Last modified: Sun Feb 02 13:46:09 JST 2003
Released: 02-Feb-2003

JF7XZO/WWW 電子工作作品紹介

窓時計


最寄り駅から自宅を望む

引越し先には、大きな丸い窓がありました。 すぐに、「これは時計にしよう」と思いました。 しかし、実現するまでには1年弱もかかってしまいました。

外階段から見る
夜 室内の照明に透かされる
夜 屋外の照明に照らされる
室内から見る

機構

設計目標は、こんな感じです。

窓は、直径1mを超えるはめ殺しのすりガラスです。 屋外からも見えるようにするには、 針を窓にぎりぎりまで近づけます。

夜にも見えやすいようにするため、 針は黒いラシャ紙と白い紙を貼り合わせました。 昼は、屋内が暗いため白い針が良く見えます。 夜は、屋内が明るいため、ラシャ紙を貼った針が透けずに黒く見えます。

時計機構は、出来るだけコンパクトにまとめました。 針に隠れて外から見えないようにするためです。 時計機構と針を支える構造には、アルミとアクリルパイプを使いました。 窓の桟をアルミの金具でつかみ、アクリルパイプを垂直に固定します。 そのアクリルパイプに時計機構を締め付けます。 これで、外から一目見ただけでは針以外の機構は見えません。 近くで見ると見えますが。

時計機構の構成は、ACギヤードモータとタミヤの遊星ギヤボックスを使いました。 モータは秋葉原のジャンク屋で数百円で購入したもので、 AC100V50Hzに接続すると4RPMで回転します。 模型用モータに比べ格段に動作音が小さいことから採用しました。 遊星ギヤボックスも静かなギヤです。

遊星ギヤボックスは、改造して使いました。 長針と短針の回転数比12:1を作り出し、 モータの回転を遅くする働きをします。 しかし、ギヤードモータの回転数ではまだ速すぎます。 任意のギヤ比が作れればよいのですが、 既成のギヤの組み合わせでは、 手に入ったモータの回転数を必要な回転数に落とすことが出来ませんでした。 そこで、モータの回転を電気的に検出し、 水晶発振に合わせて回したり止めたりすることで、 時計としての正確なスピードを実現します。

ギヤ構成

次の図にギヤの構成を示します。

タミヤの遊星ギヤボックスは、4段のギヤで構成されます。 格段のギヤ比は、1段目からそれぞれ5,5,4,3です。 モータの回転は1/25に減速されて長針を駆動します。 長針の回転を1/12に減速して短針を駆動します。 長針と短針の回転軸を重ねるため、 3段目・4段目のギヤは中心がくりぬいてあり、 2段目の出力軸が中心を通って長針までつながっています。

針は、軽量化のため、 カーボンファイバパイプ(東急ハンズで購入)の骨に紙を貼って作りました。 それでもこの時計は半径が50cmもあるので、 重力によるモーメントが大きくなってしまいます。 特に、長針の駆動が厄介です。 長針の軸を2段目ギヤに打ち込んで固定したところ、 大きなモーメントのため滑ってしまいます。 結局、ギヤと軸の両方に細い穴を開けて、ほぞを打ち込むことにしました。

遊星ギヤ

遊星ギヤは、中心の太陽ギヤと外側の惑星ギヤが、 内側に歯の付いたギヤボックス内に収められています。 太陽ギヤが回ると、つられて惑星ギヤは太陽ギヤとギヤボックスの間を転がります。 さながら、惑星が自転しながら太陽の周りを公転するかの様です。 惑星ギヤの軸から公転の運動を取り出すと、減速のギヤが実現できます。

太陽ギヤの歯数をn、惑星ギヤの歯数をmとすると、 ギヤボックスの歯数は2m+nです。 このとき、ギヤ比は2(m+n)/nとなります。 タミヤの遊星ギヤボックスは、 ギヤ比4が2段とギヤ比5が2段入っており、 それらの組み合わせでいくつかのギヤ比を実現できます。

