ひとり少ないほうが勝つ
2005/01/09
| 日時 | 対戦カード | 試合の位置付け | 試合内容 |
|---|---|---|---|
| 2003/11/29 | 横浜Fマリノスvsジュビロ磐田 | Jリーグ 2nd ステージ最終節。勝てばジュビロ磐田の優勝が決まる大一番。 | 前半2分に磐田先制。その上前半15分に横浜GK榎本退場。 しかし、後半5分に同点、後半44分に逆転ゴールが決まり、横浜の 2nd ステージ逆転優勝が決まる。 |
| 2004/1/1 | セレッソ大阪vsジュビロ磐田 | 天皇杯決勝。 | 後半26分に磐田先制するも、後半35分に磐田FWグラウが退場。 残る10分間を逃げ切って磐田優勝。 |
| 2004/11/3 | FC東京vs浦和レッズ | ナビスコカップ決勝戦。 | 前半29分、FC東京DFジャーン退場。 試合は延長終了までスコアレス。PK戦の結果、FC東京優勝。 |
| 2004/11/04-11 | 横浜Fマリノスvs浦和レッズ | Jリーグチャンピオンシップ。 | 第1戦は横浜Fマリノスが
1-0 で勝利。 第2戦は後半29分に横浜MF中西が退場。浦和先制するも、第1戦との合計で勝負はタイとなり、横浜Fマリノスがひとり少ないまま延長突入。(延長後半14分にエメルソン退場) 120分で決着つかず PK 戦となり横浜優勝が決まる。 |
| 2005/1/1 | 東京ヴェルディvsジュビロ磐田 | 天皇杯決勝。 | 前半35分の東京先制するも、44分に東京ヴェルディMF小林が退場。 しかし後半8分に東京追加点。磐田の反撃を1点にとどめ東京ヴェルディの優勝。 |
一目瞭然です。ここ数年、Jリーグにおいて優勝がかかるような大一番では、退場者を出した方が優勝しています。これは偶然でしょうか?
“ひとり少ない” - 誰がどう見てもそれは不利なことです。実際、リーグ戦などではひとり少なくなることで試合が決まってしまうこともよくあります。どうしようもない圧倒的な結果を生むことも。とはいえサッカーにおいては、逆にひとり少ない方が勝つというケースもそこそこ存在するのも事実です。
その理由のひとつは、人数がひとり減ったところで実は守備力が下がるわけではない、ということでしょう。攻撃の選手が退場した場合は守備の陣容自体は同じですし、守備の選手が退場した場合、たいていの監督は守備の人数を元に戻す選手交代をする、あるいはポジション変更をして守備陣形が変わらないような采配をします。ですから、ひとり少なくなったからといって守備が弱くなるわけではありません。
しかし、退場者が出ることで試合に大きく影響するのはボールの支配率です。これは攻撃する回数と言い換えてもいいでしょう。単純に人数が違うというだけでも、こぼれ球を拾う確率は間違いなく人数が多い方が高くなります。ちょっとしたたかチームだったら守備の要員を前目にポジショニングすることで意図的にこぼれ球を拾う確率を上げることもするでしょう。
攻撃の回数が増えることこそが、人数が増えることの有利さです。そして、攻撃の回数が増えるならば、同様に攻撃を繰り返せば得点が入る可能性が高いのは明らかです。確率的に考えても、(得点の期待値) = (一度の攻撃で得点する確率) x (攻撃回数)
だからです。
ところが、上記のように数的優位になったチームが得点できていないという現実があります。上記の理論から予想するなら、数的優位に立ったチームがもっと得点しなければいけないはず。事実、ほとんどの試合は数的有利になった方が試合を支配し、より攻撃の攻撃機会を得ています。それなのに、得点できずに PK 戦に持ち込まれたり、数的不利な相手に負けるチームまで出ているのです。
これらの事実から導き出される結論はひとつです。“ひとり少なくなった方のチームの守備力は高まる”
そういうことです。(一度の攻撃で得点する確率) が下がっているのです。
ひとり少なくなったチームは、不利になったことから守備意識が高まります。おそらく意識だけでなく集中力も高まるでしょう。特に上記のような優勝がかかる大一番だと集中力も半端ではありません。それまで11人でいた時よりも守備力が高まるのです。
ついでにいうと、さらに別な変化を生むかもしれません。チームの誰ひとりとして迷わず “守ってカウンターだ” そう考えるからです。おそらく、ピッチ上の選手の意思の統一は、攻撃にまで好結果を生みます。今までなら早く攻めるかゆっくり攻めるか、選手によって考えが異なっていたのが、“早く攻める” で一致します。その結果、自陣でボール回しをしていてボールを失ってカウンター攻撃を受けるということは減ります。これもまた守備に良い結果を生みます。
こういったことが積み重なり、上記のような “ひとり少ないほうが勝つ” という結果が生まれるのに違いありません。
ただし、ここからちょっと仮説を述べてみたいと思います。
いくら上記の説明で “ひとり少ない方が勝つ” の理屈が説明できたとしても、いくらなんでも多すぎないでしょうか? “本来なら圧倒的に不利なはずなのに、上記のような理由で五分五分程度に戻る” というのならわかります。それなのにほとんどのケースで “ひとり少ないほうが勝っている” のです。
これは “現在のJリーグのレベル” に起因しているのではないではないでしょうか?
先ほど、数的有利な状況が生む結果としてボールの支配率を挙げました。実際にはもうひとつ大きな要素があります。クロスを上げる選手がフリーである確率が高まるということです。クロスを上げる選手がフリーであることは、実は上記の数式において (一度の攻撃で得点する確率) を飛躍的に高めるのです。ただし、それは高い技術をもっていればの話。
具体例を挙げましょう。つい先日の天皇杯決勝、数的優位になったジュビロ磐田において、名波選手によるクロスは何度も決定的なチャンスを生み出しました。ところが、他の選手のクロスはそれほどではありません。つまり選手の技術が高い場合ならば、たとえば欧州や南米のトップチームであるならば、全ての選手のクロスが決定機を生み出します。
ということは、もっとレベルが高いリーグであるなら “ひとり少なくなった方が勝つ” という確率は減るのではないかと思うのです。
一方、もっとレベルが低いリーグだったらどうでしょう。
想像ですが、もっとレベルが低いリーグだったら、クロスの精度はさらに落ちるでしょう。しかし、繰り返される攻撃の最中にペナルティエリア内で決定的な、判断ミスや技術的なクリアミスをして失点してしまう可能性は、Jリーグよりも高いのではないでしょうか。とするとやっぱり “ひとり少なくなった方が勝つ” という確率は減るのではないかと思うのです。
つまり、仮説というのは、“現在のJリーグのトップチームのレベルにおいては、ひとり少なくなったチームの守備意識の高まりにより、ひとり多くなったチームより強くなる” です。現在の Jリーグトップよりレベルが高ければ、あるいはレベルが低ければ、別の結果になるのではないかと思いますが。