予想外のプレー

2003/04/13

ネットには様々な人が、様々な文章を発表しているわけですが、その中には自分と同じ考えが発表されていたりすることもあります。今回見つけた、大住良之氏が書かれてた 「いいことばかりは悪すぎる」 は、前から僕が考えていたことに近い内容でした。

それは、題名にもあるように “予想外のプレー” なのですが、文字そのままの “予想外のプレー” ではありません。大住氏のコラムで挙げられたケースとは、『フランス代表のサッカーがあまりに予想外なプレーを連発するので、守るブルガリアがその予想外のプレーが行われることに慣れてしまった』 というものです。文字そのままの “予想外のプレー” であっても、そればっかりでは予想外でなくなってしまうというお話。
もちろん、この単純な予想外のプレーは間違いなく素晴らしいものです。それはファンタジスタと呼ばれるような一握りの選手、あるいは抜群のテクニックや視野を持つ世界トップレベルのプレーヤーにしかできないプレー。しかし、ここで述べたいのではそういう素晴らしい選手による素晴らしいプレーではありません。そんな凄い選手がいなくても、予想外のプレーは出来ると思うのです。

どんなチームでもできる、“単純な予想外のプレー” ではない、“予想外のプレー” とはどういうプレーでしょうか? 僕の考える、この予想外のプレーとは、“予想外を仕組んだプレー” です。
具体的な例を挙げましょう。実は、ちっとも大それたプレーではありません。前半にミドルシュートを打って、後半に同じポジションからパスを出す事。これだけで、それは “予想外のプレー” と成り得るのです。特に前半のミドルシュートがゴールの枠をかすめるようないいシュートだった場合、後半の同じポジションでのシュートチャンスに、相手チーム DF は絶対シュートだと思って何人も飛び込んできます。そこでマークの外れた味方選手にパスを出せば、よりチャンスになる可能性が高いです。(ちなみに、個人的な印象なんですが、ドゥンガは前半のチャンスでは必ずミドルシュートを打ち、その後は、同じ場所からノールックのパスを度々見せたような記憶があります。)

もう少し具体的な例を挙げておいた方がいいかもしれません。例えばサイドでの攻防のケース、縦にえぐる、中へ切れ込む、アーリークロスを上げる、どれでも良いのですが、まずは相手選手に嫌なプレーを見せつける。できれば複数回繰り返す。それを見せつけておいてから、次のチャンスでは裏をかいて別の決定機を作り出す。
ポイントは、偶然じゃなくて意識的にやることです。もちろんサイドでの攻防などで、ちょっと能力の高い選手は無意識に予想外のプレーを複数回行って、相手ディフェンダーを混乱させているとは思います。それはそれで十分に素晴らしいのですが、それを意図的にやって欲しいのです。

どうして偶然でなく、意図的にやって欲しいのかと言うと、ひとつの理由はより効果を高める為。上記のシュートの話で書いたように、騙す効果を高めるということです。「どのプレーが来るだろう?」 と翻弄させるよりも、「このプレーが来る」 と思い込んでしまう方が騙せるのではないかと思うのです。
もうひとつの理由は、サッカーにおけるより深い個人レベルの戦術として、サッカー観戦の奥深さを加えて欲しいのです。サッカーの面白さを言葉で語る際に、システムの選択や、選手交代の妙などはしばしば語られるネタですが、個人戦術はなかなか語られる部分ではありません。実際は個人戦術の駆け引きというもは、毎試合、いつ何時でもリアルタイムで行われているわけですが、それは言葉では説明し難い部分です。その中に “90 分の試合の流れの中でのプレーの選択” という個人戦術を加えて欲しいのです。言葉で面白さを伝えるのが難しいサッカーに、このような個人戦術を語ることのできれば、よりサッカーの面白さを伝えやすくなっていいなぁ、と思うのです。


こういう、駆け引きが一杯あるのは、“大人のサッカー” と言ってもいいかもしれません。サッカーは子供から大人まで出来るスポーツではありますが、やはり大人には子供とは違う “大人のサッカー” をして欲しいです。

さて実はこの話、過去に 「トルシエ・サッカーが嫌いな理由(わけ)」 の中で同じようなことを書いています。- 『僕が見たいのは、基本的には約束事(パターン)があるサッカーです。その約束があってこそ、それ崩す意外性が面白いのだと思うのです。』
ただ、そのコラム内にもありますが、サッカーのひとつの魅力は自由奔放さにもあるわけで、無闇に型にはめてしまうのは危険でもあるんですよね。だから全てのチームがそうやって欲しいとは思いません。何事も多様であることが強さにつながるわけで、とりあえずは、一部のチームや、一部の選手が、そういう戦術を取り入れてくれたら面白いと思うのですが。そういう監督が出てこないかなぁ。