J1チーム数についての検討
2002/05/05
JリーグのトップリーグであるJ1のチーム数について考えてみます。
間違えないで欲しいのは Jリーグのチーム数の話ではありません。Jリーグのチーム数はいくら多くても構いません。「Jリーグのチーム数が多すぎる」 という意見があるとしたら、それはJリーグのコンセプトを知らない、ということなので相手にする必要はありません。
(「地域密着」、「サッカーファンよ、理論武装せよ」、「札幌と、仙台と、 〜 Jリーグの成功 〜」 などを参照のこと。)
1993年に10チームで始まったJリーグ。チーム数を増やしてJ1、J2に分離し、現在トップチームであるJ1のチーム数は16です。この16という数字は、もちろんJリーグ側としても考えた結果にたどり着いた数字だと思われます。
しかし、一部のサッカーファンにはJ1のチーム数を減らした方が良いのではないか、という声があります。その辺りの議論を検証してみましょう。
まず、削減派の主張をまとめてみましょう。
第一に、チーム数を減らす事で、トップリーグのレベル向上が期待できる。
第二に、第一の結果に伴って、Jトップリーグの人気が高まるであろう。人気が高まれば観客動員や視聴率に好結果を与えるだろう。選手年俸も上がる可能性がある。
こういったところでしょうか。
確かに、第一の理由は説得力があります。簡単に言えば少数精鋭主義です。J1下位チームをいくつか削ることで実力チームだけが残りますから、それらの試合のレベルが高くなるのは間違いないでしょう。しかし、果たして第一の結果に伴って第二の主張は実現するのでしょうか?
それを検討する前に、もっと大事なことを指摘しておかなければなりません。そもそもチーム数はどうやって決まったのか、ということです。
リーグのチーム数を考える時に忘れてならないのは、試合数との関係なのです。ここを見落としている人はかなり多いようです。リーグが16チームなら Home&Away の 2回戦方式で年間30試合、10チームなら、4回戦方式で36試合になるでしょう。このようにリーグのチーム数で試合数は必然的に決まるのです。
試合数はチームの観客入場料収入になりますから多いほうが良いです。しかし、日本代表のスケジュールや、選手の疲労なども考慮すると、むやみに多くするわけにもいきません。カップ戦を入れることで多少の調整はできるとしても、リーグ戦は年間30-40試合というところが望ましいと思われます。とするとチーム数が12や14の場合は都合が悪いです。3回戦方式 (ある対戦カードが Home2試合、Away1試合、またはその逆) を採用しなければなりません。
ですから、世界のリーグの多くは、16-20チームで運営されています。これらの数字は偶然ではなく必然の結果なのです。
さて、話を元に戻します。
チーム数を減らすと、Jリーグの人気は高まるか考えてみましょう。個人的には 3回戦方式という特殊な方式を採用するのは考えられないと思います。その場合、上記のように10チームということになるでしょう。しかも 4回戦制を採用するしかありません。
個人的にはこの時点で嫌になってしまいます。同じ対戦は 「もうお腹いっぱい」 という感じ。Jリーグは、リーグ戦以外でも、カップ戦、天皇杯、チャンピオンシップなどがあります。下手をすると同じ相手に年間 8試合くらいする可能性が出てきます。
しかし、そんなこと以上に問題だと思われるのが、Jリーグ全体の営業的な点です。
仮にJ1チームに人気が出たとします。そうなればそうなるほど、(一部の人気チームを除き) J2チームのあまり人気が高くないチームのスポンサー獲得条件が厳しくなる事が予想されます。J2にいる限りJ1トップチームとの対戦がありません。露出は大幅に下がるわけですから、スポンサー料金は大幅に下がるでしょう。
観客動員に関しても同じです。J1トップチームとの対戦なら観に行こうという人も多いはず。現状に比べて、(繰り返しますが、一部の人気チームを除き) これは大打撃になると予想できます。
仮に削減派の主張が正しいとしても、それはJ2に落ちたチームの利益をJ1にかき集めたに過ぎないのです。Jリーグ全体での経済的利益はむしろ下がるのではないかと考えられます。
付け加えると、チーム数が減ると J1に人気が出る、という主張も怪しいと思います。昨年の市原は内容的にもサッカーファンに評価され、結果も年間 3位の成績でありながら、昨年も今年も観客動員では16チーム中下位を低迷しています。そして、失礼ながら内容や実力でトップチームに劣り、そしてJ2に落ちても、浦和や札幌といったチームは人気がありトップクラスの観客動員を誇ります。試合のレベルが高いことと観客動員は無関係とまでは言えませんが、最も大きな要因ではないように思います。
そもそも、本当に実力だけで、J1、J2 と分けることができるのでしょうか?