ギヤ比=4 ギヤ比=5

今回は、長針と短針の回転数比が12であること、 タミヤの遊星ギヤではギヤ比4と5しか作れないことから、 ギヤ比3の遊星ギヤを自作することにしました。 タミヤの遊星ギヤの中身は、 模型用に良く使われるモジュール0.5の歯で出来ています。 模型店で売っているギヤセットの中から必要な大きさを見つけることが出来ました。 太陽ギヤには平ギヤを使い、細い方を前段の穴に打ち込みます。 惑星ギヤには幅のあるピニオンを使います。

ギヤ比=3改造

電気

本機では、モータの回転数を時計として必要な回転数ちょうどに落とすギヤを 組むことができませんでした。 そのため、電気的にモータを回したり止めたりして、スピードを調節します。 長針は1時間に1回転でギヤ比は25ですから、108秒に1回転となります。 モータの軸をプーリーで手製のロータリーエンコーダと接続します。 プーリーの直径比によりモータの回転数は2倍に増速され、 1回転2パルスのロータリーエンコーダに入ります。 36秒待ってモータを回し、 ロータリーエンコーダから1パルス出たらモータを止める、 これを繰り返すことで、時計としてのスピードを保つことができます。

このような機能を簡単に実現するには、PICマイコンが最適です。 PICは開発ツールが無償で入手でき、 容易に書き換えられるフラッシュメモリ搭載ワンチップマイコンです。

回路は、以下の要素から成っています。

ソフトウェア

次に、マイコンのプログラムです。 タイマーとプリスケーラを使って正確に1秒に1回のオーバーフローを起こします。 それをプログラムで36回カウントします。 センサをポーリングして、1パルスカウントして止めるわけですが、 すぐには止めずにしばらく回し続けます。 エンコーダのエッジを遠ざけるためです。 エッジ付近での誤動作を防ぐため、 センサポートを2回一致で読んでいます。

コントロールボックス

回路部分はひとつの箱に収めました。
前面
内部
背面

精度

この時計は、遅れます。 およそ1000ppmの誤差で遅れていきます。 水晶を使っているのでそんなに遅れるのはどうしてなのか、 長い間わかりませんでした。 やっとわかった理由は、、、プーリーのせいです。 モータとロータリーエンコーダをつないでいるのは、 タミヤ模型のプーリーに輪ゴムをかけたものです。 この場合伝達比はプーリーの直径比になります。 歯車の伝達は整数比ですが、摩擦で伝達するプーリーは実数比になるのです。 仮に直径10mmのプーリーがサランラップ1枚分細かったら、 この程度の時計の進みが起きてしまいます。 何でプーリーなんか使ってしまったのでしょう…

自己流時計学

時計を構成する要素には、次の3つがあります。
  1. 時間の基準を作る手段 time base
  2. 基準の時間を数える手段 counter
  3. 時刻を表示する手段 display
世の中にはいろいろな時計がありますが、 上記3要素に分解して原理を考えてみました。
種類 time base counter display
機械式振り子時計 振り子 歯車 針と文字盤
液晶表示ディジタル時計 水晶振動子 IC LCD
手巻き式腕時計 てんぷ 歯車 針と文字盤
電波時計 原子時計 IC LCD
AC電気時計
デジタル表示がパタパタでるやつ
東京電力? 歯車 文字盤
本機 水晶振動子 歯車
日時計 地球の自転 地球の自転 文字盤
腹時計 代謝量 血糖値 神経刺激
砂時計 砂時計そのもの 人手 人手

また、エネルギーに着目しても面白いことがわかります。 最も原始的な時計(日時計など)は、 積極的にはエネルギーを使いません。 古典的な時計は、 タイムベースだけがエネルギーを使って、 計数・表示は受動的です。 現代的な時計は、 すべてにおいてエネルギーが使われます。

タイムベースを他に依存する時計も、 現代の時計の特徴です。 電波時計は通信総合研究所の原子時計を基準にしています。 AC電気時計は電力会社の供給周波数によるわけですが、 電力会社は交流の周波数をどうやって決めているのでしょう?


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