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「ブロンコス、オレンジアタッカーズ、フリューゲルス」
「どうして企業スポーツでは駄目なのか」
「福岡ダイエー・ホークスの話」
J リーグが企業名を外したほんとうの理由
2003/02/16
1993年、Jリーグが開幕。
それまでの日本のサッカーリーグ、すなわち JSL は現在の他の競技と同様に企業チームによるリーグでした。しかし、Jリーグの開幕時にチーム名に企業名を入れないことが決まりました。この、チーム名に企業名を入れない代わりとして地域名をつけるわけですから、これは “地域密着” というJリーグのセールスポイントの看板でもありました。
残念だったのは、これによってまるで企業を追い出しているようなイメージができてしまったことでしょう。しかし、それは全くの誤解です。Jリーグが企業名を外したのは、むしろ、ひとつの企業の持ち物にしない為であり、それは同時に、より多くの企業に支えてもらう為とも言えるのです。
けれど、(僕を含めて) 多くの人がそのことをはっきりと認識したのは1998年の事件が起きてからだったかもしれません。1998年の事件とは、横浜フリューゲルスと横浜マリノスの合併です。
1998年10月、サポーターはもちろん、選手やスタッフ、当時ユニフォームに広告を出していたスポンサー企業までもがまったく知らないうちに、この横浜フリューゲルスと横浜マリノスの合併が決まりました。
横浜フリューゲルスはJリーグの設立時の10チームのうちのひとつ、佐藤工業と全日空の二社によって支えられているクラブでした。時代はバブルがはじけてちょうど不況に入った頃。ゼネコン大手の佐藤工業が業績不振から撤退を決定します。残った全日空が、独断でチーム単独での存続を無理と判断して横浜マリノスへの合併を打診。マリノスの方は当時の経営不振の日産に支えられていたチームですから、この話に乗り、(実際チームを運営していた全日空スポーツ抜きで) ふたつの会社のトップ判断で、この合併が決定しました。
当時、この事件はかなりの話題となりましたのでご存知の方も多いでしょう。これが事件として語られるのは、単に合併したからではありません。地域密着したクラブチームであるJリーグのチームが、企業のトップの独断でチームの行く末を決められてしまった事が問題だったのです。
仮に、横浜フリューゲルスを支える企業がもっとたくさんの企業だったらどうだったでしょうか? 合併に反対する企業もあったかもしれません。少なくとも合併までに何らかの議論が行われたはずで、あのケースのように密室で決定していきなりの発表などということはなかったはずです。
フリューゲルスの事件は、南海ホークスが売却され福岡ダイエー・ホークスになったこと、阪急ブレーブスが売却されオリックス・ブルーウェーブになったことと、全く同じ構造でした。つまり、企業名を外したというのは名ばかりで、中身は企業チームのままだったのです。名前だけ外して、実質は変わっていなかったのです。
このようなことが無い為に、クラブが地域というベースの上の立ち、地元のサポーターと多くの企業で支えられる事、それがJリーグの理想です。
正確に言うと、それが目的なのだから、企業名を外すこと自体は絶対に必要ということはありません。地元に密着した企業で、どんなことがあろうとチームを勝手に売却したり、ホームタウンを移転しないような企業なら、企業名がついていたって構わないのです。オランダの名門チーム、PSV は Philips という企業名が入ったチームであることは有名です。Philps が PSV のホームを移転したり、チームを消滅させたりすることは絶対ありません。クラブチームとはそういうものではないことを、彼らはわかっているからです。
しかし、日本ではチームは企業の持ち物、それが当たり前でした。横浜フリューゲルスの事件がその象徴です。だからこそJリーグは、“企業名を外す” ということで、日本での新しいスポーツの在り方を提案したのです。“企業名を外す” とは、新しいスポーツの在り方の “シンボル” だったのです。
間違ってはいけません。企業名を外す事が目的ではないのです。
ところで、最近流行っているプロ野球の企業名外しは、僕はあまり意味があるようには思いません。多くの企業に支えてもらう為で企業名を外すというのならわかるのですが、名前を外すだけなら、それは横浜フリューゲルスと同じです。 企業側からみると、企業名を入れる事で広告費として扱ってもらえるという税制的なメリットがあります。それを失ってまで、そうする価値があるのでしょうか?
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