どうして企業スポーツでは駄目なのか
2000/07/16
女子バレーボールの名門ユニチカが、バレーボール部を廃部にすることになりました。
スポーツニュースのトップ項目として扱われたこの話題ですが、実は内容としては特に目新しいことではありません。同様の話は既に「ブロンコス、オレンジアタッカーズ、フリューゲルス」に書きましたし、それを書いた以後も、数え切れないくらいの種目の実業団チームが姿を消しているはずです。
今回、そのユニチカの話を取り上げて、もう一度、企業スポーツの問題点をまとめてみようと思っていたのですが、それよりもっと適切な題材が飛び込んできました。
世間を騒がせた雪印の食中毒問題の影響で、雪印の運動部が活動自粛だそうです。
雪印といえば、アイスホッケー部や陸上部があるのですが、特にスキー部が冬季五輪代表メンバーを多数含む部ということで、スポーツニュースでも大きく取り上げられました。
ほんとにわかりやすい例が出てきました。これが (純粋にスポーツ側から見て) 理不尽な出来事であることは明白ですね。
もちろん、企業の持ち物である運動部という現状においては、雪印の運動部が活動を停止するというのはわかります。食中毒の被害に遭った人がその活動を見て不快に思うかもしれないから、ということですね。
また、今回のケースに限らずその他の多くの企業がしたように、業績が芳しくない企業が、経費削減という理由で運動部を廃部するのも仕方ありません。企業の経営の方が大事なのは当り前です。
だからこそ、日本のスポーツのトップレベルの選手やチームのほとんどが、アマチュア・プロを問わず、企業に所属している、あるいは企業の持ち物、であることが問題なのです。
ここで改めて、どうして企業スポーツでは駄目なのか、をまとめてみます。
まず、企業の持ち物である限り、企業の都合によって売却されたり、消滅したりします。どんなに一生懸命応援する人がいても関係ありません。親子3代で応援する名門であろうと、誰もが知ってる有名な人気チームであろうと。
そして、何をやるにしてもその企業の都合が優先されます。読売ジャイアンツがどれだけ黒字をだそうが、その利益がファンに還元されることはほとんどありません。それはそうです。彼らは商売をやっているのですから。
また、ファンの要望も、企業の利益と一致する時だけしか実現しません。ファンがどれだけプロ野球のセ・パ交流戦を望んでも、一部チームの利益が減ることによる反対で実現できません。公平なドラフトも実現できず、発言力の強いチームの言いなりです。オリンピック出場選手の選定もチームの都合が優先されます。
プロ野球のケースばかり挙げましたが、アマチュアチームでも同じです。企業から捨てられクラブチームとして活動を続けるチームを、他の企業チームは助けるどころが排除しようとしたことさえありました。(所沢ブロンコスのケース) プロであろうとアマチュアであろうと、自分達の都合のために、選手やファンの声は無視されるのです。
では、企業スポーツからの脱却をするには?
言うまでもありません。Jリーグが目指している地域スポーツです。それぞれの地域にスポーツクラブを作り、それを地元企業、地元自治体、地元住民がみんなで支えるのです。そしてそれは、商売目的ではありません。このあたりは自治体に近いものがあります。
多くの企業や自治体が支えることによるメリットはたくさんあります。
まず、リスク回避の機能を持ちます。一企業が支える場合、その企業の経営悪化や、今回の雪印の不祥事のように、ダメージが直撃します。しかし、複数企業にささえらえるなら、そういう危機が分散できます。当然、チームが遠くの都市へ売却されるということはあり得ません。
それから、多くの企業が地元住民に支えられているわけですから、それら多くの人に利益になることが優先されます。もし利益が出るのなら、みんなに還元されるべきでしょう。
不況の為、多くの実業団チームが消滅しました。しかし、これを悲観的に考えるべきではありません。企業スポーツの時代から、地域スポーツの時代への移り変わりの時期が来たと考えるべきです。
バスケットボールの大和證券が、Jリーグの新潟アルビレックスのバスケチームとして再スタートすることがもっとも象徴的です。これがJリーグの理想、地域スポーツクラブの成立への大きな一歩になるはずです。(これは既に「総合クラブへの道」に書いた通りです。また新潟アルビレックスのバスケチーム成立までの経緯はこちらを参照のこと。)
ところで、企業スポーツについては思うことがあります。『国威発揚』っていう言葉がありますね。そもそも、企業スポーツとは、企業における国威発揚と同じ発想だったに違いありません。
「日本の名誉の為にも頑張れ」 = 「我が社の名誉の為にも頑張れ」
あるいは宣伝。
「我が国は素晴らしい国だ」 = 「我が社は素晴らしい会社だ」
ご存知の通り、国威発揚を一生懸命やっていたのは、発展途上国か、社会主義国。こういった国は、スポーツは文化ではなく、道具なのです。当時、オリンピックはアマチュアの大会だったわけですが、社会主義国は、国威発揚の為にオリンピックを利用しました。『ステートアマ』と呼ばれる、国家お抱えの選手を出場させて。
実は日本も社会主義国と似たようなものでした。『企業アマ』です。企業がお抱えの、半分プロのような選手。『企業アマ』がいたのは、日本や韓国などで、西欧の先進国には『企業アマ』はいません。みんな純粋なアマチュアです。
このことからも、日本が、発展途上国か社会主義と同じく、スポーツが文化ではなく道具であったことがわかります。
社会主義国が国威発揚に頑張る必要があった東西冷戦の時代も終わり、オリンピックがアマチュアの大会だった時代は終わりました。日本においても、「国のために頑張ります」なんて言う人はいなくなりました。
このことも、企業スポーツの時代から、地域スポーツの時代への移行を表していると思います。
もちろん、地域スポーツへの移行は簡単ではありません。やらなければいけないのは、スポーツを文化として認めることです。多くの人がそれを認めて、スポーツクラブ経営が成立すること。現実的には税金の投入も必要でしょう。そしてできれば、かつてオリンピックを目指すレベルの『企業アマ』だった人達の雇用の場の選択肢として、全国各地のスポーツクラブが存在できるようになった時、地域スポーツへの移行が完了したと言えるでしょう。
ところで、サッカーはアルビレックス新潟で、バスケは新潟アルビレックス?
アルビレックス新潟 Official Home page (サッカー)
新潟アルビレックス Official Site (バスケットボール)
いいなぁ……。ジュビロもバスケチーム持たないかなぁ。
(追記 2000/09/07) チーム名ですが、「アルビレックス新潟」で申請したところ JBL のルールでチーム名 (新潟) の後に愛称 (アルビレックス) をつけるように変更させられたそうです。うーむ、JBL ねぇー、大事なことと、大事でないこと違い、分かってるのかなぁ……。