野球の危機

2006/05/03

4月のプロ野球巨人戦ナイター中継視聴率は史上最低の12.7%ということが発表されました。WBC優勝と巨人の首位独走というアシストがありながらの結果で、大きな波紋を呼んでいます。これについてはネットで検索しても様々な事が語られており、もう今更という感じでしょうね。
ということで、ここでは“巨人人気の危機” でも “プロ野球の危機” でもなく、“野球の危機” というひとつのシナリオを考えて話を進めてみたいと思います。


プロ野球の問題については、過去にも何度も書いています。特に視聴率に低迷の問題を取り上げたのは 2001年に書いた 「
NPB (日本プロ野球) は改革できるか?」 でした。( 読み返してみると、当時は “15%を切る可能性が出てきました” という時代だったんですねぇ。) そこに書いたのと同じ話から始めましょう。

まず、巨人戦視聴率が下がるとほんとうに困るのか?
最悪のケースは巨人戦の中継が無くなる事です。巨人戦の中継がなくなる、というだけでは済みません。現在、巨人戦の中継を、地方局が放送差し替えを行っていることが多いです。例えば名古屋でな中日ドラゴンズの試合に差し替えるなど。それらの中継も無くなってしまうわけです。もしこれが本当に起きれば、五輪種目から外れることとダブルパンチでの、野球に対して致命的なダメージを与えてしまいます。その結果は競技人口の縮小など、致命的といえる状況が考えられます。
ただし、この最悪のケースまではいかないように思います。全体的にテレビ視聴率が下がっている状態ですから、放映数が減る、一部の放送が深夜に移るなどはあると思いますが、放映自体は残るのではないでしょうか。

しかし放送が残ったとしても、放映権料の低下、放映数の減少は避けられないでしょう。
これは経済的に極めて大きな影響力を持ちます。ただし巨人戦放映権料が低下しても、巨人や阪神などの人気チームへの影響はそれほどありません。それらのチームは十分な観客動員がありますから。影響があるのがセリーグの中で比較的不人気のチームです。それらのチームの収支は巨人戦の中継の放映権料に大きく依存しています。巨人戦の放映権料が下がると収支は大きく傾いてしまいます。その不足した分をどうするか? 視聴率が下がるくらいですから、チームの広告的価値は下がります。それでも親会社などが減った分を全て補填してくれるならよいですが、そういうチームは少ないでしょう。その場合やることはひとつです。選手の年俸を下げることです。

不人気チームの選手の年俸が下がったらどうなるか?
実は、全てのチームがそうなるのなら問題がありません。問題は一部のチームだけ年俸が下がること、すなわちチーム間格差が広がることです。チーム間格差が広がるとどうなるか。これはドラフト制度の崩壊に繋がる可能性があります。これはある意味当然です。同等の力を持ちながら、人気チームに入るのと不人気チームに入るので年俸が大きく違う。選手の立場で考えるとこんな不平等はありません。当然、有力選手は自由獲得枠で希望球団に入ろうとします。そうすると人気選手が有力チームに集まり、チーム間格差は更に広がります。ここの話は永遠のループ。チーム間格差は更に広がっていきます。
そして、自由獲得枠に入れなかった選手は、不人気球団に入ることを嫌がり入団拒否をするでしょう。

不人気チームにドラフト指名された選手が入団拒否をするとどうなるか……。
実はここはすでに始まっている話です。NPB(日本プロ野球機構) は、四国アイランドリーグに対し、社会人選手と同様に 「高卒3年、大卒2年以上所属」 でないとドラフト指名しないという通達をしました。これは、ドラフトを拒否して四国アイランドリーグへ入り、翌年他のチームのドラフトにかかるのを防ぐ為です。ドラフト制度を守るためなら納得できる考え方です。
しかし、これは四国アイランドリーグに対してあまりに厳しい仕打ちになります。プロ野球選手を輩出することを目的とした四国アイランドリーグ。しかし、翌年すぐにドラフトされる可能性があるような選手が四国アイランドリーグ入りするメリットはほとんどなくなりました。人生を考えると大学か実業団へ行って逆指名を狙う方が得策だと思うでしょう。そのメリットを失った四国アイランドリーグ、その経営は苦しいものになるでしょう。

そしてもし、四国アイランドリーグが潰れてしまったら……。
もしそんなことになったら、この後同様なリーグを作ろうという人はいなくなるでしょう。野球界の発展的拡張の芽は完全に潰れます。野球に対するイメージ的にも最悪の事態でしょう。そうなってしまった場合こそが “野球の危機” だと考えます。


こういったシナリオを避けるにはどうすればよいでしょうか?
“四国アイランドリーグを助け協力していこう” なども悪い話でははないのですが、結局のところそれは対処療法でしかありません。というのも、上記シナリオには様々な派生が考えられるわけです。例えばチーム消滅のようなもっと悪い結論だってあるわけで、枝葉の対策をひとつひとつ考えていても根本的な解決になっていません。

ということで根源部に近い部分で考えられるのは、ひとつは巨人戦視聴率が下がっても、チーム間格差が大きくならないようにすれば良いです。それは収益の分配以外ないでしょう。これは決断しさえすれば実は簡単にできること。とはいえ残念ながらその気配すら全く見えませんね。

もうひとつは、視聴率を下げないようにすること。
「それは無茶だ」 という声も聞こえてきそうですが、あくまでも個人的な直感では、試合時間が 2時間程度の高校野球くらいのサクサクした試合展開なら、見る人も増えるのではないかという気がします。投球間隔の時間制限とか、投球練習数制限とか、ストライクゾーン拡大とか、やる気さえあればできるのではないでしょうか。


でもこれら、やればできるかもしれないけど、それをやれそうな気がしない、というのが多くの人の感想でしょう。過去に書いた結論と同じですが、本当の根源はここですね。“NPB に未来を見越した組織がないこと” これがプロ野球を悪いシナリオへ導く全ての根源です。


ビデオリサーチ社 プロ野球巨人戦ナイター中継

野球:四国アイランドリーグ ドラフト指名制限、石毛氏が撤廃求める


上記の試合時間の話をすこし。
もしかしたら、試合時間短縮 = 放映権料は下がるが放送は続く、試合時間現状 = 放送もなくなる、という分岐点がそれなのかも、という気がしてきました。