アテネ・オリンピック女子バスケットボール・アジア予選
2004/01/18
(緊急寄稿です。)
たった今、アテネ五輪予選を兼ねたバスケットボール・女子アジア選手権の準決勝、日本vs韓国の試合が終わったところです。結論から言うと、まるっきりの格上の韓国に対し、二度 (!) のオーバータイム(延長) の末、日本が勝利。アテネ・オリンピック出場権を獲得しました!
アトランタ五輪女子バスケットボールのアジアからの出場枠は 3つ。実質、中国、韓国、日本、台湾の 4ヶ国が争います。そして、ここ最近の実績から言うと、中国(世界選手権6位、アジア大会優勝)、韓国(世界選手権4位)、は完全に 2強の別格です。(ついでに言うと、ここ最近の国際試合では日本は台湾に連敗中。)
実際予想通り、予選リーグでは、韓国、中国が1位、2位。対戦で日本は完敗でした。そして日本と台湾の対戦はオーバータイムの接戦で台湾が勝利、日本は 4位となり、上位 4チームによる決勝トーナメントが始まりました。組み合わせは、日本が韓国と対戦、中国が台湾と対戦です。
誰もが、中国、韓国が順当に勝ちあがり五輪出場決定、3位決定戦が最後の一枚を争う大一番、そう思っていました。実際、日本の試合の前に、台湾は中国戦でメンバーを落として翌日の日本戦に備えて体力温存。結果、ダブルスコアで大敗しています。
正直この試合、台湾同様、日本も “捨てる” べきかもしれない、そう思いました。(実際は体調の悪い楠田(旧姓川上)を温存しましたが。) というのは、昨日試合がなかった韓国に対して日本は連戦であること。明日の 3位決定戦を考えると、ここで体力を消耗してまでの戦いはあまりにも危険な賭けです。とはいえ、試合会場は日本(仙台)。あからさまに捨てるというわけにはいかなかったのも確かでしょう。もし、会場が海外だったらどうだったか……。
結局日本代表は先発からほぼレギュラーで臨み、第1ピリオドはリードを奪います。ところが第2ピリオドでは韓国が逆点。この辺りでは韓国の決定力に圧倒された感じでした。(このピリオドに出た選手はちょと守備が弱かったかもしれません。) “やっぱり駄目か……” そういう雰囲気で一杯だったと思います。
ところが、第3ピリオドで再逆点、日本リードのまま第4ピリオドへ突入します。この辺りで印象に残っているのが、守れる選手の起用だったように思います。ガードで起用した立川の前からの守備に代表されると思いますが、その粘り強い守備で第4ピリオドとオーバータイム(延長) の勝負どころでは韓国があまり 3ポイントを打っていないと思います。粘り強くローテーションディフェンスをして、フリーでシュートを打たせませんでした。
そして、第4ピリオド残り時間わずかなところの矢野のスリーポイント。まずこれには痺れました。あの勝負を決する絶対的な場面で決めるなんて。
そしてオーバータイム。ほぼ逃げる形を作りますが、韓国も粘って追いついてきます。
ついに 2回目のオーバータイム。先に得点し、粘り強く守る。びびってしまいそうな、あるいは、守りに入ってしまいそうな場面で、きっちりシュートを決めます。そして、とうとう韓国が攻めあぐねて形をつくれないままシュートを打って外して自滅。根負けというのが適切かな。
まさに死闘を制して、日本はアテネ・オリンピックの出場権を獲得しました。
この試合のスタッツで目に付くのはやはり、矢野の34点(45分)、に対して浜口の2点(19分)、大山3点(14分)。勝負どころのオーバータイムは浜口は全く出場なし。大山も退場した薮内に代わって入っただけ。加えて楠田 (旧姓川上) の欠場であったことを考えると、明らかにほんの数年前の主力抜きでの勝利です。
もしかしたら、この若手主体であったからこその勝利だったのかも……。
ここで白状しましょう。
この試合を見ていて、第2ピリオドで逆転された頃、“女子バスケの低迷について” のコラムを書こうかなぁ、と考えていました。まあ、ずっと女子バスケ代表チームを見ているわけではないので、低迷した直接原因を指摘するのはちょっと無理なのですが、いくつか思うことはあります。
折角なので、その思ったことをここに書いてみます。
