トリノ五輪雑感 (前半)

2006/02/19

トリノオリンピックも折り返しを迎えました。ここまでで感じたことを書きたいと思います。
なお、冬季五輪の種目は普段そんなに見ていない種目ばかりですから全く詳しくありません。ほんとに雑感です。

スノーボード/ハーフパイプ
前評判に比べて期待外れだったとか、競技自体の話は置いといて。
思ったことは、何故先に男子をやって翌日女子をやったのだろう、ということ。男子を見た翌日に女子を見ると、エアーの高さも回転も見劣りしてしまいます。これはその競技の魅力を伝える意味で得策ではないように思います。
この女子種目を先にやった方がいいというのは、どの競技でも同じ話ではありません。例えばバレーボールやテニスのように、女子種目の方がラリーが多くてゲームとしては楽しめるというケースもあります。フィギュアースケートや体操系の競技なども、女性の柔軟性やシルエットで男性競技とは全く別の魅力を持ちます。ところがハーフパイプなどは僕の見る限り男女の違いは感じられません。実際は芸術系種目と同じような違いもあるのかもしれませんが、あのウェアでは素人には全く区別がつきません。とするとです、演出の問題として 「あれ?やっぱり女子は見劣りするね」 と印象が付くのと 「男子は凄いなぁ」 という印象のどちらかを思わせるなら、迷わず後者だと思うのですが。

もう一点、少しだけ気になったのがカメラワーク。カメラがジャンプした空中のシーンを非常に上手くアップで捉えていましたが、結局そのせいでスピードや高さがよくわかりませんでした。それはリプレイで見る事ができたのですが、まずは全体の流れを見てから、あとでリプレイの細かいところを見る方が良いのでは?


カーリング
冬季五輪の度に “面白い” と思う種目なのですが、普段見る機会がなくてほんとに残念です。ここでは具体的に何が面白いと思うのかを書いてみます。
もちろん技術も面白いのですが、なんといってもこの種目独特の戦術が知的好奇心を強く刺激してくれます。ぱっと見でも、そのままでは得点にならない場所にストーンを置くことで終盤に優位になるという戦術も面白いですが、ここでももっと大局的な戦術の例を挙げましょう。

「大量得点ゲームに持ち込むか、小得点ゲームに持ち込むかを選択できること」
これ、他の競技でも出来るといえば出来ますが、実はそれほどの自由度はありません。野球などではスタメンを攻撃的にするとか、サッカーなどでは攻撃的布陣を組むなどに相当します。しかし、だからと言ってもそれらの競技では守備を疎かにするわけにはいきませんから、あくまでもある程度の傾向を持たせるというだけです。しかしカーリングの場合は明らかに100%方向性を向けることができます。それを相手チームが阻止する動きをするわけで、勝敗を決める勝負の前に戦術の真っ向勝負を見る事ができます。

「相手に1点取らせて終わらせることで以後の展開を優位に進めること。あるいは、わざと 0対0 で終わることで以後の展開を優位に進めること」
得点すると次回は先攻になるので、得点しないことや相手に最少得点を取らせることで、優位な後攻の立場を取るという戦術。さすがに他の競技でこいう戦術は思い当たりません。もしかしたら最も個性的な戦術かもしれません。

こういった珍しい戦術が存在すること自体が面白いわけですが、それ以上に重要なのはそれらの選択を自由に選べることです。勝利を目指す方法がひとつではなく、どの戦術もアリであることが面白いです。
もちろん、これらの戦術が面白いというのは、僕まだこの種目に慣れていないせいもあるでしょう。慣れたら今ほど面白く感じないかもしれません。あるいは、競技が成熟すると定石が決まってしまい、今のような戦術の自由度がなくなるかもしれませんが…。

ついでに別件で思うことをひとつ。
カーリングの投げている距離は40m、実はボーリングの約二倍なんだそうです。現在の望遠主体の映像と、上方から映す映像ではその距離感が分かりにくいです。コースを縦に映すカメラをもう一台置いてほしいところです。そうすることでこの競技の技術的凄さがさらに伝わると思うのですが。


ショートトラック
スピードスケート/パシュート
スノーボード/クロス

最初に強く確認しておきますが、これらの種目自体が悪いという話ではありません。ただ思うのは、4年に一度という一発勝負で勝者を決めるような種目ではない、と思います。
これらの種目の特徴は、一瞬の気の緩みや不運から起きる転倒が大きな影響を及ぼしてしまうこと。「転倒が影響するのは、他のスピードスケートだって同じなのでは?」 いえ、ちょっとだけ違います。これらの競技の特徴としては、一緒に競技している選手だけが得をするのです。他のスピードスケートの時間計測系の種目では、転倒した人以外全ての選手に同等に利益となります。まあ陸上競技にもこれらと同様のグループ単位の勝負することで、同じような特徴を持つものがありますが、陸上競技では転倒というアクシデントはよっぽどに出来事ですし、一緒に走る選手もかなり多いはず。そのアクシデント直前まで最下位だった選手が次のステージに進めることなんてことはありません。
「一瞬の気の緩みが勝敗を決してまうのは格闘技だって同じでは?」 「サッカーも一瞬の気の緩みで失点して勝敗を決することがあるのでは?」 確かにそうですが、それらの種目でいえるのは同じように相手チームの気の緩みやちょっとしたミスがあっても、その相手のミスを突く実力がなければ試合を決するなんてことはありません。前が転倒したから勝利を得た、という単純なものではないのです。
そういった理由で、これらの種目においてはオリンピックの勝者を世界一と持ち上げるのはちょっと無理があるかなと思います。シーズンを通して成績がいい人が世界一であるべき。まあ当事者辺りはそいういうことを充分承知した上で、オリンピックでの勝利を目指しているんだと思いますが、特に日本の五輪偏重報道の環境ではちょっと問題かと。そう考えると本当に問題なのは日本のマスコミなのかもしれませんが。


スキー/ジャンプ
今回のオリンピックに限らない話です。普段これらの競技を見ているわけではないのに、こんなことを言うのはちょっとあれなんですが、ジャンプは “競技としての寿命なのかも” という気がします。
飛びすぎから板の長さが制限。服装も細かく規定。無理なダイエットも禁止する体重制限も。と、本来ならばこれで技術だけの差になるはずです。ところが、そうならずに大きな問題がより明白になってきました。“風” の影響です。一定の風が吹いているなら確かに技術だけの勝負です。しかし途中で風向きが変わってしまう場合は大変です。ご存知のように向かい風が圧倒的な有利な状況になり、上記のショートトラックなどの問題にならないレベルの運不運が出てきます。ほんとうに運で、世界一が決まってしまうのかもしれないのです。これはもう屋内競技場を作る以外対策はないでしょう。


最後の二種類の話は、全て程度問題とも言えます。どの種目だってある程度の運不運があるはずで、どこまで一発勝負でも OK かという判断は人によって違うでしょう。僕はこれらの種目は五輪の勝者を無条件で世界一と称えるのは、ちょっと問題があるのではないか、と感じるという話です。


後半に続きます。