歓迎!金持ちオーナー 〜ヴィッセル神戸〜 (後編)

2003/12/28

さて、前編ではヴィッセル神戸が売られた話だけで終わりましたが、これからは買い取った側の話。

報道にある通りで神戸を買い取るのは、神戸市出身でインターネットモール大手 「
楽天」 の三木谷浩史会長が設立した経営コンサルティング会社のクリムゾングループ。楽天といえば、IT バブルがはじけた後に残った勝ち組企業。三木谷氏は数年前に長者番付に名前が現れ、今年は米経済誌フォーチュンで米国以外の40歳未満の富豪で20位に発表された人です。推定資産総額は5億7600万ドル(約620億円) だとか。
注目すべき点は今回のこの買収が、三木谷氏が神戸出身ということで成立したことです。関係者筋の話では、あくまでも地元支援としてクラブを買い取る、とのこと。三木谷氏が神戸出身でなければ、この買収は有り得なかったのです。

前回の繰り返しになりますがJリーグのクラブ経営が上手くいっていないところがあるのは確かです。けれども今回の神戸の身売りは、Jリーグが地域密着というコンセプトであるからこそ、買い取るオーナーが現れたのです。しかも、クラブ名、ホームタウンの移動なしにチーム買収が成立するのも、Jリーグの地域密着のコンセプトならではの身売りです。

今回の三木谷氏による神戸の買収は、その会社であるクリムゾングループにはたいしたメリットはありません。 「
楽天」 がここ 2年間の東京ヴェルディの胸スポンサーであったのは確かですが、地域によらない商売をしている 「楽天」 にとっては東京ヴェルディより知名度、人気、実力で劣るヴィッセル神戸へ、スポンサード対象を変更することによるデメリットしかありません。ましてやクラブ自体を買い取ったからといって、一部のマニアックなサッカーファンが知るだけですから、特に企業イメージを高める効果も少ないでしょう。

過去のプロ野球においても、野球好きのオーナーが球団を買収したということがあったでしょう。しかし、それらは必ず会社の宣伝効果が計算できるものだったはず。今回のように、一オーナーの希望で、企業自体にはあまりメリットがないプロスポーツクラブの買収というのは史上初めての出来事ではないでしょうか?


今回の主題はこのような、クラブの保持形態についてです。
Jリーグには様々な形態のクラブが存在します。ほとんどのクラブは大きな親会社が中心になって支えているクラブです。一方で、
新潟などのように多数の小さな会社に支えれているクラブもあります。大分のように自治体が中心になって支えているクラブもあります。山形はちょっと珍しい公益法人という形態です。(上手くいっているとはいえませんが) 札幌のようにサポーターが株式を保有しているケースもあります。 そして今回、金持ちオーナー個人の意思がクラブを支えるケース、が生まれました。

これらから僕が思い出すのは “生態系の単純化” という言葉です。
以前、『
ブラックバス問題』 を書いた時に、いろいろ環境問題について調べました。ブラックバスが問題なのは、その湖の生態系が単純化されてしまうこと。環境は複雑であるからこそ強さがあります。ある種が絶滅しても別の種が生き残ります。しかし、単純な環境はひとつのアクシデントで生態系が絶滅してしまう可能性があるのです。

それと同じではないかと思うのです。企業が中心で支えるクラブ、自治体が中心で支えるクラブ、市民が中心で支えるクラブ、金持ち個人オーナーが中心で支えるクラブ、いろんな形態が存在する方が、全体としては強固なグループができるのではないでしょうか?
(Jリーグがチームから企業名を外して、単一企業のスポンサードではなく、多数の企業に支えられるようなシステムにしているのも同じ理由であるのは言うまでもありあせん。)
ある業種が不況でも、別の業種は大丈夫だとか、ある個人オーナーは財政的に厳しくなったが、別の個人オーナーはクラブに資金をつぎ込むことができる、などなど。

そういうわけで、今回の
神戸の買収は、Jリーグのクラブ形態の多様化の一種であると考えます。欧州ではこういう個人オーナーが表に出てくる話は良く聞きますね。チェルシーのオーナーであるアブラモヴィッチ氏や、ペルージャのガウチ会長など。できるならば、Jリーグでももっとたくさん、こういった金持ちオーナーがクラブを持つという形が実現して欲しいと思います。


関連リンク

人間図書館 三木谷浩史

元気企業インタビュー 三木谷浩史 氏