「ブラボー・ミュージック」 についての考察

2002/09/08

ちょっと前の話ですが、中古ゲーム販売は合法と認められたので、行きつけのゲーム屋さんでも中古品の扱いが大幅に増えました。その中に、「ブラボー・ミュージック」 があったので買ってきました。
この 「
ブラボー・ミュージック」 は、指揮者になってオーケストラを指揮をするというゲームです。実は親の影響で子供のころからクラッシックをたっぷり聴かされて育ったのと、小学生と大学生の時に指揮者としてステージに立った経験があり (今でも指揮棒持ってます)、前からこのゲームには興味がありました。

ただし、本当に興味があったのは 「ザ・マエストロムジーク」。こちらには指揮棒コントローラがあるのです。(こちらも中古があったら買ってみたいですが。)「ブラボー・ミュージック」 には専用コントローラはないので、通常のパッドを使って遊びます。

さて、その 「
ブラボー・ミュージック」、買ってきてまだ一日しかしていません。最初、ゲームスタート時の警告を無視して normal レベルでやると、これがなかなか難しい……。諦めて easy レベルに変更。数回引っかかりましたが、なんとかエンディングまでたどり着きました。するとそれなりに上達したようで、最初無理だったnormal もクリアできるようになっていました。ただしクリアとはいっても、まだ収録曲の半分以下しか出てきていないのでやることはいっぱいありそう。

さて、わざわざこのゲームを取り上げたというのは、このゲームのシステムについて、ちょっと気がついたことがあるからなのですが、その前のこのゲーム以外の “音ゲー” の特徴について考えてみます。
最初の音ゲーといえるべきものがなんだったかはよく分かりませんが、おそらく 「
パラッパラッパー」 ではないでしょうか? 以後、アーケードにおける 「ビート・マニア」、「ダンス・ダンス・レボリューション」 により、“音ゲー” が完全に一般化します。 「ダンス・ダンス・レボリューション」 はのちに携帯電話 N503i の i-アプリでも標準で搭載されました。
その後、楽器のシミュレーションも多数出てきます。「
ドラム・マニア」、「キーボード・マニア」、「ギター・フリークス」、「サンバDEアミーゴ」(マラカス)、「シャカっとタンバリン!」、「太鼓の達人」。それからちょっと毛色の違うものも。ダンス物の 「スペースチャンネル5」、音楽シューティングゲームの 「Rez」。その他 「ポップン・ミュージック」、「パラパラパラダイス」 などなど。
しかし、これら全て共通しているのは 『音楽に合わせて何かをする』 というルール。プレイヤーが “サウンド” を加えるケースはありますが、プレイヤーがリズムを変更するものは (おそらく) ありません。

さて、「
ブラボー・ミュージック」 の話に戻りましょう。指揮者のゲーム、すなわち音楽自体をコントロールしようということが目的のゲームです。とすると、音楽そのものを、音楽のリズムをコントロールする必要があります。
ところが、ここでどうしても矛盾が生じてしまうのです。

音楽ゲームなのだから、なんらかの正解を出さなければいけません。それは、「
ブラボー・ミュージック」 では “標準テンポからある許容内に収まったリズム” です。ある程度のテンポの許容範囲はあるようなんですが、それを越えると “失敗” として判定されてしまいます。音楽をコントロールするにしても、好き勝手なリズムにすることはできないわけです。高得点を獲得するには、目で見えるテンポ表示を正確にトレースする、あるいは正解のテンポをしっかり覚えることが必須になってしまいます。
結局、“音楽自体をコントロールしたい” というゲームであるはずなのに、自由にコントロールすることができないという矛盾を抱えているのです。(一部だけ、
フェルマータに関しては自由にコントロールできますが。)

結局、これらを考えてみると、指揮者のゲームというのは “理論的に成立しない” ということではないでしょうか?

ザ・マエストロムジーク」 の方を見ると、『自由に演奏するモード』 があるようです。 (「ブラボー・ミュージック」 でも、設定では可能ですが。) で、楽譜を見ながら勝手にテンポを決めていいみたい。指揮者ゲームというのは、それが正しいのではないかと思います。


とはいえ、じゃあ 「
ブラボー・ミュージック」 がつまらないかといえば、それなりには楽しいです。クラッシックのメジャー曲が多いですから聴くだけでも楽しいいですし。
ただ、指揮者の感覚とは随分違うなぁ。あくまでもゲームということで……。
あ、それから、クラッシック曲の入門には最適です。これのお陰で、曲は知ってるけど名前覚えてなかった曲を随分覚えることができそうです。そういう用途としてはお薦めのソフトです。


(補足 2002/09/09)

もう少し技術的な観点についても書いておきましょう。

このシステムはおそらくこのようなシステムです。
いくつか方法が考えられるのですが、その違いは独自フォーマットか汎用フォーマットかの選択ぐらいで、やり方に大きな違いはありません。ここでは、最も単純な方法ということで、汎用フォーマットを使うケースを考えます。
まず、単純に SMF での楽曲データを持ち、一拍分のデータのみ進行するシーケンサを設計します。ユーザーの入力で、その一拍分の進行を始める際に、テンポ情報も入力します。テンポは前回のユーザーの入力との時間差で計算。あとはユーザーの入力の大小をベロシティ情報に変換して音量とします。
テンポ検出は、通常はチャタリングによる誤動作や、2倍、1/2倍との判別など、結構大変なのですが、このゲームのようにほぼ正解がわかっている場合は簡単に算出できます。

これからも明らかなんですが、指揮者ゲームとして問題なのが、前回 2回分の入力からテンポを検出しているから、突然のテンポ変更に対応できないということです。ところが、実際のゲームは突然テンポ変更するわけです。それは、ユーザーではなく、ゲーム側がやっているのです。ユーザーが自分でテンポを変えたように見えても、実際はゲームに合わせただけに過ぎません。

とはいっても、実際のオーケストラだって、譜面と事前の練習の成果で演奏のテンポが変わるわけで、ほんとに指揮者が気まぐれでテンポを変えたら上手くはいかないんですよね。そういう意味では間違いではないんですが。

あと、圧力検知による音量のコントロールの部分ですが、ここにも音楽的でない要素があります。単純な誤動作の問題もあります。マニュアルによると 『“強く/弱く” ではなく “はやく/ゆっくり” で考えてみる』 とあります。やってみればその通りで、“強く/弱く” なんてボタンを押すのは至難の業。“はやく/ゆっくり” ボタンを押す方が、正しい判定が行われるようです。ところが、まずはここが問題。この “はやく/ゆっくり” は曲の “はやく/ゆっくり” とは違うわけです。これらのコントロールはゲームを行う上で非常に難しいものとなり、集中できない余計な要素となります。
また、この圧力検知が上手くいっていたとしても、やはり指揮者的にはイマイチ問題です。“強く/弱く” では全く不十分なわけです。同じテンポ、同じ音量であっても、“跳ねるような” とか “滑らかな” とか、おそらく指揮としてはとっても大きな要素があるわけで、これだけでも指揮者ゲームとしては不十分。

もし、指揮棒コントローラがあって、もっと細かい分解能力で指揮棒のスピードおよび加速度を検知することができるなら、面白い指揮者ゲームができるかもしれません。
ゲームの “肝” はコントローラになるはずです。


関連リンク

おとげえ。-音楽ゲーム総合情報サイト-