北朝鮮代表チームの話
2005/02/13
改めて説明するまでもないと思いますが、ワールドカップアジア最終予選グループB 初戦日本対北朝鮮の注目度は、それはそれは尋常ではありませんでした。試合の随分前から 「あと○日」 と紹介され、試合前日から当日に至ってはスポーツ番組以外の情報番組などでもかなりの時間を割いて紹介。もちろんここ数年の日本と北朝鮮の各種問題が大きく影響しているのは明らかですから、多くの人が興味を持ったのも当たり前でしょう。その結果、試合自体が接戦になったこともあり平均視聴率は47.2%。テレビ朝日では開局以来の歴代最高視聴率だそうです。
さて、その試合前にスポーツ番組や情報番組がこぞって取り上げた北朝鮮代表チームの話についてです。チームの特徴だとか練習の様子はいつもの国際試合の報道と同じですが、いつもと違ったのは北朝鮮という独特の国家におけるチームの状況。ここで特に取り上げてみたいのはこの辺りの話です。報道された内容はこんな感じ。
・日本との試合は生放送では放送されない。勝った場合は派手に報告されるが負けた場合は国民に知らせない。
・独裁者の判断で国際大会に出場されなかったりする。
こういったことが報道されるということ自体、“普通じゃない” と多くの人が考えたからでしょう。ではどう “普通じゃない” のでしょうか? それは政治的に北朝鮮代表チームが存在しているようにみえるから。つまり政治的な目的が上にあって、その下でスポーツが行われているようにみえるからです。日本のサポーターの応援に関してよく言われる 「政治とスポーツは別」 とかいうけれど、そもそも根本的に違うじゃないか、と。
北朝鮮においては、あきらかにスポーツが政治的な道具として使われています。スポーツが強いことが、自分達の国家や民族や政治体制が優れていることを内外に証明する道具として使われているのです。あるいは国民へ向けての国威発揚の道具。これは不満から目を逸らす意図もあるかもしれません。
恐らくほとんどの日本人はこういった状況は普通じゃないと感じるわけです。
ところが、この北朝鮮代表チームと少し似たような話が日本にもあるのです。それは日本のスポーツ界における企業チームです。
日本における過去5年くらいの莫大な数の企業運動部の廃部はあまりにも有名です。企業にとって金銭的負担になってきたり、あるいは広告塔としての力が失われると存在価値がなくなり、簡単に廃部になります。一方、良い結果を収めた時は大々的にに宣伝に利用されます。(実際ある企業において、チームが大会の試合で勝った時には社内で試合結果アナウンス、負けた時にはなし、というケースをよく知ってますし。)
こういった話になると、必然的にこの問いに辿り着きます。「スポーツとは何か?」 あるいは 「スポーツの役割とは何か?」
もちろん答えはひとつではないでしょう。そのチームのオーナーが満足すればいいという考え方もあれば、ビジネス的な役割だってあるでしょう。けれども、僕としては第一の意味として “スポーツは文化” として捉えたいです。音楽や美術と対等な立場にあるものとしてです。音楽や美術が、個人の所有物でもあるし、ビジネス的な面もあるけれども、まずは文化だと誰もが認識するように。
たとえばこんな例ではどうでしょう。ある企業が美術に大変理解があり、企業が購入した美術品を保有しており、有料で公開とかしていた。ところが企業の財政の問題などで維持費が出せなくなった、そういう状況があったとします。普通はそうなったら企業は絵画をしかるべき場所に売るなり、良心的であれば地元の自治体や美術館に寄付したりするでしょう。しかし、今まで出来てた企業スポーツにこれを当てはめてみるとどうでしょう。企業が運動部を廃部するのというのは、企業がもっていた美術品を捨ててしまうのと同じです。スポーツを文化として考えればそんなことはできないはず。
だからこそこう考えます。美術品やオーケストラ、美術館や音楽ホール、そしてスポーツチームなどは公的な財産であり、原則としては企業が所有するべきではない。所有するなら絶対に手放さないことが条件。理想は地域全体の所有物として、企業、自治体、住民が支える形であること、と。
とはいえ、じゃあ現在の企業チームはけしからん、と言えないのが難しいところ。
現在サッカーの企業チームを持っているホンダや、あるいは今年からJ2昇格を決めた徳島が企業チームの大塚製薬として存在していた時から、それらのチームはユースやジュニアユースのチームを作ったりして地域に貢献をしていたわけです。今すぐ企業チームは廃止なんていうことは、それこそ (企業主体であるかとはいえ) 地域密着の状況を壊すことになるわけで本末転倒です。あくまでも将来の理想として、企業主体ではなく地域全体がチームを持つことが望ましいという話です。
もう一点。
国威発揚やナショナリズムのようなものが悪いという話でもありません。それを政府のコントロール下で行うことが気に入らないだけ。国民側からの自発的な意思だったら僕はむしろ賛同したいくらい。企業スポーツにおいても同じことが言えるわけで、実際企業スポーツを盛り上げようとしている人達はそういう裏の意図を持っているわけではないと思うのです。多くの人は、縁で知リ会った会社の仲間を応援する気持ちが強いはず。そういう面もあり、単純に企業スポーツを批判することもできないと考えます。
(追記 2005/02/15)
などと書きましたが、ほんの2ヶ月前に 「この際、実業団リーグを作ってはどうか」 を書いてますね。
正直なところ、それには実業団チームの価値が下がればいいという意図が潜んでいました。ここでいう価値はあくまでも、勝利を追求するようなチームやリーグという意味です。Jリーグの昇格残留を賭けた勝負と別グループにしてしまえば、そういった価値は明らかに低くなるからです。そうなれば残るのは地域密着の意図くらいでしょう。上記で上げたようなスポーツを利用するような意図は消えます。その上での話であるなら企業チームでも全然構いません。