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走れ!バカップル列車
第12号 つくばエクスプレス



   三

 定刻になり、つくば行き快速列車が発車した。
 地下深いトンネルを走り始める。しばらくは山手線・京浜東北線の線路に平行して北に進むがJR御徒町駅の脇で右90度に急カーブ。速度が落ちてキーキーと曲がる。曲がった先は春日通りで次の駅新御徒町に停車。大江戸線との乗換駅である。
 快速も区間快速も北千住までは各駅に停まる。列車はこんどは左に90度急カーブをして国際通りの下を走る。このあたりのトンネルはとても深く、一番深いところで海抜マイナス50メートル近くにもなる。
 つくばエクスプレスは地下区間が多く、58・3キロある路線のうち、28%に当たる16・3キロがトンネルである。地上部分の多くは高架橋で全体の44%(25・5キロ)、橋梁が17%(10・2キロ)、その他切り通しなど地平区間が11%(6・3キロ)となっている。
 新御徒町、浅草付近のトンネルは、右に曲がったり左に曲がったり、ずいぶん遠回りしたルートになっている。それでも浅草駅は、東武、東京メトロ、都営地下鉄の浅草駅からは600メートルほど離れた浅草六区の入口付近にあるので乗り換えには向かない。それなのに同じ「浅草」駅を名乗っているので混乱が生じているようだ。しばらくしたら、当初の計画名通り「新浅草」か、あるいは「TX浅草」というような駅名に変更されるのではないかと思う。
 トンネルなので外の景色は見えないが、列車は浅草駅を発車して言問通りと交差し国際通りをさらに北上する。
 南千住を発車すると地上に出て隅田川の鉄橋を渡る。車内も「やっと地上だ」というような安堵に満ちた雰囲気になる。すぐ左側には常磐線が走っている。右側には日比谷線が走っているはずだが、混雑していてよく見えない。
 北千住に停車。それまでも駅に停車するたびに乗客が増えていたが、ここでどやどや大勢乗ってくる。通勤ラッシュ時間帯のような混み具合になってしまった。
 10時41分、北千住を発車するとスピードが出てきて、荒川の鉄橋を渡る。渡り終えるとすぐまた地下のトンネルに入る。東京都内は北千住付近以外は地下区間と考えた方がよさそうである。高速なのでトンネルに入ったり出たりする瞬間、耳がツンとする。
 青井、六町と地下駅を通過する。トンネルは綾瀬川、首都高速三郷線に平行しながら北に走っている。足立区のこの付近はいままで鉄道がなかったところである。
 綾瀬川の下をトンネルで抜け、埼玉県に入る。八潮の手前で地上に出て、一気に高架線となる。
 このあたりから線路はつくばをめざし、関東平野を北東に向けてひた走る。
 空はどんより曇っている。きょうは雨という予報もあったくらいだから、雨が降らないだけいい。どこまでも続く家並みを見ながら、快速列車は時速130キロで走り抜ける。走行中もほとんど揺れず、高架だと家々との距離もあるので、130キロという実感があまり湧かない。
 八潮市も陸の孤島のようなところであったが、つくばエクスプレスの開通で都心へのアクセスが格段に良くなった。快速は北千住の後、南流山までノンストップなので八潮駅は通過する。家並みの隙間に畑やビニールハウスがぽつぽつと見えてくる。
 中川の鉄橋を渡り三郷市に入る。三郷中央駅を通過。あまりに速くて駅名看板がまったく読めない。ビニールハウスのほか、田んぼも現れはじめた。
 さらに江戸川を渡って千葉県に入る。河川敷が広大でここまでくると風景も心なしかのんびりした感じになる。渡り終えると再び地下に潜る。

 東京都を出て最初の停車駅、南流山に着く。秋葉原から21分、JR武蔵野線との乗換駅で、この約1キロ先には総武流山電鉄も通っているはずである。
 やがて電車は再び地上に出て高架線を猛スピードで走り抜けてゆく。
 鬱蒼とした緑が生い茂り、ところどころ赤い土が露出した造成地になっている。流山セントラルパーク付近も造成地ばかりで、いずれ駅周辺は瞬く間に住宅街になるのだろう。
 みつこさんの左隣には学者風のまじめそうなおじさんが座っていて、私が「もうすぐ江戸川を渡るよ」などと言うたびに、みつこさんの手許にあるつくばエクスプレスの路線図をちらちら覗いている。
 私の右隣には小学校低学年くらいの男の子が座っていて、その前におばあちゃんが立っている。おばあちゃんは窓から見える景色を見ては孫に解説をする。八潮や三郷を走っていたときは、こんな説明していた。
「ここらへんは建物を木で作っているんだよ」
 きっと男の子はコンクリート建築ばかりの東京の真ん中に住んでいるのだろう。そして流山周辺では畑が広がって来る。
「ほら、野菜植えているんだよ」
 男の子は熱心に外の景色を見ている。最近は親から躾なければならないと思うほどひどい親子連れが多いが、おばあちゃんの躾がいいのか、この男の子は行儀が良い。
 流山おおたかの森に着いた。東武野田線との接続駅である。もともとここに野田線の駅はなかったが、つくばエクスプレスに合わせて開業した。上下合わせてホームが二本、線路が四本あって、ここで下り普通列車と接続している。10時55分発。
 森や林、原っぱや造成地、住宅や倉庫、いろんなものが混在する平野をひたすら走り続ける。
 柏の葉キャンパスを通過。あたりはもう原っぱというより原野といった感じになる。国道16号線と交差して、柏たなかを通過すると利根川の広大な河川敷に出る。送電線の鉄塔が並び、その向こうには常磐自動車道が走る。あたり一面には田んぼが広がっている。
「あれ、お米になるんだよ」
 隣のおばあちゃんが孫に説明すると、孫は、
「嘘だね」
と言う。おばあちゃんも負けていない。
「お米だよ。お米になるんだよ。わかった?」
 利根川の鉄橋を渡る。長さ897メートル。渡り終えると茨城県である。



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