後に 「続・飛ぶボール」 を書きました。
飛ぶボール
2003/06/07
皆さん、ファミコンなどの野球ゲームをご存知ですよね。最近のはやってないので良く知りませんが、僕が過去にそれらの古い野球ゲームをやった時の一番の違和感は “流し打ちのホームラン” でした。それらのゲームってタイミングが勝負らしく、アウトコースのボールにタイミングを合わせただけでボールがスタンドまで飛んでいくわけです。当時、それに凄く違和感を感じた覚えがあります。
けれども、最近のプロ野球を観ている人ではあまり違和感を感じないかも。
さて、“飛ぶボール” というのをご存知でしょうか?
現在日本のプロ野球は、サンアップとミズノの二社がボールを供給しています。昨年までパリーグ全球団と読売、中日がミズノ製。残りがサンアップ製でした。そして今年から、横浜がサンアップ製からミズノ製へ変更しました。 このミズノ製のボールが、いわゆる “飛ぶボール“ と言われています。
(追記 2003/07/01 ここの記述は間違いであるという指摘を受けましたので、取り消し線を入れました。他にも供給している会社があるようで、これは僕が勘違いをしていました。下記リンク先にあるサンスポの記事によると、パリーグ全球団と読売、中日、横浜がミズノ製という記述はありますが、それとは異なる主張もあるようで、現在のところ正確な状況はつかんでいません。供給メーカーの不確かさはありますが、下記のホームラン数などのデータは間違いではなさそうなので、以下はそのまま続けます。) (追記 2003/07/02 さらに詳しいことがわかりましたので、一番下に追記しました。)
どのくらい飛ぶのかというひとつのデータがあります。実は一昨年から昨年にかけて、中日がサンアップ製からミズノ製にボールを変更しました。その結果、中日ドームのホームラン数は54本から105本に倍増。
さて今年のデータ。横浜のホームラン数は昨年のリーグ最下位から現時点 (6/4) でリーグトップ。期待通りの実績です。
もちろん、理論上はどの会社のボールでも同じです。 「秒速75メートル(時速270キロ)のところで反発係数0.41〜0.44の範囲に入ると合格」 という検査を行っているので、会社による違いがあるはずはありません。しかしこれほほどの “実績” を突きつけられて、“反発力は同じだ” と言い張るのもどうしたものでしょう?
そういえば昨年末に MLB 選抜が来日して日本選抜チームと試合をしたわけですが、メジャーリーガーが帰国後に、「東京ドームのボールは異様に伸びる」 とコメントしたらしいです。ボールのせいか、またしばしば囁かれる “ドームラン疑惑 (上空の空気の流れか、湿度のせいか、東京ドームでホームランが出やすいと言われている疑惑)” でしょうか?
(追記 2003/07/06 ここの記述に関してご指摘を受けました。日本で行われる MLB との対戦は MLB のボールが使われるようですので、 “飛ぶボール” の話とは無関係でした。)
実は、飛ぶボールというのは歴史的には初めての話ではありません。
1949-1950年の 2年間だけ “ラビットボール” と呼ばれる “飛ぶボール” が使われました。この 2年間は日本プロ野球の多くの打撃記録が記録された 2年間。流石にラビットボールは別格の扱いのようですが。
そのラビットボールほどでもないのですが、1980年にも疑惑があるらしいです。
『チームならびにリーグにおけるシーズン最多本塁打記録がいずれも1980年であるが、同年はパ・リーグ6球団中4球団が反発力を強くしたミズノ社製のボールを使用した。他社製のものよりも11メートルから16メートルは飛距離が伸びるという、いわゆる「飛ぶボール」である。同年、セ・パ両リーグ合わせて実に2045本ものホームランが乱れ飛ぶというあまりの異常事態に当時の下田武三コミッショナーが同社にボールの反発力を落とすように要請し、1981年以降は飛ぶボールの問題も沈静化された。 (「飛ぶボールは復活したのか?」) 』 とのこと。
(追記 2003/07/06 この点について情報をいただきました。当時ミズノが違反をしていたわけでなく規定の範囲内でした。“疑惑” ということばはふさわしくないようです。ただし、当時の反発力の計測方法が現在と異なっており、その後、新方式の計測方法になったそうです。)
そして、近年のまたホームランが増えています。いやもちろん、選手のウェートトレーニングの成果もないとは言えないでしょう。けれど、極短期間での変化であることを考え合わせると、それとは比較にならないくらいの別の力が働いていると考えるのが自然でしょう。どうみても現在のプロ野球が意図的に 『ホームランを出やすくする』 方向に力を向けているのは間違いないと思うのです。
それで、ほんとに良いのでしょうか?
