リメイクに関する考察
2004/02/02
「白い巨塔」(フジテレビ)、なかなか面白いですね。視聴率がいいのも納得です。ところで、あの番組のサブタイトルは “あの頃と、命の重さは、変わったのだろうか。” 。 もちろん皆さんご存知でしょう。この作品は過去にもドラマ化されていたもののリメイクなのです。
リメイク・ブームと言われて久しいです。先に顕著な例として話題になったのは流行音楽でしょう。そして、「白い巨塔」 のようなドラマ物。TV ドラマに限らず、映画、アニメなどもリメイク物が一杯です。ゲームの世界でもリメイクが行われています。
まずここで、リメイクのメリットを考えてみます。
なんといっても大きいのは、“その知名度が宣伝を行ったに等しい” という点です。商売を考えると、まずは知名度を上げる為に莫大な宣伝費をかけるのは当然です。例えば音楽においては、まずはそのメロディなり歌詞なり題名なりを覚えてもらわないと、リクエストされることも購入されることもありません。費用をかけてその曲を宣伝するのは当たり前です。リメイクの場合、その宣伝費用無しに題名やメロディが、既に覚えられているのです。これほど大きな経済的なメリットを見逃す手はありません。
もうひとつは、創作活動における一番労力のかかる部分をしないということです。音楽における歌詞とメロディ、ドラマにおけるシナリオなど、最も本質的な部分に労力をかけずに作ることができるのです。これも経済的観点での大きなメリットと言えるでしょう。
さらに付け加えると、過去に上手く行ったことをやっているのだから、上手くいく可能性が高いということです。成功するか失敗するかはやってみなければわかりません。しかし、過去に成功したものは (過去に成功しなかったものよりは)、現在でも成功する可能性が高いでしょう。
つまり、リメイクとは経済的に固い手法なわけです。革新的なことではありませんから、物事の発展という観点から見ると後ろ向きなことかもしれませんが、不景気な時代に選ばれるであろう当然のやり方でしょう。
次にリメイクの内容について分析してみます。
リメイクするということは、オリジナルのままをもう一度出すのとは違います。どこが変わるのかというと、基本的には時代を反映した調整が行われる、と考えるのが良いのではないでしょうか。
音楽においては、オリジナルが良い歌詞、良いメロディであったなら、あとは古臭い印象がなくなればそれで OK でしょう。手っ取り早いのはリズムトラック (ドラムとベース) を差し替えることです。これだけで現代風になります。もちろん全部録音しなおしても構いませんが、リズムトラックを新しいものにするだけでも古臭い印象はなくなるはずです。
ドラマや映画において、音楽のリズムトラックに相当するのがファッションやデザインでしょう。ストーリー自体をそのままで、ヘアスタイル、服装、家具や車などのデザイン。電話が携帯になっていることや、駅が自動改札になっていることなど。それらを現代風に直すだけで OK なはずです。もちろんある程度はストーリーのアレンジも必要な場合があるかもしれませんが、まあこれだけでもリメイクはほぼ完了でしょう。
この観点で考えると、時代劇のリメイクというのは、ちょっと違う物だと言えます。時代劇の場合はファッションなどを大きく変えることができません。ですから時代劇のリメイクはストーリー自体に手を入れざるを得ません。時代劇のリメイクの際に “新しい○○像”、“新しい解釈” など言われることが多いのはこのせいでしょう。
ただし、現在放映中の 「エースをねらえ!」 についてはリメイクといいつつも、ちょっと違う狙いがあるかもしれません。というのは、上記に述べたような時代調整アレンジが、意図的に行われていない個所があるからです。お蝶夫人や宗方コーチは意図的に原作の髪型をイメージさせているし、今時別れ際に “失敬” なんて言う高校生がいるわけありません。明らかに意図的です。
これは “パロディ” もしくは “ギャグ” というべきものです。リメイクという宣伝上のメリットを活用した上で、さらにオリジナルを知っている人に “そういう手法なのか!”、“そこまでやるのか!” という点で楽しませるという作戦です。まあ、オリジナルを現代風にアレンジしただけでは駄目だという判断で、お笑い方面へ走ったのでしょう。ある意味逃げ道と言えるかも。
いずれにしても、リメイクというものは “楽な手法” ということが言えると思います。リメイク作品が面白い、というのは事実でもあるし、楽しめればそれでよい、というのもひとつの考え方です。いろんなパターンがやり尽くされ、もはや新しい物は生まれ難くなっていることも確かだと思います。しかし、あまりにリメイク物ばかりが評価されると、オリジナルな新しい物が生まれてきません。我々としては、意図的にオリジナルとリメイクを格差を付けて評価するくらいのことをしないと、もはや新しい物を作ろうという人がいなくなってしまう危険があるのではないでしょうか。
実は今回のコラムは、元は友達らとの雑談で出てきた話題でした。
ただし、その時にメインに持ってこようと思ったのは、「サザエさん」 や 「ドラえもん」 でした。
「あれら長寿番組は、リメイクの観点で考えるとどういうものになるのだろうか?」
つまり、
『 “もしもボックス” は近い将来に “もしも携帯” でないと子供に通じなくなるに違いない!』
そう思ったのです。
これらから発展して、
『サザエさんの家では、いつのまにか黒電話がプッシュホンに変わり、いつのまにか携帯になっているに違いない!』
『朝日が丘の駅はいつのまにか自動改札になっているに違いない!』
『そのうちワカメが髪を染めるに違いない!』
そう思ったのです。
いや、いくらサザエさんとはいえ、多少は時事ブームをとりこんでいるはず。多分これは間違いない。
つまり、番組を継続しながら “リアルタイムにリメイクが行われている” のではないか、と。そしてこれは “リメイクブームのずっと先を走っている” のではないか、そう思ったのです。
ところが……、
それを確認しようと、この日曜日の 「サザエさん」 を見ました。ところが、なんということでしょう。 TV にはしっかりと黒電話が出てきたのです。
僕が子供の頃から “(サザエさんの住む) あさひが丘は時間が止まっている” というネタがあったのですが、まだそのネタを引っ張っているとは……。おそるべし、サザエさん。