続・飛ぶボール

2004/07/17

1年ほど前に書いた 「飛ぶボール」 の続編です。

この 1年で随分と飛ぶボールのことが語られるようになりました。今回取り上げたのもスポーツ新聞に面白い記事が載ったからです。それを記録しておく意味もあり、続編を書くことにしました。
さて、その詳しいデータが載ったのが 7/16 のトーチュウ。江藤省三氏の 『真相球明』 というコラムのコーナーです。まずは記事の内容を全部引用しましょう。

5月21日本誌掲載の 「真相球明・飛びすぎるボール」 に対して各方面から、反響が寄せられた。プロ野球コミッショナーは 6月 4日、公認球の反発力テストを関係者やマスコミに公開し 「問題なし」 と疑惑を一蹴した。しかし、それでもなお、現場からは 「ボールが飛びすぎる」 との声が後を絶たない。机上の計算と食い違いをもう一度検証すべく、現場の声を中心に、本誌評論家・江藤省三氏が再度、真相を究明した。

 中日は 6月18日(金) から、横浜、巨人、ヤクルト戦の試合球をミズノ社からサンアップ社に変更した。サンアップ社は 2001年までの使用球でミズノ社に比べると飛ばないと評判のボール。どれくらい差があるのか、中日との 3連戦をナゴヤドームで経験した横浜の村田に聞いた。
− サンアップのボールはどんな感じだったの?
 村田 「練習の時から、バットの感触がまったく違いました。手応えと言うか、ずしっと重さが伝わってきました」
− 飛び具合はどう?
 「全然違います。しっかり振らないとスタンドまで届きません」
 同じ質問を多村にもしてみた。
 多村 「飛びは全く違います。ミズノ社製はミート中心で本塁打になるが、あれだけ飛ばないと打ち方を変えなければと考えますね」
この 3連戦、両チームの本塁打はゼロ、得点は 2-0、3-8、2-0 とやや投手に有利な数字が残った。
では、投手の立場はどうか。野村投手コーチに聞いた。
− サンアップ社のボールはどうでしたか?
 野村コーチ 「手にしっくりくるのはミズノですが飛ばないという意識で攻めのピッチングができるから、四球が少なくなるし、良い結果が出ますね。サンアップを使っているピッチャーは絶対有利です」
 実際にメーカーによって 「飛ぶ、飛ばない」 の誤差がどれくらい生じるのか、サンアップ社のトップに話を聞いた。
− メーカーによって飛びが違うのはなぜ?
 サンアップ社 「糸の質と巻き方で差が出ます。ミズノ社は 2種類、うちは 3種類の糸を使用しますが、ウール100%できつく巻けばボールは飛びます。しんになるコルクもメーカーによって違います」
 野球規則にはボールの大きさと重さには範囲が決められているが、反発力、いわゆる飛びに関しては規定は設けられていない。合格基準をパスしたボールであって、メーカーによって反発力にまちまちの傾向が出る。テストに立ち会ったというミズノ社の販促員に聞いた。
− テストの結果はどうでしたか?
 ミズノ社 「問題なしです。ミズノとしては最高のものを提供しているつもりなのに、何か悪いことをしているように言われるのは心外です」
− しかし飛びすぎるという声が多いのは確かですが?
「わかっています。コミッショナー事務局とも相談していますが、メジャーが90%ですから、来年をうちも90%にする方向になると思います」
 質を悪くするのではなく、国際的な水準に合わせるのだと続けた。
 ミズノ社ではプロ使用球ではウール100%、高校野球では90%を使用している。同じメーカーでもプロとアマとでは飛びが違うのである。
ボールの飛びが話題になり始めたのは1980年ごろから。当時オープン戦で対戦したセ・リーグの選手間からパのボールは飛ぶといううわさが広がったのだ。後日の検査で15、16m の差があったことがわかり、それ以来、コミッショナー通達で反発テストを繰り返しているが、これだけ差が出てくると検査方法を見直す時期にきているといわざるを得ない。
 いくら野球の醍醐味がホームランとは言え、こすった当たりで、しかも逆方向がホームランになるようでは野球の面白さが消えてしまう。
真のプロの技術をファンに見せるためにも、ボールの改良を切に願うのである。

今季の中日主催試合
使用球別の本塁打数
ミズノ   サンアップ
試合 HR 平均   試合 HR 平均
29 41 1.4   6 4 0.7

 

主催球団別の HR 数
セ・リーグ
球団 使用球 試合数 HR数 平均
中日 ミズノ、サンアップ 35 45 1.3
巨人 ミズノ 41 139 3.4
阪神 那須、久保田、ゼット 39 79 2.0
広島 那須 39 135 3.5
ヤクルト ゼット、松勘 34 110 3.2
横浜 ミズノ 32 94 2.9
パ・リーグ
西武 ミズノ 42 79 1.9
ダイエー ミズノ 41 81 2.0
日本ハム ミズノ 42 117 2.8
ロッテ ミズノ、アシックス 41 83 2.0
近鉄 ミズノ 39 71 1.8
オリックス ミズノ 38 77 2.0

以上がコラムの内容です。いくつかコメントしておきましょう。

最後の主催球団別の資料ですが、この数字は選手のレベルや球場の広さもありますから、これだけで何かを語るのは難しいでしょう。いずれにせよ間違ってはいけないのは、数字 (本塁打の本数) が本質的な話ではないということです。見ている実感として、「今の勝負は投手の勝ち!」 と感じた振り遅れや、タイミングを合わせて当てただけのバッティングがホームランになることが問題なのです。快心のフルスイングでジャストミートした時だけホームランになるべき。納得するホームランなら今より本数が多くても構わないかも知れません。
だからこそ、反発テストで OK などということは全く意味がないのです。人間が感じる実感として野球が行われているのであって、それに合わない規則の方が悪いのです。
更に、昨年から再三出てきている、その反発力テスト上では問題ないという話。これ、明らかにテスト手法が相応しくないということが、改めて明確にわかっただけではないでしょうか? いつまでも問題ないと言い続けるのは、プロ野球コミッショナーの無能さを表明しているだけでしょう。

最後にもうひとつ。
そもそもの事の始まりは、“飛ぶボールを使ってホームランを増やして盛り上げよう” など、各チームが自分のことしか考えなかったことです。自分のチームのことを考えるばかり。そして、全体のことを考えるシステムが全く機能していないこと。
これこそ、近頃世間を騒がせているチーム合併や 1リーグ制の話と、実は全く根源が同じ問題なのです。