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走れ!バカップル列車
第59号 津軽線・江差線(後編)



   二

 蟹田発16時22分発の特急「スーパー白鳥25号」に乗って函館に向かう。
 跨線橋を渡って三番線に来ると、ほどなくして前面が黄緑色、車体が銀色の特急電車がやって来た。切符に指定された七号車に乗り込む。
 蟹田を発車した「スーパー白鳥」は、あっという間に新中小国信号場の分岐点にやって来る。ここを通るのはきょうで三度目だ。ポイントで津軽線から分かれ、線路が四本並ぶ「駅」部分を通過する。同じ場所でも津軽線の列車から見た信号場の景色と、海峡線から見た景色はだいぶ違う。一番左側を通る津軽線からだと信号場全体の様子がだいたい見渡せるし、いったんその様子を見ておけば、その次に海峡線から見た景色も、いままで海峡線だけから見ていた景色とはいくぶん違って見えてくる。
 上空にそびえる新幹線の高架橋をくぐりながら右にカーブし、新幹線との接続点を過ぎる。新幹線の工事を進めているため、あちこちに列車を監視する作業員が雪の中に立っている。三厩に向かう津軽線が地面を這って登る山を海峡線はトンネルと橋で突き進む。
 五八八○メートルの津軽トンネルを抜けて津軽今別を通過。左側に津軽線の津軽二股駅を見下ろす。さらにいくつかのトンネルを抜けると、ピイイイイィという長い汽笛が鳴って、特急列車は青函トンネルに入った。テーブル裏側のステッカーに書いてあるとおり、ちょうど16時37分だった。ゴーっという音が続き、列車は津軽海峡の下へともぐり込む。
 順調に走っていた「スーパー白鳥」だが、急にスピードが遅くなり、吉岡海底駅で停止してしまった。「なんだろ?」みつこさんが窓の外をのぞいている。
「なにか見える?」
「……トンネルがある」
 トンネルの中にトンネルがあるというのも変な話だが、青函トンネルは列車が通過する本坑のほか、先進導坑、作業坑、斜坑、立坑、連絡誘導路など、建設時に必要としたトンネル、緊急時に避難所となるトンネルが海の底の地中に縦横無尽に張り巡らされている。
 特急列車は再び走り出し、暗闇をぼんやり見つめているうちにトンネルを抜けた。トンネルを抜けると北海道である。新幹線の規格でまっすぐ進む線路の途中に三月十五日のダイヤ改正で廃止される知内駅がある。もとは青函トンネルの北海道側の保守基地、新湯の里信号場として開設されたところだ。上下本線の両側に簡素なホームがあるだけの駅で、いまも一日上下合わせて四本しか列車が停まらない。
 雪原の中で海峡線の上下線はゆっくりと離れはじめ、離れた線路の間にどでかい高架橋が現れる。木古内の手前およそ二キロの地点。ここが北海道側の新幹線と在来線の接続部分である。高架橋の下をくぐって右側に出ると再び上下線が近づく。新幹線の高架橋の下から雪に埋もれた単線の線路がひっそりと近づいてくる。これが明日乗車予定の江差線である。江差線の線路は「スーパー白鳥」が走っている海峡線下り線と合流し、しばらく進むと木古内に着く。
 木古内を出ると次第に日が暮れてくる。ここから先は「津軽海峡線」に組み込まれているものの、津軽線の青森〜蟹田間と同じくもともと江差線として建設された区間だから、電化はされていても単線でカーブが多く、海峡線よりスピードはだいぶ落ちる。津軽海峡に面して走る区間が多く景色が良いのだが、窓の外は暗くなり、やがてなにも見えなくなる。
 上り列車が遅れた関係でこちらも数分遅れ、函館到着時刻の17時54分を過ぎてようやくひとつ手前の五稜郭を通過した。JR北海道は度重なる事故の影響で、現在本数を減らして運転している。この列車と函館で接続するはずの札幌行き特急「北斗19号」はきょうは運転していないという車内放送が繰り返される。
 終点函館には18時ごろに着いた。ホームに降り立つとツンとした空気が顔に触れる。夜になったからでもあるだろうが、やはり北海道だから寒いものだと思いたい。



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