プロスポーツと自由経済原理
2002/11/11
(これから書くことは、基本的には今まで何度か書いた内容の焼き直しですが、ちょっと別の角度から、ということで書いてみます。)
プロスポーツは例外なく興行です。一面として文化的な要素を含んだりすることもありますから、全てを興行だと話を片付けるべきではないと思いますが、ベースとなるのはやはり興行です。そこには必ず経済原理が働きます。一番簡単な例を挙げるとこんな感じ。能力の高い選手の方が高い年俸をもらう。スタジアムでは良い席の方が値段が高い、など。
さて、そういった経済原理の結果、たいていの場合は、お金をかけていい選手が揃っているチームは強く、お金のないチームは弱いわけです。とはいいながらも、お金がなくて弱いはずのチームが強いチームを倒したりするところが、プロスポーツの面白さとも言えます。
さて、自由経済原理の中で行われているプロスポーツですから、そのシステムもなるべく自由競争の中に置くべきでしょう。ところが、ほんとうは自由経済の原理が働いていないところに中途半端に自由競争システムを導入すると、どうも不具合になるようです。日本のプロスポーツにおいてそれに相当するケースのが、ふたつほど思いつきます。
ひとつは、プロ野球におけるドラフト制度における逆指名制度。
逆指名制度は、全くの自由競争システムと言えるでしょう。本来ならば、このシステムは全く平等なものです。ところが、ベースとなる土台があまりに違いすぎる事で、結果的にプロ野球にとって有益なものになっていません。具体的にはチーム間の格差があまりに不平等だからです。
もちろん自由競争なのだから、まるっきりの同条件ではないのは当たり前です。資金力のあるチームが高い年俸を提示して、良い選手を獲っていくことは仕方ないでしょう。しかし、現在の状況はチームのベースとなる部分があまりに違いすぎるのです。年俸をとってみても、平成13年のデータでは、読売の試合出場選手の平均年俸が 1億1千500万円に対して、最下位オリックスは 2400万円。年俸だけではありません。CM 出演、TV ゲスト出演、知名度からくる引退後の仕事まで考えてみると、同程度の活躍をするなら、どのチームに入るかで莫大な差が出てくることは想像できます。(「日本シリーズと松井秀喜の MLB 挑戦」 参照のこと。)
せめて、プロ野球がJリーグのように下部リーグを持ち、経済的に弱いチームが実力を失った場合は降格し、代わりにより資金力を持つチームが新規参入してくるなら、ほんとうの自由競争なんですが……。(現在のプロ野球加盟には30億円の支払いが必要。)
このことのタチが悪いのは、一見自由経済のように見えてることで、それが正当化の理由とされることでしょう。本当は違うのに……。
もうひとつは、サッカーにおける JFL の状態。
J1、J2 というプロリーグの下にあるのが、JFL。JFL は実業団チームとクラブチームの混在です。過去、この JFL からいくつものチームが J2 に昇格していきました。Jリーグへ上がる条件は、スタジアムや下部組織の設置などに加えて、JFL で 2位以内でした。これ、極めて自然な自由競争に基づくルールのようにみえます。ところがちょっと違うのです。
クラブチームはその通り自由経済の中にいます。チームが強ければお客さんも集まり、スポンサーがついてお金を出してくれます。弱ければスポンサーが離れていくでしょう。その結果、強いチームは昇格していくし、弱ければ降格していきます。ほんとに自然な自由競争システムです。しかし、企業チームは違います。チームが強い弱いはあまり関係なく、企業が必要だと思えば資金が投入され、不要だと思えば廃部になります。
その結果、JFL の現状はこうです。数年前、強くて資金力があったクラブチームは、企業チームを乗り越えてJリーグへ昇格。しかし、昇格していったチームほど余裕のないチームだけが残りました。クラブチームは景気が悪くなったりするとスポンサーが少なくなって弱くなります。一方、企業チームは基本的には選手を社員として確保しているわけで、実力の変動はあまりありません。乗り越えていかなければなければならないチームはどんどん体力の弱いチームになっているのに、壁の高さは変わりません。もはや、ちょっとやそっとの選手の頑張りでは越えられない壁になってしまったのです。(「JFL 〜ピラミットの中の壁〜」 参照のこと。)
これもやはり、一見自由経済原理の競争のようにみえるのが、タチの悪いところです。
もちろん、JFL に関しては、それを解決すれば全てがうまくって、クラブチームがどんどんJリーグに参加してくるわけではありませんが。まあ少なくとも、問題であることは間違いないと言えるでしょう。
ちなみに、JFL のアマチュアとプロの話について。誤解されている方も多いと思うので補足していおきます。ここでいうプロとアマチュアはチームの話。企業チームはアマチュア。クラブチームはプロ。所属する選手がどうであるかは関係ありません。つまり、企業チームにプロ契約選手がいるし、クラブチームには別の仕事を持ったままでプレーする人がいるということです。
上の話にあわせて説明すると、アマチュアのチームというのは実はとても不思議な存在であって、自由経済原理から外れているものなわけです。プロのクラブ、すなわち収支を完全に観客動員とスポンサーからの収入にしていることこそ、完全な自由経済の中にいるということなのです。(「どうして企業スポーツでは駄目なのか」 参照のこと。)
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