流行音楽についての雑記 (2003年春-前編)
2003/05/07
最近の音楽についての雑記です。ちょっと長くなったので前編、後編に分けました。
僕が利用している CD ショップに、R&B 女性シンガーのコーナーがあったんですが、今は ガガガSP、太陽族、YO-KING などのインディーズ系ロックのコーナーになっていました。どうやらR&B 女性ボーカルのブームは完全に終わったみたいです。そんな中で、最近売れているのが Soulhead と MINMI ですね。
Soulhead
最近の国内の R&B 系は、洋楽 R&B 系サウンドに並べてもサウンド的な違和感を感じなくなってきてますね。今はマスタリングまで含めた使用機材がほぼ同じというのも原因のひとつかもしれません。ただし、このことはオリジナリティの喪失とも表裏一体です。わざわざその特定のアーティストのアルバムを買う動機がなかなかみつかりません。同じようなアーティストがたくさんいますから。これが R&B 女性ボーカルブームの終焉にひとつの要素であるように思えます。
その点 Soulhead に関しては、ツインボーカルという点と、ビジュアル的な点での差別化は大成功でしょう。特にあの女性二人のシルエットはなかなかのセンスだと思います。アルバムを買ってみて思ったのは、楽曲的にも水準が高く、クオリティも一定していること。ただし少し気になるのは、日本語の歌詞の部分が、英語の歌詞の部分とちょっとかっこ良さという点で落差を感じることでした。なにかすごくもったいない感じです。
その日本語の歌詞という点で、注目したいのが MINMI です。
MINMI
あくまでも個人的な意見なんですが、デビュー曲である "The Perfect Vision" は歴史的傑作ではないかと思っています。傑作だと思う理由は、日本語の歌詞がサウンドとしての力を持ってメロディに乗っているから。こんな曲は他に見当たらないと思います。
洋楽と邦楽の最も大きな違いは、当たり前ですが言葉の違いです。五つの母音で構成される日本語で作られる歌は、たいていが音符ひとつにひとつの母音。極めて単純なメロディになってしまいます。極端なケースとして童謡をイメージしてもらえばいいでしょうか。特に "ロンドン橋落ちた" の日本語と英語の歌の違い、を思いだしてもらえば分かりやすいと思います。そういう音数の違いから、日本語はかっこよく響かないのだと思います。
ですからこの日本語の歌をかっこよく聞かせる為に、先人が多くの試行錯誤をしてきました。具体的な例を挙げてみましょう。
桑田佳祐 日本語をわざと英語的な発音をすることでメロディに乗せて洋楽っぽくきかせる。 佐野元春 日本語を高速でフレーズに詰め込むことで英語的な譜割りに近いリズムを生み出す。 宇多田ヒカル
m-flo日本語の音節を無視した譜割りで、メロディを崩さないで歌詞を乗せる。日本語として聞くと、慣れるまでちょっと違和感あり。
(同じく帰国子女系なのはおそらく偶然ではなく必然。宇多田ヒカルは初期だけかも?)さて、ここで MINMI です。
まず彼女の特徴は “韻を踏んでいる” 事。洋楽では当たり前の韻を踏むことは、日本語では簡単ではありません。ラップにおいて、やっと韻を踏むということが実現できたと言っていいでしょう。
ところが、MINMI はラップではなく (とはいえ、ややラップ的な単純なメロディではありますが)、韻を踏んでいるのです。これはとても凄いことで、彼女の作詞作曲の能力の高さに他なりません。その結果、"The Perfect Vision" のサビにおける、
GET UP & DANCE 見渡してみて 音と共に もっとHOTに 目覚めてゆき 向きも 不向きも 抜きで 夢中で 踊った あなたへ ANOTHER DAY の部分は、“詞” が言葉のリズムを作り出し、それがメロディに乗っているのです。
さすがにアルバム中の他の曲全てが "The Perfect Vision" と同じようなクオリティにはなっていませんが、やはり韻を踏む歌詞は所々に出てきています。
彼女は今後要注目です。"The Perfect Vision" のような楽曲をこれからも生み出すのかどうか。
Sakura
試聴コーナーで聴いて気に入って買ってきました。買ったのはベストアルバムなのでちょっと割引して考えないといけないかとは思いますが、楽曲のクオリティはなかなか良いと思いました。普通のポップス系から関西弁のラップまで、内容は幅広いです。
印象としては、彼女は 露崎春女 などと同じポジションなのではないでしょうか。つまり、根っこはシンガーソングライターであり、その時代時代の流行のサウンドを取り入れているのではないかと。
アーティストには 2種類あって、あるジャンルをやりたいというアーティストと自己表現をしたいというアーティストがいるのではないかと思います。前者は流行りが変わってもそのジャンルをやり続けますが、後者は流行りのサウンドに乗ってサウンドを変えていくのを厭いませんから、曲調が変化していきます。
もちろん全て白黒つくわけではなくて程度問題の話ですが。そしてもちろんそれらに優劣はありません。
(後編へ続く)