乳癌に対する内視鏡補助下乳房温存手術−乳癌治療の新たな取り組み(Vol.1)
近年、本邦においても乳腺腫瘍に対する診断・治療法が大きく変化してきた。
主には1)従来の腋窩郭清に代わるセンチネルリンパ節生検の実地臨床への導入、
2)乳房切除術が減少し乳房温存手術が過半数をしめるようになったこと、
3)多剤併用による術前化学療法の積極的な施行である。
神戸市立中央市民病院外科での過去3年間の温存術施行率は約75%と全国平均よりかなり高率であり、その背景には多剤併用療法を用いた術前化学療法による腫瘍径の縮小と、吸収性素材を用いた乳房再建術の工夫がある。 術後も化学・内分泌療法と放射線療法による集学的治療を行い、温存乳房内再発はきわめて低率となった。
神戸市立中央市民病院外科では1998年から胃癌や大腸癌などの悪性腫瘍に対する内視鏡手術を施行しており、当初の早期癌から最近では進行癌にも適応を拡大し、良好な成績が得られている。 乳癌に対しても本年から鏡視下手術を導入し、これまでに15例に施行した。鏡視下手術の標準術式としては腋窩創単独、傍乳輪切開法、両皮切併用法の3法に分類されるが、当院では傍乳輪切開法を施行している。 特徴は完全鏡視下手術による切除ではなく、技術的に安定している従来の小切開創による部分切除を発展させて、内視鏡補助下に行う乳腺部分切除であり、切開創や乳腺組織への侵襲が低く術後の温存乳房の変形も少ないなどの利点がある。 また切除範囲に応じて乳房の再建方法を選択し、小範囲部分切除では皮下組織の遊離による乳腺組織の縫合や脂肪組織充填を、扇状部分切除や腺葉切除以上では布や綿状の吸収性素材を充填剤として用いている。 この再建方法により可能な限り術後の温存乳房の変形を予防することで整容性に優れた手術が可能となった。
これまで温存乳房内再発に関する長期予後では、直接手術との有意差は報告されていない。 従って手術創や乳房に対しては低侵襲であり、予後に関しては従来法と同等であり、乳癌の手術術式として非常に有用と思われる。 まだ広く一般施設には普及していないためその認知度は低いが、今後ますます増加すると思われる乳癌症例に対して積極的に施行する予定である。
( 外科 : 橋本 隆 神戸市立中央市民病院ニュースより)
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