今回の勝利は素晴らしいことではありますが、やはり数年前の一時期、日本、韓国、中国が 3強だった時期があったのは確かです。(前回の五輪予選で日本は準優勝でした。残念ながら出場枠がわずかに 1だったせいで出場を逃しましたが。) 現在の実力を考えると、やはり一時に比べると低迷した、と言えると思います。その原因は、結局はエース不在ではないかと思います。
バスケットボールというスポーツは、かなりチームプレーの比重が大きいスポーツです。全員守備、全員攻撃というスポーツということもあり、全員が同じ攻撃と守備の練習をするはず。そして練習のほとんどがチームプレーではないでしょうか? ところが、それと矛盾するようですが、ここ一番の勝負を決めるのはエースの力です。マイケル・ジョーダンのプレーを知っている人はわかるでしょう。接戦のここぞというところで決めてしまう力。きっと練習だったら同じ場所から決めることが出来る選手はたくさんいるはず。ほんとに、神経が磨り減りそうな場面で決めることが出来る選手、それがエース。そしてエースのもうひとつの条件は、ムードが悪くなるようなミスをしないこと。ミスしてボールを失ったり、良くない形のシュートを打って外したり、フリースローを外したり。それはエースではありません。
チーム力軽視ではありません。イメージとしてはこんな感じです。
チームが全員で土台を作る。ふたつのチームが築き上げた土台に差があればそれだけで勝負は決まります。ところが、ふたつのチームが作り上げた土台がほぼ同じ高さだった場合、エースが勝敗を決する、もしかしたらちょっとくらいの土台の高さの差だったらエースがひっくり返してしまう。土台は前提条件として大事。けれど最後の仕事で決めるのはエース。そんなイメージです。
アトランタ五輪のスタメン、村上、大山、加藤、萩原、浜口。やはりエースと言えるのは、加藤、萩原でした。加藤はここぞという時の 1対1 で勝ち、萩原はここぞというところでシュートを決めていました。彼女らが抜けた後は浜口が絶対的なエースでした。ただし、浜口はポジション的に国際レベルで絶対を求めるのは酷でしょう。研究もされますし。日本の場合、エースはポジションで言うと 2番(シューティングガード)、3番(スモールフォワード)、4番(パワーフォワード) でなければいけません。
ということで、ここ数年での低迷の印象は、大山、永田といった期待された若手が、エースという存在に成りきれなかったのが原因ではないかと思います。大山や永田がエースでない、というのはちょっと厳しい言い方かもしれません。しかし、あくまでも僕の考えですが、彼女らの高い身体能力が引き起こす、素晴らしいプレーで一人抜いて、あるいはリバウンドを取って、“ところが” シュートは外してしまう、というようなプレーはエースはやってはいけないプレーなのです。エースは、味方に 「あれ?」 と思わせたり 「がっかり」 させたりするようなプレーはしてはいけないのです。「いつもできることを、いつも決める」 これがエースの条件なのです。
マイケル・ジョーダンはフェード・アウェイ・シュートを決めて、レジー・ミラーはスリー・ポイントを決める。カール・マローンはショートレンジのシュートを絶対に決める。フリースローも外さない。そんな感じです。
もちろん、大山、永田はいい選手です。
特に今日の試合に関しては、永田のリバウンドへの飛び込みは勝利の大きな要素であったことは間違いありません。あれはチームを鼓舞するプレーでしたし、オーバータイムであのプレーがなかったら勝てなかったかも。大山も守備が出来るので、最後にベンチに残っていたのは大きかったでしょう。いなかったらやばかったかも。そういうチームの大きな力、勝利を作る前提の土台を作る源であることは疑いようもないのですが、勝敗を決するエースという存在感までは感じません。
ということで今日の試合、あの土壇場で何本もシュートを決めて見せた矢野良子。ジャパンエナジーの試合を見ていても、パッとシュート打って決めてしまうのが印象に残ります。ひょうひょうとしたイメージ。度胸があるんでしょうか? 大舞台に強いかもしれないと期待させてくれる選手です。
彼女が “エース” というような存在になれるかどうか、それがこれからの注目でしょう。
(今日ちょっと気になったのが、ここで動いてあげれば味方が楽なのに、というようなボールをぼけっと見ているシーンがいくつかあったこと。このあたりのぼっとしてるのは、動じない精神的強さの裏返しなのかもしれませんが……。)