観客数水増しの話

2002/04/06

観客動員数の水増し。最近ではこの話を聞く機会も増えてきました。以前はタブー、あるいは見て見ぬ振りをするのが大人のマナーだったのかもしれません。
さて、水増しというと野球の話をすると思われるでしょうが、実はサッカーの話をしたいのです。ただし、折角の機会なので観客動員水増しの話をまとめてからいくことにしましょう。

最初に確認しておきたいのですが、そもそも観客数の水増し発表は珍しい話でもなんでもありません。そういうデータはネットで検索かければ簡単に出てきます。検索するキーワードは “主催者発表” と “警察発表”。
今調べただけでこんな風に出てきました。

 

イベント 主催者発表 警察発表
小泉首相の演説 1万2000人 9000人
沖縄のある政治集会 2万2000人 6000人
フランスの労働組合のデモ 3万人 1万3000人
香港での中国の民主化運動の集会 4万5000人 1万6000人

 

これら以外でも、お祭りや野外ライブなんかでの主催者発表が大袈裟なのはみなさんもよくご存知でしょう。同じようなものとして “大本営発表” がありますね。とにかくこういったイベントに関して、主催者は大きい成果を発表したがるのは当たり前の話。正直なところ、これらの嘘は多少見苦しいとは思いますが、まあそのデータを使って人を騙したりすることがなければ、特に問題というほどのことでもないでしょう。
ただし問題なのは、その嘘のデータを使ってなにかを主張するという場合。それから、水増しの数値を正しいデータとして他のデータと比較したり、時間的な推移を調べたりする場合。これらはデータ捏造です。
そして特に有料の入場者数の場合については、入場料金による収入がまるっきりわからないということですから、その団体の収支を隠すという意図を持っているのかもしれません。


さて、ここで出してみたいのはプロ野球と
Jリーグの話。
まずはプロ野球の話。もはやプロ野球の観客水増しは有名になってきてますから、ネットで探してもいろいろなデータが出てきます。
データ保全の意味もあるので、このページにデータを残しておきましょう。これは、
日本プロ野球史探訪倶楽部球場別観客入場可能数からの引用です。(データの検証をしていませんが、信用できるサイトだと思います。)

 

日本シリーズの最大入場者数
球場名 公称最多入場者数 最多入場者数  
西武ドーム 35,879人 31,599人 H10.第5戦
東京ドーム 55,000人 46,342人 H6.第2戦
明治神宮球場 45,000人 38,733人 S37.第3戦
横浜スタジアム 30,000人 29,289人 S37.第3戦
ナゴヤドーム 40,500人 38,011人 H11.第5戦
大阪ドーム 48,000人 32,324人 H13.第1戦
甲子園球場 55,000人 51,554人 H13.第1戦
(写し間違いを訂正)
S60 第4戦
福岡ドーム 48,000人 36,787人 H12.第5戦

 

プロ野球の普段の試合は球団が観客数を発表しています。ところが、日本シリーズやオールスターゲームは、日本野球機構が主催なので、正確な観客動員を発表します。(日本野球機構主催試合結果) 超満員になる日本シリーズですから、その球場の本当の最大入場者数がわかるのです。
東京ドームといえば 5,5000人ですが、実は上の数字。実際、消防法で届けられている数字が 4万8000人(スタッフ含めて建物に入れていい人数) だそうです。

これらの水増しにについては、反論する人もいるようですね。しかし、

普段の試合は立ち見が一杯いる 日本シリーズでも同じでは?
普段の試合は観客の出入りがあるから 1万人が出入りするの?
年間シートを買って来てないお客さんがいるから 観客数の発表ではないの?
定員以上のチケットを売るのは問題ないのか?

あまり説得力ある反論はなさそうです。
この水増し発表は上記に名前が出ないチームも含め、全チームで行われています。もちろん満員でない時も水増し発表が行われていますし、最近観客動員が低迷したあるチームでは本当に一桁違う数字の発表が行われているようです。
まあ確かに事実を知ってしまうと、あまり気分のいいものではありませんが、最初に述べたようにこれらは風習とも言えるもので、ある程度は仕方なかったかな、と思います。

ところが
Jリーグが出来た時、彼らは水増しでない数値を発表することにしたのです。
これは僕の推測なのですが、おそらくは収支をガラス張りにして内外に発表する目的があったのではないかと思います。プロ野球という親会社の広告として行われる種目は、赤字分は親会社が補填、黒字分は自分達の懐に収めるわけですから、むしろ不透明な方が都合がいいこともあるでしょう。一方のJリーグは、特定企業に依存しない (あくまで単独の企業に依存しないという話であり、全く企業に依存しないという事ではない) 地域密着クラブを目指しましたから、収支を発表して、しっかりとした経営が行われているかを明らかにする必要がありました。
プロ野球側から見ると、余計な事をやってくれたな、というところでしょうか。

さて、原則として
Jリーグは入場者数を正確に発表します。もちろん多少の数え間違いなどはあるでしょう。数える中には招待券なども含まれていますから、人気や収益と完全に一致した数字でもありません。しかし、基本的には水増しの無い数字ですから、昨年と今年、来年と比較ができます。チーム同士の比較もできます。

ところが!