上にあげた市原の場合、昨年年間 3位ですが一昨年は14位でギリギリ残留したチームです。そして一昨年 1st ステージ優勝の横浜は、昨年は13位でギリギリ残留。そして今年は現在 1st ステージ首位です。J1昇格したばかりの仙台が現在 1st ステージ 3位であることもそう。すなわちサッカーは、ほんのちょっとのことで大きく実力が上下する可能性があるスポーツなのです。その可能性があるのに、チーム数を減らしてしまうのはいかがなものでしょう? そもそもの主張が 「実力が下のチームを削ればレベルが上がる」 ということでしたが本当に実力が下のチームを削る事ができるのでしょうか? シーズンが始まってみると、実は実力があるチームを削っていたということはないでしょうか?
さらに、一見表には出てこないが重要だと思われる理由があります。J1 が10チームになってしまったら、中堅チームがなくなってしまう可能性があります。すなわち、優勝争い出来ないチームは、いきなり残留争いに巻き込まれる、ということです。これに関しては 「優勝にも残留争いにも絡まない中途半端なチームがなくなるので良い」 という考え方もあるでしょう。しかし、本当にそれでよいでしょうか?
例えば昨年、広島はそれまでの守備的サッカーから攻撃サッカーへの切り替えを計りました。1st ステージはそれが明らかに裏目に出て13位。10チームだったら残留争い真っ只中です。しかし 2nd ステージは 3位に大躍進します。もしJ1が10チームという状態で、このような意欲的なチャレンジができたでしょうか?1st ステージの低迷で、守備的サッカーに路線を戻していたかもしれません。
J2から昇格してきたチーム、なんとかJ1残留を踏ん張ったチーム、それらの多くのチームは、カウンターサッカーや外国人助っ人選手に頼るなど 「とにかく勝利を」 というサッカーをしたケースが多いのは仕方ありません。その段階から次の段階に上がる前に、一呼吸つける場所、チャレンジに失敗しても残留はできそうだと思える中堅チーム、そういうポジションが必要ではないでしょうか。
もうひとつだけ。日本代表にとってという観点で考えてみましょう。
上で書いたように、チーム数を減らしたところで均一レベルのチームになるのかどうかは疑問ですが、仮にそれが実現したとしても、その状況が良い状況だとは思いません。
サッカーの一部として、強いチームと弱いチームが戦うという状況も必要だと考えます。すなわち、弱いチームは守備的に戦って引き分けに持ち込む。これもサッカーの重要な一面だと思うのです。バスケットボールやバレーボールは弱いチームは絶対勝てません。しかしサッカーという種目だけ、守備を固めるという戦術が可能ですから、引き分けに持ち込むことができるのです。
それが何故必要かというと、日本代表が戦う時に必要なのです。日本代表がアジアで予選を戦う時、相手チームは守備的に戦うことが多いでしょう。その守備的な布陣をどうやってこじ開けて点を取るか。逆に、日本が欧州や南米のチーム相手に徹底的に守備的に戦う必要があるかもしれません。そういった (あるいはそういうことがいかに難しいかを知る) 学習が必要だと思います。
それから、日本代表は同じ相手と何度もやる、という状況はありません。日本代表に必要なのはそういう能力ではなく、あまり戦った事が無い相手と対戦し、臨機応変に戦い方を選択するという応用力です。年に同じチームと 4試合も行うと、相手の作戦を研究し尽くすというようなサッカーになるに違いありません。そんなサッカーは日本代表にとって必要ありません。
これらの理由から、J1リーグのチーム数を削減することには反対です。
まあJリーグ側も、将来は18チームにしたいと思っているくらいなので、J1チーム数削減が実現することはないはずですが。