プロ野球の競争、サッカーの競争
2004/10/16
プロ野球に関する一連の騒動の中で、TV放映権の収益分配のことが話題になりました。
現在のプロ野球のシステムは、ホームゲームを開催するチームがTV放映権を持ちます。これが唯一の全国中継である読売戦の莫大な放映権料を生み出し、その結果として、交流戦をなかなか受け入れなかったセリーグのオーナー達、交流戦を求めるどころかついには 1リーグ制を求めるパリーグのオーナー達、という状況を生みました。これが今回のプロ野球の騒動のなかの様々な問題点のひとつとして取り上げられ、“放映権料を一括徴収して全チームに分配してはどうか?” という声が出てきたのは必然と言ってもいいかもしれません。
この主張に対して反論したのが、その全放映権料のほぼ半分を手にする読売のオーナー。彼の主張は、“各チームが競争することが大事”。確かにこれには一理あります。資本主義と社会主義の経済がそれぞれどうなったかをみれば分かる通り、競争なくして経済的な繁栄はありません。競争原理を持ち込むのは経済的繁栄を求めるために必須と言ってもいいでしょう。
ただし、このプロ野球における “競争” とは、一体何と何が競争しているのでしょうか?
プロ野球における大切な競争といえば、もちろんチーム同士の競争です。しかしそれら同様に、いや、もしかしたらそれ以上に大切な競争があるのではないでしょうか? プロ野球は興行です。観客を動員する、あるいは TV放映権を売る、あるいは広告費をとる、グッズを販売する、それらの収益の元となる人気が大切です。
プロ野球が競争するべきものは、プロ野球以外の全てのエンターテインメントです。野球以外の各種のスポーツは当然として、TV のバラエティ番組やドラマ。それだけではありません。映画や演劇、ゲームやインターネット、そういった物全てです。
それらと競争して勝つにはどうすればいいか? 確かに宣伝して話題づくりをすることも大事でしょう。特に読売は系列マスコミを使ってそれを実現してきました。しかし趣味の多様化などが原因だと思われる視聴率全体の低下、CS や BS などの放送チャンネル数増加などから、従来の方法では効果が薄くなっているでしょう。とすると、何よりもまず魅力ある試合をすることが必要です。そのためにチーム間の戦力格差を減らすことは大切なはず。そのためだったら、放映権収益の分配は非常に効果的な手法だと思うのですが。
『プロ野球騒動の根本原因』 に書いたように、こういった発想はプロ野球全体を考えていないと出てきません。自分にチームが儲かればよいと思っていたら、他のエンターテインメントと競争しているという意識が弱くなってしまうのは仕方ないでしょう。
さて、今度はサッカーについて同じことを考えてみましょう。
“サッカーだって全く同じ話なのでは?” と思われるかもしれませんが、ちょっと違うように思えます。実はコラムの題名として “Jリーグ” と書かずに “サッカー” と書いたのは意図的なものでした。サッカーにおいては国内リーグだけを取り上げて話をするのはあまり意味がないからです。
ではサッカーが競争しているのは何か? サッカーが競争しているのは、何よりもまずは外国の代表チームです。ワールドカップ出場を賭けて戦う相手チームこそが、ほんとうの絶対的な競争相手なのです。
日本においてプロサッカーリーグ、Jリーグを作った最大の理由は日本サッカーのレベルアップの為、すなわちこれはワールドカップ出場の為です。もちろんスポーツ文化云々のような理由もあるわけですが、それらもワールドカップを含めたスポーツが生み出す世界全てが念頭に入った上の話のはずです。ワールドカップに出場という素晴らしい場面を体験することがスポーツ文化のうちのとてつもなく大きな喜びのひとつなのですから。
従って日本代表強化を考えないJリーグ運営はありません。いくらエンターテインメント的に面白いからといって、“ゴールのサイズを大きくして得点機会が増えるようにしよう” などと主張する人はいません。強いチーム同士の対戦が減る “2リーグ制にしよう” と主張する人もいません。(プロ野球ではチーム毎自由に決めるので 『飛ぶボール』 を採用したりすることがあるわけですが。) もちろんご存知のようにVゴールなど独自なものもありましたが、それらも FIFA に許可をとってから行われたはずです。実際それらも国際大会で採用されるルールの一種であり完全な国内独自なものではありません。近年では延長廃止や 1リーグ性など、より国際標準に近づけるルール改正が行われています。各クラブにとっては厳しい昇格/降格が存在するのもリーグのレベルを上げるためにはその方式がふさわしいからです。
もちろんJリーグだって興行であることはプロ野球と同様ですから、他のエンターテインメントとの競争も当然あります。しかし、まずは強い代表チームであること、それを支える国内リーグであること、それが第一。そして結果的に、それらを充実させることで魅力を高め、間接的に他のエンターテインメントと競争していると言えるでしょう。
今回書いた、プロ野球とサッカーの競争相手の違いですが、それらが異なる根源としては、アメリカ文化と欧州文化の違いと考えることもできます。それについては、こちらのコラムで書いています。