これから本題です。
Jリーグのチームが水増し発表をした疑惑が出たのです。
水戸ホーリホックの観客数の発表がおかしい、そういう噂がネットを飛び交いました。その後、一部週刊誌でも取り上げられました。
あまりスポーツ観戦に行かれない方は、観客数なんて一般の人にわかるの?と疑問に思うかもしれませんが、今では毎週サッカー観戦に行く人も多い時代。
Jリーグでは試合中に当日の観客数が発表になりますので、みんな長年の勘で大体の数字は分かってきています。僕なども磐田スタジアムならだいたいわかります。

本当に
水戸が水増し発表をしたかの証拠はありません。しかし、多くの人に意見では、極めてグレーな状況。
この疑惑について、僕は
Jリーグ水戸へ厳格な調査を希望します。Jリーグへ意見をメールしようかと思いましたが、オフィシャルサイト見てもメールアドレスがありませんでした。ということで、代わりにここで厳格な調査を希望する理由を述べます。

まず、
Jリーグは正しい数字を発表するという事への疑惑を生んだ事。実際、この疑惑を取り上げた雑誌では 「他のチームもしているかもしれない」 と述べています。水戸だけで済む問題ではないのです。Jリーグ全体の信頼を損なうような行為です。

次に、(こちらがより大きな理由なのですが、) 昨年、
Jリーグは、成績および観客動員に苦しんでいたヴァンフォーレ甲府に対し、チーム存続の条件を突きつけました。(1) 平均観客動員数 3000人以上、(2) クラブサポーター数 5000人以上、(3) 広告収入等 5000万円程度、の三つです。甲府はこの条件をクリアして存続が決定したのですが、この中に観客動員という条件がありました。もし、観客動員の水増しを認めるならば、それは甲府に対してのJリーグの裏切りではないでしょうか? 甲府の関係者、サポーターはこの条件をクリアする為に観客動員の努力をしたはず。それが水増しで済む話だったとでも言うのでしょうか?

個人的にはこれは絶対に許せない問題です。
もし、ほんとに事故的な間違いではなく、意図的な水増しであったなら、勝ち点剥奪や、(欧州の罰則でよく用いられる) 観客なし試合などの、厳しい懲罰を望みます。


(追記 2002/07/23)

上記の記述に対し、事実誤認があるとのご指摘をいただきました。以下の 2点です。

・甲府の存続条件は Jリーグではなく、チーム運営団体、スポンサー企業、地域行政の三者協議で決まった。
・存続の条件は、観客数、サポーター数、広告収入、単年度黒字の継続 の4つ。

マスコミの報道などで 「条件を突きつけた」 といった報道のされ方だったので、Jリーグ側からの条件だと勘違いをしていました。訂正して、お詫びいたします。

なお、このコラムを書いた以後に、水戸の観客動員に関して 「おかしい」 という話は全く聞かなくなりました。当時の 1〜2 試合で、本当に水増しが行われていたのかどうかは不明です。何かの間違いが発生していたのか、サポーターが騒いだことが結果として自浄作用として働いたのか?
この話がずっと継続するようなら、Jリーグが調査するなり、水増しがあると報道したマスコミに対して抗議するなり、なんらかの動きがあるのを期待したのですが……。

いずれにせよ、Jリーグは公正であることが大事なリーグ。観客数の水増しは絶対やってはいけないということは変わりません。

川淵元Jリーグチェアマンの興味深いインタビューを見つけました。

川淵チェアマン黄金の21世紀を確信

『「正確な数字が出るのは日本シリーズだけ。そんなプロ野球の入場者数とJの数字をそのまま比較されるのはたまらない」 と語気を強めたが、「僕もJ発足前は“実数の2割増しまではOK”、とまで考えたりもしたけどね」 とかつての苦悩を冗談交じりで明かしていた。』

(これは逆にいうと、野球などの水増しが 2割以上が当たり前であるということなんでしょうね。)

僕も元チェアマンの意見と同じで、野球が水増ししようがそんなのは勝手だが、その数字を使ってJリーグと観客動員を比較することには、アンフェアだ、と思います。