流行音楽についての雑記 (2003年春-後編)
2003/05/16
前編からの続きの、最近の音楽についての雑記です。
ROUND TABLE
新作のアルバムは Nino という女性ボーカル参加で、ROUND TABLE featuring Nino というクレジットでリリース。バンドにおいてボーカルが変わるというのは大変な影響を持つわけで、実際このアルバムも、確かに ROUND TABLE のサウンドではあるけど、ちょっと違う印象です。それと Nino の声が写真から想像できるビジュアルのイメージと違うんですよね。写真のイメージだともっと落ち着いた声なんですが。イメージとしては野宮真貴のような。
さて、アルバムのオープニング曲の "Let Me Be With You" (某アニメ主題歌) ですが、この曲のボイスの使い方にはほんとに感心しました。 控えめなえエレピとカッティングギター、そして裏メロ的なストリングス以外は、"U-Uh"、"Yeah"、"O-Oh"、他のボイス、そしてコーラスが組み立てるサウンド。 (特に "O-Oh" の入れ方が絶妙。) 実は僕が昨年最もお気に入りだった楽曲、TICA の "I'll Be Back" も同様にボイスを並べてサウンドを組み立てていました。もはや珍しくはありませんが、これらはここ数年の DAW (Digital Audio workstation) 機材の進歩ならではの作り方です。波形を小節単位でコピーして並べてしまう作り方。サンプラーが出現した頃のボイスの使い方とは全く異なる手法です。
しかしよく考えてみるとこの手法は、かつてのテクノポップの作り方ととても似ています。代表的なのが坂本龍一によるもので、矢野顕子の "春先小紅" がわかりやすい例でしょうか。当時、アナログシンセサイザーによって作られた、ある程度複雑な単発シンセ音を並べ、リズムとすることで独自のサウンドを作っていました。それが現在でボイスに差し変わったのが、"Let Me Be With You" や "I'll Be Back" だと言えるのではないでしょうか。
また 4曲目 "New World" に面白いところを発見。最後のサビの繰り返しで一度だけ、ボーカルに変わった効果のエフェクトがかかっています。他では余り聞いたことのないエフェクトで、ちょっと驚きました。おそらくあれは、ダイナミック系のフェイザー (入力波形を変調信号とするフェイザー) ではないかと思います。このエフェクト、実際に使われているのを聞いたのは初めてだったのでちょっと感心。なかなか面白い飛び道具的な使い方でした。
さてもうひとつ気になったのが弦のアレンジ。9曲目の "Today"、この曲を聴いてアレ?と思いました。どこかで聴いたことがあるような……。 で、しばらくして思い出したのが、Original Love の "いつか見上げた空に" のアレンジ。ピアノバッキング、ストリングスの入り方がとても似ているのです。で、検索などを駆使していろいろ調べてみたのですが、どうも関連はないようでした。ところが、この Strings Arrangement の宮川弾という人を調べてほんとうにびっくり。元ラブ・タンバリンズだなんて。そして FPM のプロデューサーだなんて! Cymbals のアルバムにも参加してるし。
BONNIE PINK
まずは僕の BONNIE PINK に対するそれまでの印象の話から。
彼女がデビューした直後だったでしょうか? トーレ・ヨハンソンのプロデュースという宣伝文句に興味を持ちました。トーレ・ヨハンソンというと、僕の好きな The Cardigans、Saint Etienne、tahiti80、などのプロデュースで有名。国内アーティストではカジヒデキや原田知世などのプロデュースをしています。またプロデュースではないけど、僕の一番好きな Cloudberry Jam もトーレ個人所有のタンバリン・スタジオでレコーディングする系列のアーティストでした。(トーレ主催の音楽予備校システムみたいなところから出てきたらしい。)
ということで BONNIE PINK の当時のアルバムを試聴コーナーでじっくり聞き込んでみました。ところが、どうも僕の期待するものと違う。ややロック方面のサウンドだと感じたのです。それで購入はしませんでした。
