磐田、東京に敗れる
2000/04/16
Jリーグ・ファーストステージ第5節は、首位の磐田と 2位の東京との対戦。
FC東京旋風吹き荒れる序盤戦のハイライトとなったこの試合は、2度のリードを奪われた東京がその度に追いつき試合終了間際についに逆転、堂々の首位に立つという、東京サポーターにはたまらない展開。
もちろん磐田サポーターとしては、不満一杯。なんと言っても、3失点のうち、2点は明らかにミスによる得点。そのふたつのミスはこういう状況でした。
1点リードしたところで、自陣内でのボール回し。福西がバックパスを受けたところを相手選手に詰められたので井原にパス。そこで井原がトラップして前方を向いたところで相手選手にボールを奪われて失点。
もうひとつのミスは、2-2 の同点に追いつかれゴール近くに攻め込まれた際、ペナルティアリア内で奥がハンドをしてしまい PK。
これほどの大きなミスを 1試合に 2つもしたら勝てるはずはありません。
さて、サッカーに「たら」「れば」を言ってはきりがありません。しかし、戦い方として、正しかったのか、正しくなかったのか、を判定することは大切です。そうでないと、サポーターとして選手を評価することができないからです。その評価する基準は、サポーターがジュビロ磐田というチームに何を求めているか、ということで決まります。そして、その基準は、多くのサポーターがいるわけで、みんなの考えの中から基準を決めなければいけません。
「ブーイング」で書きましたが、その評価基準を決めるには、まずは一人一人が意見表明することが最初のプロセス。ですから、ここで僕の考えを発表します。
最初のミスについて、ジュビロ系掲示版の多くで、「ゴール前でパス回しするなんて」「パスした福西が悪い」という評がありました。しかし、僕はそうは思いませんでした。
サッカーというスポーツは、リスクと成果との向かい合わせの競技。そのリスクと成果のバランスは、どこで決まるのか?それは目指すレベルです。
ジュビロがJリーグの昇格した最初の半年間、オフト監督の指示は極めて極端なものでした。なんと、自陣内でのパス禁止です。古いサポーターはその頃のジュビロが、すぐに最終ラインからロングボールを蹴り込んでいたシーンを覚えているはずです。徹底したリスク回避の戦術でした。パス回しする技術がないなら、パスをしなければミスをすることはない。極めて理に適った指示であったと思います。もちろん、それが理に適っているのは、そのレベルに合っていたから。オフト監督は半年を過ぎてパス回しを許したのは、ポジショニングなどを教えて、次のレベルに向かうという判断をしたからです。
さて、レベルが上がり、更にポジショニングや約束事を積み重ねることで、多少のプレッシャーがあっても、ボール回しできるようになるはず。そうやって、ジュビロがオフト監督の 3年間で身につけたものは、パス回しをするためのポジショニングでした。パスをしたら、次にパスをもらう場所にポジションを移動する。これこそが、ジュビロのサッカーがJリーグ中、もっともパス回しが上手だと言われる本当の理由です。
さて、この試合の話に戻りましょう。
福西はゴール前でパスを回そうとしました。その判断が適切であったかどうかは、主観でしか語れませんが、僕は十分可能であったと思います。福西はパスをした後、井原からのリターンパスを受ける為、ポジションを移動しています。それは、オフト時代からこれまでジュビロが積み重ねてきた動きそのまま。そこでリターンを受け、全く問題なく次の攻撃につながるはずでした。
あの程度の状態でパス回しが危険だと言って、前方に大きくパスを出すならば、それはジュビロにとっては 3年ほど前への後退だと思います。
ところがまずいことに、そこでパスを受けた井原はトラップをして前を向こうとしたのです。そこで上手なトラップをして、ボールを取りに来る選手をかわしていたら、それは間違いであったとは言い切れません。しかし、実際そこでボールを奪われたのだから、その判断は間違い。井原はリターンパスするべきでした。
なお、おそらく井原が完全なフリーであったら、福西はリターンをもらう動きをしていないはずです。移籍してきたばかりの井原ではなく、他の選手なら間違いなく福西の動きを見てリターンパスを返しているはずです。やはり、あのプレーは井原の個人的なミスであると思います。
ところで、もし仮に井原がボールを奪われなかったとしたら、あのプレーは良かったのでしょうか?いいえ、あれはジュビロの約束をやぶるプレーです。そういうプレーを続けているとリターンパスをもらう動きがなくなってしまう可能性があるのです。
しばしば、オーバーラップする選手はなるべく使え、と言われます。使われないと、その選手は体力、モチベーション共に低下してしまうからです。そうなると次にオーバーラップしてくれませんから、攻撃パターンは減り、囮もなく、自分達のプレーを狭めてしまうことになるのです。
同じく、ドリブルに頼ることがチームのバランスを崩してしまうのも、これと同じです。他のチームでよく見られる、ドリブルをする選手を眺めている選手。それはパスが出てこないと思い込んでしまうからです。パスが出るという信頼関係がないと、パスをもらう動きはできないのです。
これらと同じ理由で、僕は、あの場面は絶対にリターンパスを返すべきであると考えます。正しい動きをしたら、パスは戻ってくる、その原則をなるべく維持するべきです。
さて、二つ目のミス、奥のハンド。こちらも磐田系掲示版の多くで「仕方がない」という声をたくさんみました。そうでしょうか?「あれだけが敗因ではない」というのなら理解します。しかし、あれは「仕方がない」のでしょうか?
あのハンドは、つい触ってしまったものでしょう。意図して審判を騙そうとしたのではないと思います。しかし、後ろから迫る相手選手にびびって手を出してしまったもの。それは明らかに判断ミスの部類に入れるべきものです。
ハンドといえば思い出すシーンがあります。数年前、攻撃中にゴール前に攻め込んだ名波の頭上をボールが越えていきそうになり、名波がつい手を出してしまいました。その時、ドゥンガが名波に対して怒る怒る。そこまで怒らなくてもいいんでは?というくらい名波を追い掛け回しガミガミと怒り続けました。
「つい、手が出てしまう」、確かに、起きてしまっことは仕方がありません。しかし、同じような場面で、ハンドをしてしまう選手と、ハンドをしない選手がいるはず。それは、より冷静な判断力を持つ、あるいはより強い習慣化によって防ぐことが出来るはずです。トラップや、パス、シュート、そういう物と同じ、すなわちトレーニングによって向上する部分だと思います。
つまり、より高いレベルを目指すのならば「仕方がない」で済ませてはいけないものです。ドゥンガはそれを言いたかったはずです。
これらのケースからおわかりかと思いますが、僕はジュビロ磐田に今よりももっと高いレベルのものを求めます。単純なトラップミスやパスミスをしないと同様、危険だから大きくクリア、というのは極力減らして欲しいし、失敗を「仕方がない」で済ませて惜しくないです。
いつ行っても磐田スタジアムで、素晴らしいショーが見られるように。
幸いなことに、監督は、井原と奥に問題があったという発言をしているようです。個人的にはそれを聞いて安心しました。