マンガに関する雑記 (2003年春編)

03/03/23

マンガに関する雑記。
マンガにはそんなに詳しくはないので、語るってほどではありません。マンガに関わる雑記というところで。

ワンピース
アニメ化された人気マンガ。少年ジャンプ掲載。
このマンガを語る前に、一般的な映画や本の話をしましょう。「Movie/Book」 で分かると思いますが、僕は年間かなりの本数の映画を (CATV でですが) 観ています。昨年あたりは感動できるという評判の本も何冊か読んでみました。しかし、そうそう簡単には感動で涙するような映画や本には当たりません。その理由はやはり近頃の映画や本の物語が “凝りすぎ” であることが原因ではないでしょうか? 単純なお話は古典と言われるもので出尽くしてしまっています。新しい物を作るならば、凝ってしまうしかない状況なのかもしれません。きっと過去の感動映画や本を参考にすれば、泣ける映画や本は作れるのですが、それでは焼き直しと批判されてしまい評価されない、とすると、どうしても凝った内容になってしまい、泣かせるよりは考えさせる映画になるのではないでしょうか。
さて、そんな余計なことを考えなくていいのが子供向けの世界です。あまり難しいことを考えさせるようなお話は必要ありません。むしろ子供が楽しむには邪魔な部分です。古典的な物語と同じようなお話でも十分です。例えば少年マンガにありがちな感動の物語、 (実際 「ワンピース」 にあったのですが) 『友達の為に、自分が罪を被って去っていく』 なんてお話は、実は 『泣いた赤鬼』 のストーリーです。我々がこのようなシンプルで古典的なお話に涙するのはある意味当たり前。だからこそ残ってきた古典なのですから。それを焼き直せば、やっぱりそりゃ泣ける物語になります。
で、言いたいのは、泣けるようなお話を体験したいなら、映画や書籍を探すよりマンガを探したらそこに見つかるかもしれないということなのです。泣ける映画とか観たいなぁ、とか思うことってあるじゃないですか。そんな時、映画を探すよりマンガが十分その役割を果たすかもしれません。実際この 「ワンピース」 にはそういう部分があります。コテコテの古典的な泣かせる手法ですが、それでいいじゃないですか。これらを 「泣かされてる」 と深読みするような人は、どんな映画だってダメでしょう。
(ただし、単行本全部読んだわけじゃないんで、どのくらい泣けるかとかちょっと不確実。少なくとも泣けるお話ありました。アニメでも泣けたなぁ。)

Naruto -ナルトー
アニメ化された人気の忍者マンガです。少年ジャンプ掲載。主人公の名前が 「ウズマキナルト」 ですから、最初はおふざけ漫画かと思っていましたが、最近になって実は面白いということに気がつきました。
忍者物というと、「仮面の忍者赤影」、「伊賀の影丸」、「サスケ」、「カムイ伝」 など古典がたくさんあるわけで、素材的には新鮮味が欠けるであろうことは想像できます。その中での工夫として 「Naruto」 はファッションが現代風であったりすることと、もう一点特筆すべきことがあります。まず、この作品中では忍者の技術が、忍術、幻術、体術と明確に整理されています。そして忍術や幻術の発動時の約束事 「印を結ぶ」 というのを明確に示したのは実は素晴らしい発明 (?) かもしれません。これによって、印を結ぶより先に攻撃すれば忍術や幻術は発動できなくなり体術がそれらを上回るということになります。しかし、より早く印を結べば体術を上回ります。これらは K1 におけるパンチとキック、バリトゥード系格闘技の立ち技と寝技の関係に似ていて、忍者同士の戦闘に戦術的な要素を組み込むことができます。これはなかなか面白い試みだと思いました。
少年マンガにおける “強さのインフレ” といえば、ピンとくるでしょうか? 特に少年ジャンプ掲載マンガの特徴ともいえるのですが、主人公が成長して強くなる、もっと強い敵が出てくる、主人公ももっと強くなる……。物語が続く限り、これが続くのが “強さのインフレ” です。代表例として 「ドラゴンボール」 を思い出してもらえればわかるでしょうか。こうなってしまうのは戦術が欠けているからです。思いっきり殴る。光線を放つ。こういった単純な戦闘は、“より強く” という方向でしか物語が進みません。忍者物も下手をするとこの “強さのインフレ” (より強い忍術) へ入り込むしかないかもしれないのですが、「Naruto」 では上の件他、様々な戦術を取り入れることである程度抑止できるでしょう。
ところでこの「Naruto」、個人的なイメージでいうと、絵や雰囲気は藤原カムイの 「雷火」 に似ていると思いました。そういえば主人公の生い立ちの背景も似てるな。影響うけてるかもしれませんね。

