高原とグラウ
2004/04/25
現在、Jリーグ (04年 1st ステージ序盤) で首位を独走するジュビロ磐田のエース FW はロドリゴ・グラウ。
Jリーグ初の完全優勝を達成した 02年のエース FW は高原直泰。
この二人のチームに与える影響の違いは?
多くの人が “02年のジュビロの方が強かった” と言います。確かに 02年のジュビロは、相手チームを圧倒する内容で勝ち星を重ねていきました。それに比べると 04年ジュビロは相手チームにペースを握られている時間帯も結構あります。
では “02年の方が圧倒的に強い” が結論?
確かに 02年ジュビロの方が強いかもしれません。実際強いでしょう。しかし、実は言われているほどの差はないのではないでしょうか? というのは、エース FW である、高原とグラウの違いが、チームに与えていた影響が大きいのではないかと思うのです。
高原のプレーはゴール以外の面でもチームに貢献していました。中盤まで下がりボールを受けて反転、ゴールへ向かうドリブルは相手チームとっては脅威でした。ヘディングの競り合いも強く、ポストプレーもこなし、ボールを散らすパスを出すこともできました。中山とのコンビネーションも抜群で、二人で決定的な場面まで持っていくシーンが何度もありました。
一方のグラウは、実は単独で相手を崩すようなシーンはあまり見ることはありません。ヘディングは強いとはいえないですし、パス出しははっきり言って下手です。他のJリーグにいる外国人選手、エメルソン、ウェズレー、マルケス、エムボマ、ケリーなどの個人能力に比べると見劣りします。ただし、ゴール前での最後のシュートの落ち着きは、国内で活躍する FW の中でもトップレベルでしょう。
この点に関してだけは、グラウは高原より上です。高原は圧倒的なゴール数で得点王を取りましたが、なんといってもそのチャンス数も多かったです。一方グラウは少ないチャンスを高い確率でモノにしているのです。
これらを考え合わせると、こんなことが言えるのではないでしょうか?
格闘技に例えると、02年ジュビロは相手を痛めつける多彩な技を持ち、試合中ずっと攻め続け、相手は根負けしてギブアップしてしまう。一方、今年のジュビロは相手に攻め込まれる時間も結構ある。しかしそれに耐え、少ないチャンスながらグラウの決定力という大技を持っており、それで相手の KO してしまう。
つまり、今年は相手を圧倒しているわけではないけど、02年よりも決定的な大技を持っているので、あの時ほど圧倒していなくても勝つことができる。
ただし、この理論で行くと今年のジュビロの弱点としては、グラウがいない時や、調子を落としてしまった時ですね。どんなチームだって主力選手がいないとチーム力は下がりますが、02年ジュビロの強さは特定選手に頼る率が比較的小さかったことでしょう。
まあ、今年のジュビロの力を語るのはまだ早すぎるかもしれませんね。この後連敗して低迷するとも限りませんし。
一応、他の選手の違いによるチーム力もチェックしておきましょう。
現在のジュビロは、02年に比べると確かに、中山、名波、服部、辺りは選手としてのピークを越えたというのが感じられます。DF陣も身体能力的には多少それが感じられるかな。しかし、藤田はあまりピークを越えたとは感じないし、DF陣は経験を積んだ老獪さという面では当時より上でしょう。そして何よりも、福西と西は、明らかに当時よりワンランク上の選手になっていると思います。大岩、金沢は抜けましたが、グラウ、前田は明らかに当時より戦力として計算できるはず。
02年からいなくなった選手 02年より衰えたように見える選手 02年より著しく成長した選手 02年より順調に成長した選手 02年以降の追加戦力 高原、大岩、金沢、ヴァンズワム 中山、名波、服部 福西、西、グラウ 前田、山西、河村 佐藤、成岡、菊地
やはり、個々の戦力だけ比較すると、それほど弱くなるはずはないと思うんですよね。もちろん、中山、高原、名波、服部、といったチームの柱の選手が衰えて影響がでないわけがなく、当時より強くなっているはずはないですけど。
でもそもそも、強い弱いっていうのは相対的なもので、他チームの戦力アップ/ダウンの方が影響が大きいはずですよね。
(追加 2004/12/05)
“この後連敗して低迷するとも限りません” と書いてはいるものの、さすがにここまでの予想はできませんでした。
1st ステージ後半からグラウの得点の伸びは止まり、1st ステージ優勝はわずかの差で逆転されて失い、2nd ステージに至っては13位という低迷です。どうしてそうなってしまったのか?
上で書いたように、グラウの長所はゴール前のフィニッシュの力。チームがそこまでのお膳立てができないと、グラウはJリーグのFWとして、それほどレベルの高い選手ではありません。チームがそのお膳立てを作れなくなった時点で、グラウの長所は消えてしまい、攻撃の組み立てに参加でいない使えないFWを持つチームになってしまったのです。
そして、中山雅史の怪我による戦線離脱が大きかったように思えてなりません。
中山は、グラウより技術が劣る選手です。ところが、ヘディングで競り合うこと、サイドに流れてスペースを作ること、DF を引き連れて二アサイドに飛び込むこと、体を張ってファールをもらうこと、これらのプレーがチームと相棒の FW に与えていた好結果は我々が思っていた以上に大きかったのではないでしょうか。
そして、代表チームやブンデスリーガでなかなか点が取れない高原。これもまた、中山雅史の力が大きかったのではないか、今となってはそんな気がしてなりません。