絶叫とマント 〜シドニー五輪〜

2000/09/17

たまにはタイムリーなネタで行きましょう。
シドニーオリンピックが始まりました。子供の頃などはオリンピックといえば大興奮のイベント。しかし、だんだん慣れてくるとそれほどでもなくなってました。最近は、まあ開幕したあとから面白そうなものがあったら注目して見るかな、というくらい。きっと世間一般の人もそんなもんじゃないかな、と思います。たとえば、結果的には結構盛り上がった長野大会って、始まるまではほとんど注目されていなかったはず。
ところが、今回の大会は開幕式前日にサッカーの予選リーグがはじまり、その試合がフランスワールドカップの時のノリで報道され、しかも結果が逆転勝ちという盛り上がりだったことから、オリンピック開幕日を意識した人が多かったのではないでしょうか?
しかも、初日から金メダル2銀メダル1つ。今回のオリンピックは最近になく、開幕時から注目を集めているように思います。

といったとことで、競技とは関係ないお話をふたつ。
開幕式前日に行なわれた、サッカー日本対南アフリカの試合の出来事。実況を担当した
日本テレビの船越アナは、高原選手のゴール2回に、合わせて60回ほど「ゴール」と絶叫。ほとんどのサッカーファンは、この過剰な演出に、怒り心頭でした。「ゴーーール!」という絶叫、これは海外のサッカー中継の名物アナウンサーの真似です。しかしながら、普通の日本人の感覚ではそれは「五月蝿い」です。加えて意図的な演出ミエミエで「興醒め」。
試合終了直後から、ネットにおけるサッカー系の掲示版などでは、その中継に対する非難が続出。
日本テレビへの抗議のメールの宛先なども掲示されたので、多くの人が抗議のメールを書いたはずです。(僕もそのひとり。)
日本におけるサッカー中継の下手さはサッカーファンには承知の事実。特に民放の制作する中継は多くのサッカーファンには許し難いもので、常々ほとんどの人が
NHKBS による放送を見ています。ところが、オリンピックの場合は民放との共同制作の為、普段わざわざ民放の放送を見ないように努めている人まで、BS でその中継を見てしまったのが、反発に拍車をかけました。

ところが、
日本テレビの翌日のワイドショーでは、その中継を自画自賛。テレビ朝日のニュースまでが、道行く人にアンケートをとり、支持されていると結論。これは、あんまり興味ない人に聞けば「いいんじゃないんですか」と答える日本人の標準的な反応を考慮していない、不当なアンケートでした。
対するネットでは自分達の抗議が無視されたことで、さらに怒り心頭。
NHK やスポンサーに抗議することで対抗しようとする運動なども起き始めました。
しかしながら、その翌日では一部スポーツ紙が、
日本テレビNHK に寄せられた抗議を報道した為か、日本テレビの番組でも「五月蝿いという声もありますが……」とややトーンダウン。船越アナの「自然に出たコメント」などの釈明が放送されるなど、どうやら我々の抗議が伝わった模様。
おそらく、次回から多少はこういった色が薄れると信じます。上手く行けば、アトランタ五輪で自分のことを「世界の松下」といって顰蹙を買った
TBS の松下アナのように、二度とサッカー中継で船越アナの姿を見ずにすむかもしれません。

さて、もうひとつの出来事。
これは皆さんご存知の開幕式入場行進での日本チームの服装。あの、レインボーマント (森英恵デザイン) です。
前から、入場行進時の服装は秘密で 「あっと言わせるような服装」 と言うのは聞いていましたが、予想外でした。正直なところ、違和感ありありです。

ところで、ネットの書き込みで見た話なのですが、オーストラリアではレインボーカラーはゲイのシンボルカラーで、日本が入場した瞬間スタジアムが沸いた (確かのそのあとお客さん引いて静まり返ってませんでしたか?) のはそのせいだとか。ちょっとこれは事実かどうかの確証はないですが……。

(追記 2000/09/21) いろいろ検索してみると、記事がありました。「
日本赤っ恥!極彩色マントはゲイの色
その他にも、五輪と関係ない旅行記に、シドニーの町にその手にお店があり、レインボーカラーの旗が立っている話も載っていました。他の国でもレインボーカラーにはそういう意味があるようです。場所によっては紫の場合もあるみたいですが。
ただし、別にゲイのシンボルカラーだから悪いんという話ではありません。「いや、レインボーカラーは俺の国では〜」と自信を持って答えられるなら、ちっとも恥じることはありません。