(追記 2003/07/06 ホームラン増加の原因として、メイプルなどのバットの新素材の導入も無視できない要因のようです。「木の話いろいろ」 )
ここで最初の話に戻るのですが、流し打ちのホームラン、あるいは振り切っていないのにボールがスタンドまで入ってしまうプレー、見ていて面白いですか?
ホームランというのは、限られたエリート中のエリートである長距離バッターが、思い切りバットを振ってスタンドに届いてこそ見ていて痛快なのではないでしょうか? ボールが遠くへ飛ぶのも単純に素晴らしいことではありますが、この “思い切りバットを振る” というのが魅力なのではないでしょうか? かつてブンブン丸と呼ばれた池山や、今の大阪近鉄の中村の人気も、思い切りバットを振ることにあるのではないですか?
いえ、全部の流し打ちが駄目とはいいません。例えば掛布のレフトへの流し打ちのホームランは凄かったですよ。あれは芸術でした。手首を返してバットを振ることでスタンドまで飛距離を伸ばす技術。そういうのならいいのです。
あるいは、かつて僕の最もお気に入りだった選手で、読売に篠塚という選手がいました。彼はバットコントロール職人の安打製造タイプの選手。間違っても普段のバッティングではホームランを打つことはない非力な選手です。ところがその篠塚、極々まれに、目一杯インコースにヤマをはって思いっきりボールを引っ叩いてホームランを打つことがあるのです。あれは明らかにイチかバチかでスタンドへ狙っているスイング。
パワーや、技術や、駆け引きの結果のホームランは面白いです。そういうのではなくて、単に振り遅れただけだったり、完全に振り切っていないのにボールがスタンドまで届いてしまう、そんなホームランには、僕は興醒めしてしまいます。最近、そういうホームランが多くないですか?
ホームランという、野球における最高の華は、限られた選手にできる希少価値のあるべきものではないでしょうか? 誰にでもホームランが打ててしまう事、そんなのはホームランの価値を下げるだけ。そう考えると、ボールがどうあるべきか、現在の状況が正しいのかどかは、自ずからわかると思うのですが。
このことだけではありませんが、どう考えても、野球界っていうのは目先の事しか見えてないように思います。
関連リンク
(追記 2003/06/13)
ドームランの話が出ましたが、そもそも東京ドームって実は狭いスタジアムのようです。
東京ドーム看板直撃弾も甲子園では客席にも届かない!? - うぇるかむ扇堂
その他の関連リンク
(追記 2003/07/02)
上記で修正を入れていますが、ボールと提供会社についてさらに詳しい情報をいただきました。
上記にある通り、今年からミズノが 7チームは間違いないですが、ロッテはミズノの他、別会社のボールも併用。残りチームは複数会社を併用しているケースが多く、今年は合計 7社による供給とのことです。チームで複数の企業のボールの併用は問題ないそうです。ただし、1試合中の複数の会社のボール併用は禁止されているとのこと。
そして、上記にもある “ミズノ製が飛ぶボール” というより “サンアップ製が飛ばないボール” とも言われているようです。
サッカーやバスケットボールの場合、リーグ全体で一社独占が当たり前なので、複数の会社のボールを扱える野球の公式球の扱いには少し驚きました。とはいえ、NBA のロサンゼルス・レイカーズで長身ポイントガードのマジック・ジョンソンに有利になるために、規定一杯まで空気を入れてボールをなるべく撥ねるようにしたのが有名なように、ある程度までなら自チームに有利になるような工夫 (各試合での、飛ぶボール、飛ばないボールの選択) は認められるできでしょう。
(とはいえ野球のボールに関して、ホームラン王タイトルへの有利不利まで考えるとなかなか難しい問題です。本当にそれを重視するならスタジアムに合わせた飛ぶ距離のボールを使うべきですが、ファールゾーンのサイズなどの有利不利などまで考えると、全くの平等にするのは不可能と言えるでしょう。この件に関してはあきらめるしかないでしょう。)
いずれにしても、“飛ばない” サンアップを使わなくなったチームが 2年連続して出てきたことなどから、やはり全体の流れとして、ホームランが出やすい方向に動いているように思われます。そういった積み重ねの結果が、ここ最近目立ってきた大量得点ゲームなのではないでしょうか?