ワールドカップがやってくる

2000/03/16

2002 年、ワールドカップが日本と韓国で開催されます。
ワールドカップが開催されると日本にこんな事が起きる、ということを書いてみたいと思います。そして、それこそが僕が個人的に一番ワールドカップに期待していることでもあります。


フランス大会を見に行った時の話です。
僕はパリに宿泊しました。そこには大挙して日本人が押しかけたのはみなさんご存知の通り。もちろん、日本人だけではありません。日本と同じグループだった、アルゼンチン人、ジャマイカ人、クロアチア人も一緒です。そして、僕たちがホテルに入る時、そして出て行く時、僕たちと入れ替わりになった人達がいました。それはワールドカップで日本とは別のグループだった国のサポーター達なのです。

ワールドカップがオリンピックなどと大きく異なるのは、スタジアムやスケジュールに余裕があったとしても、同時刻にはひとつの試合しか行なわないことです。(ただし、グループリーグ最後の試合だけは、利益不利益が生じないように同時進行で行います。)
ちょっと余談になりますが、これって、言うならば何かのコンテストと同じ仕組みですよね。単純に試合を消化するのではなく、その国のサッカーを発表する場。これもワールドカップの重みを表していると思います。

さて、話を戻します。フランス大会の場合だと 1日に行なわれるのは、2〜3試合だけ。そして、同一グループの試合はほぼ 1週間おきに行われました。ということは、フランス大会では、日本人は 1週間おきにフランスを訪れたのです。これを受け入れるフランス側から見るとこうなります。毎日、異なる国 4カ国から、1週間周期でサポーターがやってくる……。
もちろん滞在期間の違いがありますから、そう計算通りではありませんが、明らかにその国の試合の日をピークとして、その前後の数日の間、その国のサポーターが町に溢れるのです。

つまり 2002年には、こんなことが起きるはずなのです。
成田空港や関西空港に(例えば)、イタリア人、オランダ人、カメルーン人、チリ人が、一斉にやってきます。彼らは今現在、日本を訪れるそれらの国の観光客とは全然違います。どこが違うのかと言うと、彼らは間違いなく、イタリアの青、オランダのオレンジ、カメルーンの黄、チリの赤、といった自分達のチームカラーのレプリカやグッズ、あるいは国旗を身につけて現れるはずです。そして、そのまま町へ繰り出すのです。もしかしたら路上で応援を始めるかもしれません。
そして数日後、こんどは黄色い色で固めたブラジル人、赤のベルギー人、赤白チェックのクロアチア人、緑のナイジェリア人。さらに数日後は、青と白のアルゼンチン人、緑のメキシコ人、青のフランス人、……。
試合の日にはその国の試合がある全国各地の競技場へ大集合。そして、その翌日には、東京や京都の観光地にその国のレプリカやグッズを身につけた人で溢れるでしょう。特に、勝利したチームのサポーターは誇らしげに観光地を闊歩するはずです。

ワールドカップ観戦記(1998フランス大会)」にも書きましたが、これはもはや単なるスポーツ大会ではありません。世界のお祭りです。彼らは、自分達の国に、そして予選を勝ち抜いて、本選に参加したことに誇りを持って、日本を訪れるのです。自分の国に残っているサポーター達の代表という意識を持って。

それを日本の人達が目にすること、僕はそれを最も楽しみにしています。ほとんどの日本人がまだ知らない、世界のお祭りの開催を。

また、ワールドカップ開催によって、子供たちはその出場国を覚えるでしょう。僕がフランスで出会ったアルゼンチンの子供が日の丸を覚えたように。そしてきっと、単に国の名前や国旗を覚えるだけではありません。そこにはレプリカを着たアルゼンチン人の姿を見るはずです。あるいは僕が見たジャマイカ人のように、楽器を持ち込んで道端で演奏しているかもしれません。
これこそが、ほんとに外国と、そこに住んでいる人を感じること。それは百科事典や社会科の授業で知る外国とは全然違うと思うのです。

ワールドカップは、日本の人達が、世界のお祭りに参加する機会、そして日本の子供たちが、外国と、そこに住む人達、そして世界で愛されるサッカーを知る機会。
僕は日本代表の成績はどうでもいいや、という気持ちになりました。日本人、特に子供たちがワールドカップを体験してくれるだけで十分です。


(追記 2000/03/20)

ワールドカップ日本開催で、もう少し他のメリットについて書いておきましょう。
スタジアム建設の経済効果、なんて言い古された事は言いませんよ。

スタジアムが作られることよりも、スタジアム周辺に練習用の施設、また間違いなく各国が滞在するキャンプ地に練習場が作られるはずです。それらのいくつかは、間違いなく芝のグラウンドになるはずです。まさか世界のサッカー一流国の選手に土のグラウンドで練習しろとは、口に裂けても言えないでしょう。
そしてワールドカップ終了後、(その地区の心がけ次第ですが、)その芝のグラウンドはそこに残ります。今のJリーガーが子供の頃にも体験できなかった、芝の上でのサッカーが出来る環境が残るのです。スライディングしても、キーパーが横っ飛びしても痛くないグラウンドです。スポーツをより、楽しいと感じさせる環境が出来上がっていくのです。