WBC雑感 (前編)
2006/03/19
もちろん WBC のことを書かないわけにはいかないわけですが、そのタイミングが難しい…。
2次リーグで日本が韓国に負けた時点で、日本にとっての WBC は終わりだと思って書き始めたら、アメリカがメキシコに敗れて日本が準決勝進出。もちろん書く内容も多少は影響が出てしまいます。とりあえず前編後編と分けて書くことにしますが、日本の全試合が終わっていない状況ですから、まずは代表チームではなくて一般論的な話をすることにしましょう。
そもそも、まずは他競技と比べて野球における番狂わせについて考察しようと思ったのですが、WBC においては 「それは本当に番狂わせなのか?」 という議論が必要になりそうです。しかし、ここではその WBC の話は保留することにして、一般論としての話にしましょう。
野球における番狂わせ
明らかに地力が劣るチームが、地力で勝るチームに勝ってしまうのが番狂わせ。一般的には、サッカーが最も番狂わせが発生しやすいスポーツと言われています。その理由は極端に得点が入りにくい競技であるために、試合を優勢に進めた方が得点して勝利するとは限らないから。さらにサッカーという競技が “守りに入る” ことができる珍しい競技 (「サッカーというスポーツの不思議な特徴」 参照のこと) であることもその要因でしょう。
一方、番狂わせが少ないのがラグビーでしょうか。これはサッカーとちょうど反対のことが言えると思うのですが、試合を優勢に進めた方が得点することが多い競技だからです。ラグビーにおいて引いて守るなんて有り得ないですから、真っ向勝負する方法しかなく、そうすると力の差が出てしまいます。
また、バレーボールやテニスなども、サッカーに比べたら番狂わせが少ない種目でしょう。これらは、得点する攻撃機会がほぼ同等に与えられる競技ですから、実力の差が出やすいはず。その点ではバスケットボールもそうです。速攻が得点率が高いのは確かですが、サッカーのような守備的布陣からのカウンターというわけには行きませんから。
では野球はどうでしょうか? 野球における得点はラグビーやバスケットボールに比べると低得点ではありますが、攻撃機会の数は同じで、しかも一度の攻撃で多数の点が入るという特徴があります。そう考えると、地力のあるチームが多くの得点をとりやすいはずですから、比較的番狂わせは起き難い種目だと考えることが出来ます。
ところが、これを読まれている方も認識しておられるでしょう。もうひとつ大きな要因を検討しなければいけません。ローテーションピッチャーの問題です。
プロ野球、オリンピック、今回の WBC のような場合は、ピッチャーはローテーションが組まれます。これを言い換えると、毎試合そのチームの地力が違うということに他なりません。しかも、そのピッチャーの調子の良し悪しが極めて大きな影響力を持ちます。その影響の大きさは、他競技におけるチーム内の主力選手の調子の良し悪しの比ではありません。
結論としては、野球は (他の競技の理由とは異なる) 投手への依存度が高いという理由でチームの地力がそのまま結果に出ないことがある、すなわち番狂わせが発生する可能性が高いと考えられます。
野球における一発勝負
このことから言えるのは、野球において一発勝負、例えばトーナメントによる戦いは望ましい形態ではない、と言えるでしょう。もちろん理由は番狂わせが発生するから。でも番狂わせが多いサッカーのワールドカップだって、グループリーグの後はトーナメントになってます。それはいいのか? はい、サッカーにおいては比較的許されるのではないかと考えます。なぜなら上記のように番狂わせの発生理由が違うからです。
確かにサッカーも番狂わせは起きますが、その条件はなかなか厳しいものです。格上である相手の攻撃を DF陣は 90分間 (あるいは延長なら120分) 守り続けなければいけません。だれかの調子が良い悪いというレベルではなくて、こちらのチームは全員がベストに近い力を出さない限りは難しいです。相手チームの主力選手の調子が悪いことなども期待したいところですが、全員が調子が悪いなんてことはまずありません。
ところが、野球の場合はピッチャー次第で、かなりの影響が出てしまいます。極端な話、ひとりの世界レベルのピッチャーが絶好調で試合を迎えたらば、それだけでそのチームが負ける可能性はきわめて低くなるのです。あるいはその試合の相手チームのピッチャーの質が悪いだけで、圧倒的に有利になります。
このことから野球の一発勝負というのは、その特徴的に相応しい勝者の決め方ではないと考えます。やはり、現在の MLB のプレーオフや、日本シリーズのように複数試合、せめて5試合は行わないと相応しい勝者を決めることはできません。
では高校野球のトーナメントは良くないのか? それはちょっとだけ条件が違います。高校野球においては、たいていの場合ピッチャーは固定です。(最近は複数のピッチャーが投げ分けるケースも出てきましたが。) ですから、トーナメントのどの試合でもそのピッチャーが出てくるわけで、選手の調子の良し悪しはあるとはいえ、試合後との戦力の違いはあまりありません。連戦になるのは他チームと同条件ですから、連戦によって選手の調子が悪くなることも納得しやすい話です。
そういったことを考えると、今回の WBC で採用された投球数制限は、野球の本来の姿からはかけ離れているけれども、実は国の平均的な力を見るには優れた方法なのではないかと思います。
WBC において上記の結果がうかがえるのは2次リーグの結果でしょう。
2次リーグ進出した8チームのうち、3勝した韓国以外の7チームは1勝または2勝で、全敗したチームはありません。Bグループ最下位プエルトリコは、首位のベネズエラに勝っています。そして、決勝に進んだのは、A、Bグループで 2位だったチーム。
まあ 2グループだけなので、たまたまそうなったとも考えれるのですが、普通はリーグ戦を行うと強いチームから弱いチームに並ぶことの方が多いはず。例えばもし仮に、全ての対戦が7試合づつだったら、きれいに上位から下位 (3勝、2勝、1勝、0勝 のように) まできれいに並ぶことも多いと思います。つまり、今回の 2次リーグの単一のカードの一発勝負の結果では、やはり実力の結果とは違うように思います。
ただし、全対戦での結果としては公平な結果ですから、実力から大外しはしていないと思いますが。
(追記 2006/03/20)
大事なことを忘れていました。例の誤審問題です。
しかし、ここで論じたいのは誤審自体の話ではありません。誤審についてはここで言うまでもないでしょう。本気の誤審だったらレベルが低いという話。故意だとしたら恥知らずな話。それで終わり。(審判の質の話は後編で。)
ここで論じるのは、その誤審のあとの各国メディアの反応です。被害者である日本が誤審であると批判をしたのは当然。そして、日本での報道で見た限り全てのアメリカ人、アメリカのメディアがあれを誤審だと言っていました。つけくわえると当事者ではない韓国も誤審だと批判していました。
それらからで思ったこと…… 「じゃあ前回ワールドカップの誤審問題は?」
はっきりいって、今回の誤審と、あの時のワールドカップの誤審は同じレベル。ヨーロッパではあの誤審に対してメディアは批判の声を上げました。しかし、当事者の韓国は全くの無視。それどころか第三者の日本の多くのメディアもあの誤審を批判しませんでした。
正直、僕が感じたのは 「アメリカっておかしなこともある国だけど、なんだかんだいって結構フェア」 ということです。