ライブドア、近鉄買収の意思表明に関する雑感
2004/07/04
本来ならば、近鉄、オリックスの合併に関する話が先にあるべきなんですが、そちらの話は敢えて取り上げないつもりでした。というのは、明らかに状況が変化している最中であって、何かを書くのは時期尚早だろうと思ったからです。
ところが、僕としては予想していなかった出来事が起きました。livedoor による近鉄買収の意思表明です。さすがにこれは予想していませんでした。まさかあの赤字事業に投資しようという人が出てくるとは。ただし、正直な話これは実現しないでしょう。また、話題自体が今後尻すぼみになっていくと思えますので、ここではこの件に関わることを中心に感想を書いてみたいと思います。
さて、その前に 2年前に書いたコラムがこちら。『NPB (日本プロ野球) は改革できるか? (前編)』、『NPB (日本プロ野球) は改革できるか? (後編)』
そこでは巨人戦の視聴率が下がることで放映権料が下がるようだと、セリーグのチームが危ない、という話を書きました。昨年若干持ち直した巨人戦の視聴率ですが、今年は史上最低ペースですすんでいます。しかしセリーグの問題が出るより先に、パリーグの方が経済的に耐え切れなくなってしまった、というのが今回の話です。
経済的に耐え切れなくなったパリーグですが、そこで選ばれた対応策はチーム合併でした。 そんななかで買収の意思を表明した livedoor なわけですが、話は門前払いされます。まあ、ポッと出の IT 企業が信用されなかったということもありますが、やはり背景に将来の 1リーグ化へのシナリオがあるのではないでしょうか。つまり、現状のシステムの継続では駄目だという判断がある、と。おそらく近鉄以外のチームも実は限界に近い状況にあり、あわよくば 1リーグ制による巨人戦放映権料の獲得、あるいは別の合併による負担軽減を意識してるチームがいるのではないかと思うのです。 ある意味 livedoor が門前払いされるのは当然です。せっかくのチャンスを潰す行為なのですから。
ところでこの livedoor という会社、このところ僕がメインで使っているブラウザ、Opera の国内代理販売の権利を持っていることで知っている会社でした。つい先日も Opera の新バージョンをダウンロードしたばかりです。他でも Linux 関係で知っている人もいるでしょう。実はネットなんかで調べたらわかりますが、他社とのトラブルで子供の喧嘩のようなやり取りで話題になったり、ユーザーサポートに関する問題や節操の無い他社買収で、あんまり評判のいい会社ではありません。
まあこの会社の評判はおいておきましょう。ではもし、近鉄の買収が成功したとしたらどうなるでしょうか?
社長がインタビューで語っていましたが、事業内容を改善して数年で経営を安定させるとのこと。過去のこの会社の他社の買収のケースを見ると思い切ったリストラが行われる可能性が高いようです。ホームタウンを大阪に置くということは、年間10億円の大阪ドーム使用料はこれからも払い続けなければなりません。とすると選手の年俸を下げるのが必須となるでしょう。
現在のプロ野球の問題点のひとつは、選手の年俸が高くなりすぎていて、経営の実態と一致していないこと、これは確かです。この問題の改善になる…………果たしてそう言えるでしょうか? ひとつのチームの年俸が下がっただけでは全体への影響はわずかです。さらに、高年俸すなわち能力の高い人気選手は他のチームへ移籍する可能性が高いです。そうすると、チーム間戦力格差というプロ野球界の別の問題に拍車がかかるのではないでしょうか?
近鉄ファン、オリックスファンからすれば、 livedoor の近鉄買収はいい話でしょう。けれども、プロ野球が抱える今回の問題 (パリーグの経営が成り立っていないこと) の直接的な解決になるとは思えません。むしろ目先にある問題を先送りにするだけなのではないでしょうか?
ただし、話が簡単でないのは、近鉄とオリックスが合併して仮に 1リーグ化などの大きな変化があったとしても、プロ野球が抱える問題が解決するかどうかはわからないということです。チーム数が減って 1リーグ化が実現すると、おそらく 1チームあたりの経営は今より安定するでしょう。しかし 2年前のコラムに書きましたが、応援していたチームを失うファンが多数でてしまうことや、生でプロ野球を観戦するチャンスが間違いなく減ることが、プロ野球にとって、いや野球界全体にとって良いことでしょうか?
livedoor を門前払いにすることで、現在のプロ野球は明確に岐路に立ちました。おそらく、以下のどちらかに進むはずです。
ひとつは僕が 2年前に書いた方法、「巨人戦放映権料に頼らないシステムを作る」。しかし、今のところ全く別の方法が用意された可能性が高いです。「プロ野球の規模縮小をすれば巨人戦放映権料だけでやっていける」。
単純にチーム数を減らして 1リーグ化するというのは後者です。正直なところ、この方法でプロ野球が生き返る (健全な経営状況になる) 可能性はあると思います。ただし、上に書いたような規模縮小によるデメリットがどれほどの大きさなのか、誰にもわかりません。(もしかしたら、大相撲のような特殊競技 - プロスポーツとしては確立しているが競技人口は少ない - の状況が近いのかもしれません。) しかしながら、もしかしたら 1リーグ化の道をたどりながらもこの変化をきっかけに、前者のシステムが成立する可能性がないわけでもありません。
とにかく、何もしなければ ( livedoor が近鉄を買収してしまったら) 現状のまま。背景にどういう思惑があるにせよ、プロ野球は変化の道を選んだのです。
岐路に立ったプロ野球。しばらくは状況を見守りたいと思います。