近鉄バファローズのチーム命名権売却
2004/02/08
結局、近鉄バファローズのチーム命名権売却の構想は、他チームのオーナーの反対で中止になりました。
先月末、近鉄バファローズは毎年30億円といわれる赤字対策で、チーム名を年間35億円(5年契約) で売りに出す構想を発表しました。ここ数年の、“東京スタジアム” -> “味の素スタジアム”、“グリーンスタジアム神戸” -> “ヤフー BB スタジアム” と同じ、ネーミングライツ (命名権) という商売です。チーム名は “○○バファローズ” となるそうです。
これ、凄い発想ですよ。なんと毎年30億円の赤字から一気に毎年5億円の黒字に持っていこうっていうんですから。ただ常識的に考えるとそんな上手い話は有り得ないと思うのですが……。
さて、この話についての感想を書きたいと思います。
まずチームの命名権を売却すること自体についてですが、原則としてはそれもアリだと思います。今時何かを売り買いしてはいけない、という方が難しいでしょう。実際 Formula1 などのモータースポーツでは、チーム名にスポンサー名が入るのが当たり前。チームの名称も変わるし、マシンのカラーリングも劇的に変わります。これらの実例から見ても、チームの運営資金を得る為にチーム名を売るというのはアリでしょう。
ただし、これらのモータースポーツが地域密着システムではないことは忘れてはいけないポイントです。具体的に説明しましょう。Formula1 は “F1 サーカス” というような言葉もあるように、サーカス同様の世界各地への巡業方式が基本です。そして、チーム運営費は観客動員による収益で成り立っているわけではありません。ほとんどがスポンサーマネーで成り立っているはず。直接的なチームのファンによる収益 (観客動員やグッズ購入) はあまり期待していないと思います。
国内モータースポーツにおいてもこれは同じです。観客動員は組織全体の収益であって、個別チームの収益ではありません。サッカーなどでいうところのホームゲームというものは存在しないということです。これが、モータスポーツの重要な特徴です。
Formula 1 にちょっと詳しい方は、フェラーリのように地元の熱狂的ファン (ティフォシ) がいるケースもあるよ、と反論されるかもしれません。しかしこれは話を最初に戻せばわかるはず。フェラーリがチーム名を変えることがあると思いますか? ティフォシが、フェラーリというチーム名を、あのフェラーリの赤いカラーリングの変更を許すでしょうか?そんなはずはありません。フェラーリは全くの例外で、他のモータースポーツのチームと同等には語れません。
では、他の地域密着タイプのスポーツで考えてみましょう。まず欧州のサッカーなどでは基本的に地域名やそれに準ずるものがチーム名ですので、それが売られるケースはあまりないと思われます。また、アメリカのスポーツは最初から企業名がつかない都市名ですから、チーム名が売られること自体が有り得ません。つまり、ホームタウンを持っているようなチームがチーム名を売買しているケースは世界的にもほとんどない、と思われます。
個人的な意見では、もし地域密着重視という前提のチームならば “チーム名変更は論外” です。チーム名というのは重要なアイデンティティのはずだからです。いや、地域名がチーム名になっているはずだからアイデンティティそのものであるはず。もし地域密着をそれほど重視しないという場合でも “チーム名変更は得策ではない” と思います。チームへの愛着という点で大きなデメリットがあると思うからです。例えば、数年後に別の名称になることをわかっていて、チームのグッズを買うでしょうか? モータースポーツを前例とするならば、チームカラーも変わってしまうかもしれません。だとすると、少なくとも僕はグッズ購入を躊躇します。
近鉄の命名権売買の話に戻りましょう。
これは、現在の日本のプロ野球がどういうシステムであるべきか、という問題にも関わります。“チーム名をニュースで連呼してもらうことが宣伝であり、それが金銭的価値がある” という考え方で突き進むなら、命名権を売るという判断もありでしょう。しかし、ある程度地域密着を配慮するなら、やはり得策だとは思いません。
ちなみに、僕は以前から、日本のプロ野球に関してはチーム名から企業名を外すことには懐疑的です。(「J リーグが企業名を外したほんとうの理由」参照のこと) 現在、広告価値としてチームが存在しているのは明らかなのだから、チーム名に企業名が入るのが当たり前だと思います。その上で地域密着の活動をするのは良いと思いますが、中途半端に名前だけ地域密着に見せかけるなんてやって欲しくないです。例えば、地域密着の名の元でチーム名に地域名を入れておきながら後にチームが売られて移転するなどは最悪です。移転する可能性が残るなら最初から地域名はつけて欲しくないです。そして、企業名を出さないくらいならチームを売ればいいと思います。
もちろん最初に書いたように近鉄は 5億円の利益を出そうとしているわけですから、チーム自体を売らずに命名権を売ろうとしたわけです。しかし、本当に年間 35億円を出す企業がみつかったのかどうかは疑問です。考えられるのは海外の企業でしょうか。海外資本の場合は金銭価値や基盤も異なりますから、投資としての資本投入ということもあるでしょう。ただし、こういった海外企業の事情は全くの偶然の要素であり、そう思う海外企業が無くなれば、35億は妥当な金額ではなくなります。とすれば安定した継続的な収入にはならなくなるはず。
とすると、もし現在の30億円の赤字が広告価値に相応しくないと近鉄が判断するなら、近鉄はチームを売却あるいはチームを消滅させるのが妥当だと思います。
なお、他チームのオーナーが反対した理由、“野球規約で認められない” というのはちょっと微妙なようで、過去の、トンボユニオンズ(55)、太平洋クラブライオンズ(73〜78)、クラウンライターライオンズ(77〜78)、はスポンサー会社がチーム名をになっていたようです。(野球ウェブ別館)
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