中山雅史の適正評価
2001/09/24
ネットなどの議論を見ていると、ジュビロ磐田の中山雅史が日本代表に入っていることに対して、不満がある人がいるようですね。特に、彼が技術的に劣るというのが不満で 「中山は下手。日本代表の資格はない」 などと主張します。
個人的な意見では、中山は代表にいても全くおかしくはないと考えます。いや、そもそも、どんなに下手な選手であっても代表に選んでいるのは監督なわけで、中山自体への批判になるはずはないのですが……。まあ、その話は置いておくとして。
しかしその一方で、最近の代表の試合で、もっともスタジアムが沸くのが中山の登場する場面。まるで世界レベルのスター選手が登場するような歓声です。正直な話、こちらについても違和感を感じています。そこまで凄い選手でもないよなぁ、と。
といったところで中山雅史の適正な評価を考えてみたいと思います。
中山否定派は、まずは中山が技術的に劣る点を主張します。とはいっても、実はこの点に関しては、中山肯定派も認めるところ。実際にジュビロの若手選手に比べて、ボール扱いの技術に関して劣るのは間違いないでしょう。ジュビロのボール回しのネックになることさえあります。しかし、中山肯定派はこう主張するわわけです。「それでもJリーグで結果を出しているじゃないか」 と。
ここで、その反論が出てきます。
「中山がJリーグで得点しているのは、ジュビロ磐田の豪華な中盤のおかげである。中山でなくても得点できる」
これは確かにあるかも。否定するのは難しそう。しかし、100%同意もできません。
まず、ちょっとした一般論の話から行きましょう。
よく 「優勝チームから得点王が出ない」 という世界的に有名なジンクスがあります。これ、本当はジンクスではなく、理論的なものだと思うのです。「優勝するようなチームでは、意外と FW は得点し難い」 と思うのです。つまり、優位に立って相手チームが守りを固めたような状況だと、FW も MF もゴールからの距離にあまり違いがないわけで、マークされている分 FW の方が大変かも知れません。一方、FW がもっとも点を取る可能性が高いのはカウンターによる攻撃 (この時、ゴールに最も近づくのは FW だから当たり前) であり、これは相手に攻められることがないとカウンターは成り立ちません。そういう結果として、優勝チームよりも、優勝できなかった上位〜中位のチームの FW の方が得点王になる可能性は高いのではないかと思うのです。
実はこれ、さかつく (「Jリーグサッカークラブをつくろう」) などの、サッカーシミュレーションゲームでも実際そうなります。戦術として攻撃的という選択をすると MF などの得点が増え、カウンターという戦術をとると FW の得点が増えます。
さて、今度は、ジュビロ磐田の中盤に関して考えてみます。
ジュビロの中盤が豪華であるというのは否定する人はいないでしょう。とはいえ、その全ての選手が日本のトップの選手かといえば、そういうわけではありません。代表でレギュラーに近いとはいえ守備の人扱いの服部。ネットなどでは代表戦の出来を厳しく批判されることが多い名波、奥。結局は代表では使ってもらえない藤田、福西。彼らは確かに技術がありますが、決して中田のように一人で局面を打開するような選手ではありません。彼らが作り出すジュビロの中盤の強さは、ボールを持っていない時のポジションや動き、それから守備をする意識の高さ、意思統一、間違いなく組織力の強さです。
そして、この組織力には FW である中山の力も大きく影響しているはずです。中山が追いかけることによってパスコースを制限させる守備。中山が動き出すことによって生まれるスペース。それがあるからこそ、中盤でボールを奪うプレスや、自慢の 2列目の飛び込みがあるわけでです。中山はジュビロの中盤に生かされてる。それは間違いありません。しかし、ジュビロの中盤も中山に生かされているのです。
こう考えてみるとわかりやすいかもしれません。ジュビロの中盤なら中山でなくても点が取れるというなら、じゃあ、どの選手がジュビロに来て、中山のポジションを獲れるというのか? (高原はコンビの相手として別扱いとして、) せいぜい、このところ復調して好調の柳沢くらいでしょうか? それ以外の選手が中山のポジションを獲ることができるとは思いません。
こういったことなどから、中山の得点をジュビロの中盤のせいにするのは、ちょっと正当な主張だとは思えません。これって、選手がいいから監督の力ではない、という主張に似ているかもしれません。これに関しても、結果を出している監督は認める、というのが僕の基本ポリシーです。
話を元に戻してみましょう。
中山が代表にふさわしいという主張の根拠は、もちろんある程度の得点の期待と、それ以外に、上記のような中盤を生かす選手であること、ということになるかと思います。それは、自ら先頭を走り、あきらめずにボールを追いかけ、常に全力でプレーしてチームを鼓舞することを含みます。それを行う体力があるというのも忘れてはいけないでしょう。それから、チームにおける FW の特性のバランスというものあるでしょう。それはプレースタイルやベテランと若手のバランス。そういった部分からも、現在中山が日本代表に選ばれていることに納得します。
しかし、日本代表に選ばれているのは、あくまでも相対的な問題。もし、中山の上記のようなメリットを超えるような技術を持つ FW が現れたなら、中山と入れ替えるべきです。それが 2002 年の春までに起きても、全く不思議ではありません。
ということで、中山雅史は現時点で日本代表の選ばれてもおかしくない選手。でも、技術的な欠点もあるわけで、他の有力選手が出てきたら 2002年までに外されてもおかしくない選手、といったところが適正な評価でしょう。決して中田のような、誰が監督をしても必ずチームの中心に据えるという選手ではありません。
ただ、中山には、まだ上記以外にもまだ特別な特徴があります。
それは彼の成長。僕はJFL時代からの中山を見つづけていますが、トラップの技術、DF を背負った時のキープ力、ドリブル時のフェイント。間違いなく成長を続けています。わかりやすい説明が、4年前、8年前に一緒だった、他の元代表選手が今では代表に呼ばれず、中山だけが代表に選ばれ続けている理由がこれなのです。30歳を過ぎて、いまだに成長し続ける、もの凄い選手です。
間違いなく中山は一生懸命練習しているに違いありません。年齢に応じた体調管理や節制などもしているでしょう。そういう部分でも、合宿などで中山を有望若手選手と一緒に生活させるというのは、実は目に見えている試合とは別の部分で、2002年より後の遠い将来に向けての日本サッカーにとって有益なことかもしれません。