というわけで前のコラムの主張である、興奮度に関する話は変わるわけではありませんが、サッカーでも条件によっては一発逆転があるというお話でした。


で、実際上記の 2試合とも TV で見ていたのですが、とにかく思ったのは試合における緊張感は半端ではない、ということでした。もちろんこれはサッカーという競技がどうこうというよりも、アジアチャンピオンであったり、オリンピック出場を懸けるという状況に寄る所の方が大きかったのは間違いありません。
とはいえ、やはりサッカーにおいて 1点を失ってしまうことの取り返しの付かなさが生み出す緊張感、しかもそれがかなりの長時間持続して途中で気を緩めることができない (例えば野球はイニングの合間や、投球の合間、バスケットボールはタイムアウトなどでかなり気を緩めることができる。) というのは、ほんとに独特なものです。応援しているだけなのに精神的に疲労してしまいます。これに関してだけはサッカー独自の特徴であり、これが “サポーター” という一緒に戦うと感じる応援者を生む理由なのかもしれません。