で、あれから何年もたってアルバムを購入しました。そうしたら、再びトーレ・ヨハンソンのプロデュースだとのこと。さてここで話題にしたいのは 1曲目の "Tonight, the night" です。最初に言っておくと、この曲を聴いてこのアルバムの購入を決意しました。とても僕好みの楽曲だったからです。ただし、この曲を聴いた時に思ったのは、「これ、ちょっと前にそっくりな曲あったじゃん」 でした。この話、日記にも書いたんですが、その時は MEJA の "How Crazy Are You ?" そっくり、と書きました。しかし確認して聞き直すとサウンド以外はあまり似てなかったですね。うーん、他の曲だったけなぁ? バッキングパターンが、"1拍・4拍裏"-"1拍"-"1拍・4拍裏"-"1拍・2拍裏" って感じでヒット系のアクセントになっている曲をどこかで聴いたと思ったんですが。持っている CD をいろいろ漁って聴き直したのですが残念ながら見つかりません。どこかに埋もれてるかも。まあ、いずれにしてもサウンドやアレンジが北欧系ポップス似ているのは間違いないでしょう。
確認しておくと、過去に 『パクリの話』 で書いたように、楽曲やアレンジが似ている事を批判するつもりは全くありません。ただちょっと気になるのは、このアルバム中でこの曲だけ、明らかに他の曲と毛色が違うことです。一聴してわかるのが音数の多さ。このアルバムにおいても、他の BONNIE PINK の楽曲というのはギターかピアノ系を中心とする音数の少なめのサウンド。何年か前に試聴した時に感じたのと同じで、この辺りを僕はロック方面と感じたわけですが。ところがこの "Tonight, the night" はとにかく音数が多いです。他の曲に比べると異様といっていいくらい。パーカッションにしてもアゴゴが鳴って、タンバリンっぽい金物が含まれています。ハイハットも複数種類使ってるみたいですね。シンセも多用されています。ボーカルとユニゾンでかぶせていたり、特に他の曲にはほとんど出てこないパッド系の音の使い方などもあり、ロック系とはかけはなれたサウンドに仕上がっています。
このサウンドの違い、明らかに意図的に作られたものだと思いました。というのも、僕が "Tonight, the night" を知ったのが TVCM だったことも根拠のひとつ。かなりお金をかけて宣伝活動したのは間違いないです。それから CD の 1曲目であることも重要です。現在の CD ショップにおける試聴コーナーの充実を考えると、1曲目に売れ筋の曲を入れるのは常識。
これらからの勝手な想像なのですが、本人よりも周りの強い意向でシングルカット曲は 「スウェデシュポップ系で」 というアレンジのリクエストが出たのではないでしょうか? 実際、僕なんかはその成果としてアルバムを購入したわけでそれは成功ではあるのですが。自分の音楽をより多くの人に聴いてもらう為に、売れ筋曲を作るのは当然といえば当然の話。なんですけど、ちょっと微妙ですね……。
capsule
アルバムに収録されている "東京喫茶" という曲ですが、明らかに PIZZICATO FIVE サウンド。これはアルバム制作時期が PIZZICATO FIVE 解散の時期に一致しているので意図的に PIZZICATO FIVE サウンドにしたのではないかと想像していますが。リスペクトという意味で。で、この曲のおかげで、PIZZICATO FIVE の典型的なサウンドがどういうものが明確になりました。
外せないのはまずはタンバリンですね。そしてストリングスと、当然のようにピチカート音。それからドラムのフィルインでロールっぽいスネアも特徴的。ボイスによるアクセントも外せないところ。もちろん曲も大事ですが、楽曲構成的にはこの辺りで PIZZICATO FIVE サウンドになるようです。
あと、この "東京喫茶" は Auto Tune を使ったボイスエフェクトが印象的です。ほんとは僕はこの Auto Tune を使ったボイスエフェクト嫌いなんですよね。いつだったか、KICK THE CAN CREW が "クリスマス・イヴ" のカバーでこれを使ったときは怒りをおぼえたくらい。ただし、この "東京喫茶" の Auto Tune はギリギリ許せるかな。でも PIZZICATO FIVE は Auto Tune は使わないんじゃないかなぁ?って思うのですが。でも新しい物好きそうだから使ったかなぁ。
で、他の曲はどうだったかというと、面白い曲もいくつかあるんですが、僕が気に入るところまではちょっと足りない感じ。新作のアルバムが出たみたいなんですが、ちょっと保留です。