ORANGE
プロサッカー2部リーグのチームを扱ったマンガ。少年チャンピオン掲載。愛媛県の南予オレンジというチームの物語。(南予市というのは実在しません。)
連載が始まった当時はあまりリアリティを感じず 「面白くなさそうなサッカーマンガが始まったな」 と思ってました。絵的にもそんなに好きではありません。ところが、だんだん僕を惹き付ける内容になっていったのです。
このマンガで扱われるのは、サッカーの試合だけではありません。サッカークラブの地域密着、経営の難しさ、一部リーグ昇格への厳しさ、アンチサッカーの人々の冷たい反応、選手の生活 (解雇への危機感)、選手のクラブへの思いと野心 (良いクラブへの移籍)、代表とクラブのどちらを優先するかという葛藤、マスコミとの対立、サポーターの暴走、などなど。ここまで描けば十分です。ここまでディテールを積み重ねれば、それはリアリティと言えるものです。そして、特に個人的に最も印象深いのが、徐々に観客が増えていき、ついにはスタジアムを満員にしてしまったその画。個人的にジュビロ磐田がJリーグへ昇格してきた頃を、また、仙台や新潟の姿を重ね、それらのシーンを見るたびにその背景 (そこでクラブを想う人々) を想像してしまい、目頭が熱くなってしまいます。
サッカー好き、スポーツ文化や、地域密着の文化に興味がある人に、ぜひ読んでもらいたいマンガです。

(追記 2003/04/10)
その後、こんなシーンが描かれました。昇格がかかる絶対負けられない大一番の試合、満員のホームスタジアム。味方チームの FW が DF に倒されたがホイッスルは鳴らず。ここで、サポーターからの大ブーイングを受ける主審が描かれます。そして、その後のプレーではペナルティエリア内でのファールにすかさず笛を鳴らす主審。これ、ストーリー上に関係ないように見えますが、著者の頭の中には、間違いなくサポーターが主審にプレッシャーをかけるシーンがあったはず。
おそらくスポーツマンガ史上で初めて、単純な応援ではない方法で、具体的にサポーターがチームを勝利へ導く可能性があることを描いた場面ではないかと思います。

ヒカルの碁
説明の必要もない人気マンガ。少年ジャンプ掲載。「マンガと社会」 でも取り上げてます。
実は Web 上の日記を書いている知人に先に書かれてしまったのですが、同じ事を考えていました。これ、スラムダンクに似ています。まあ、少年マンガのストーリーとして、素人主人公がだんだん強くなっていく、という点で同じというのはある意味当たり前なのかもしれません。しかし、似ているのはそれだけではないと思います。それは、リアリティの問題です。
「スラムダンク」 を見て強く感じるのは、著者がよーくバスケットを知っているということです。バスケ経験者にしかわからないであろう、ある特殊なステップや、それに対する審判の微妙な反応が描かれていたりします。これ、バスケ未経験者はおそらく気付いてないし、気付かなくとも物語の面白さは変わりません。けれどもその事例から、このお話は随所にバスケ経験者ならではのディテールが積み重ねて作られているであろうことが想像できます。
よく聞く話ですが、お金をかけた映画では映らない部分のセットまでちゃんと作ってあるといいます。もちろん、たまたまその場面は映らなかったわけですが、おそらく同じ努力が映る部分でも行われているわけで、そういったディテールの積み重ねが物語としてのリアリティにつながっていくと思うのです。芸術作品なんかもそうですが、良い作品には良いコンセプトがあって、手抜きのないディテールで組み立てられています。そうやって作られたからこそ、よい作品になっていると思うのです。
おそらく、バスケットをやったことのない人が、スラムダンクを全く同じ物語で描いたとしたら、それなりには面白かったでしょうけど、現在の評価には絶対至らないと思うのです。
で、直感的に 「ヒカルの碁」 もそれ同じではないかと想像しています。実際、監修としてプロの棋士がついているわけですが、僕は 「ヒカルの碁」 に 「スラムダンク」 と同じ匂いを感じます。僕は囲碁は基本ルールくらいしか知りませんが、あれは、囲碁の部分がかなり真面目に作ってあるだろう、と。それがスムーズな物語の展開と一致して、面白い作品として仕上がっているのではないかと想像しています。マンガだからといって手を抜かずにディテールを積みかねて作ること、やはりそれが傑作と言われる作品の秘密なのでしょう。

(追記 2004/01/19)
やはり 「ヒカルの碁」 は本物の棋譜が使われていたようです。ストーリーに沿って、レベル的、内容的に相応しい棋譜が選ばれているとのことです。

ヒカルの棋譜

ヒカルの碁 かってヨミ。