失われた4年
2006/09/02
W杯が終わって、一部のサッカーファンから 「失われた4年」 という言葉が聞かれるようになりました。ジーコに任せた4年感は無駄だったという意味です。
個人的には 4年が 「失われた」 とまで言う気はありません。しかし 「大きな損失があった」 とは言えると思っています。特にジーコが選手を固めてしまい、もっと伸びたかもしれない若手選手を起用しなかったことは、これから先に残る借金だと思います。というのも現在、オシム監督になってから 「誰が代表に選ばれるかわからない」 という状況になり、明らかにJリーグは活気付いています。過去 4年もそんな状況だったらと思うと残念でなりません。
その他、細かいことを含めて思うところはいろいろありますが、ここではそれらは挙げません。というのは、この 4年間にジーコよりもっと大きな問題があったように思うからです。
まずはこちらを。
「ジーコ采配は検証せず=W杯の敗因を分析−サッカー協会」 の中にワールドカップの総括としてこのようなコメントが出ています。
『田嶋幸三委員長は 「前線からプレッシャーを掛け、ダイレクトプレーを防ぐ戦術に変わっていた。パス 2、3本でゴールまでいくのがほとんどなかった」 と今大会の傾向を指摘。その上で 「(日本は)個人のベースで勝てるかどうかを分析する必要がある。次の世代をどう伸ばしていくかが大切」 と語った。』
ピンと来た方もいるのではないでしょうか。
『山本ジュビロと大熊 U20』 でも書いた内容なのですが、日本サッカー協会は前回のワールドカップの内容を分析し、以下のような方針のサッカーをやってきました。
「ゴールを背にしたトップの選手に、最終ラインから一気に縦パスを送る。それができない場合、トップがサイドに流れてオープンでパスを受ける。このようになるべく相手ゴールに近い位置で起点を作ることを、ユース年代では目標にしている。そしてトップにボールが当てられなかった場合は、アウトサイドにボールを預けて、ドリブルや味方とのコンビネーションで一気に縦を抜き、長身フォワード目掛けてクロスを入れる。」 (「日本サッカーの強化策と乖離するジーコ・ジャパン」より)
パス 2、3本でゴールまで行く、15秒でゴールする、そういうサッカーを目指したのです。
これは過去 4年間、ユース代表でも、五輪代表でも一貫して行われた方針でした。ところが、ユースでもオリンピックでも結果は出ませんでした。内容も決してよくありませんでしたし、サッカーファンからの評判もよくありませんでした。ある意味では、それらと全く異なるジーコのサッカーがある程度の支持を受けたひとつの要因だったかもしれません。
そして、今回のワールドカップを終えた分析が前述の文章。では、今回のワールドカップでそういう攻撃があまり見られなかったので、これからの 4年間はトップに長い縦パスを送るという方針は止めるのでしょうか?
明らかに、前回ワールドカップを分析したスタッフは、目の前に見えたプレーを見てその猿真似をしただけです。そしてその実現も失敗しました。前述のコラムにも書きましたが、ドゥンガがジュビロ時代に発言した 「短いパスが正確にできないのに、どうして長いパスを練習するのだ」 という言葉の通りで、日本の身の程を全く理解していなかったからです。世界レベルで長いパスがゴールに直結するのはそういう技術を持っているから。日本がするべきはまず短いパスをきっちりつなぐことです。そして、早い攻撃をしたいなら、相手選手より走ることです。そして長いパスの代わりにミドルパス 2本をつなぐべきでしょう。
ジーコの総括も確かに必要に違いありません。しかし、サッカーファンがもっと問題視しなければいけないことは、前回のワールドカップの分析がめちゃくちゃで、そのせいで 4年間を無駄にしてしまったことです。伸び盛りの若い選手に与えた影響ということを考えると、4年の損失で済まない問題かもしれません。