(追記 2000/09/28) 森英恵デザインというわけではなさそうです。過去、有名デザイナーによるデザインがことごとく不評で、デザイナーにもその評が負担になることから、協会内部でデザインすることに変わったそうです。それで今回、森英恵は協会内のチェックの立場で、本人に言わせると「直前になってあれを見せられ、良くないと思ったが変更するのは無理だし、雨の時だけの服装だというのでOKを出した」とのこと。


さて、この絶叫とマント、僕はとても似ている話だと思います。
何が似ているのか?どちらも僕が 「変だよ、カッコ悪いよ、センス悪いよ」 と感じるということ?
ちょっと違います。確かにそう感じているのですが、それだったら “センスの違い” の問題。それ以前に “違和感” (あるいは不自然さ) を感じるのです。違和感の理由は、それらが自分の生活の延長上にないものだから。

僕は、ここ何年も、ほとんど毎週なんらかのサッカー中継を見ています。そして、その日本の普段のサッカー中継では今回のような過剰な演出による絶叫はありません。それなのに、オリンピックの時だけ絶叫することに違和感を感じます。
別に激しい絶叫自体がいけないとは思ってません。実際そういうのが受け入れられている国があるわけです。けれども、そういう国も徐々に段階を踏んで、だんだん激しくなったんだと思うのです。
例えばワールドカップ予選の時の、
ニュースステーションの川平滋英の「いーんですか?いーんです」について。あれなど、あんまり大袈裟にやられるので、今では結構ウザイですが、あれも最初から派手だったわけではないはずです。だんだん浸透してきて、徐々に派手になっていったわけです。しかもサッカー好きなのが伝わってくるし。好き嫌いはともかく、僕らのサッカー応援の中から出来上がってきたもの。突然飛び込んできた何かではありません。
今回の絶叫は、突然誰かが、しかも我々ほどサッカーに思い入れを持っていない誰かが、突然持ち込んだもの。だから違和感を感じて、それが嫌なのです。

そして、レインボーカラーのマント。その格好が、日本代表の格好であることに違和感を感じます。僕は日本人でそういう格好をしている人を見たことがありませんから。
単に個人で外国に行っている人が、レインボーカラーのマントするのは別に構いません。でも、五輪代表は自分達の代表です。行きたくてもいけなかった人がたくさんいる中での代表です。だから、その入場行進は僕たちの生活の延長にあるものであって欲しいと思うのです。多くの国が、誇りを持って民族衣装で行進するように。
十二単であろうと、浴衣、法被、紋付き袴、ルーズソックス、ガングロファッション、それらはセンスの問題として賛成/反対の意見はあるでしょうが、レインボーカラーのマントはセンス以前の問題だと思うのです。「それは違うだろう」 と。そんなものは僕らの生活にないものだから。

結局は 「こうあって欲しい」 という僕の個人的考えを主張しているだけなんですが、理屈的に、そんなに外していない意見だと思うのですけど……。


関連リンク

船越アナに見る、サッカー実況の系譜。

(追記 2000/09/18 ) 探してみると色々なものが見つかりました。

「ゴ〜ル」28連発!絶叫中継 (スポニチ・アネックス 9/15)

五輪サッカー絶叫アナに批判 (ニッカン・スポーツ 9/15)

日テレ絶叫中継 NHKに苦情 (スポニチ・アネックス 9/16)

ゴール連呼28回!ネットに「うるさい」 (ニッカン・スポーツ 9/16)

NHKの“寅さん”冷静実況が好評 (サンケイ・スポーツ 9/18)

サッカー実況の「カリスマ」NHK・山本浩アナウンサー
「アナウンサーは視聴者の感動を横取りしてはいけない、ということです。すごいプレー、というのは視聴者が感じ、判断することで、私たちがいうべきことじゃない。何が、どうすごいのかがわかるように伝えることが大事なんです。解説者にも言葉で相槌を打つことはない。相槌は視聴者が打てばいいんですから」