デューロン・プティの法則

茨城県立小瀬高等学校
竹本 信雄
2003年1月1日

 はじめに

 物性論や統計力学で固体の比熱を説明するとき,最初必ずデューロン・プティの法則が説明されます。しかし,すぐに否定されてしまいます。「固体の比熱は古典論 (デューロン・プティの法則)では説明できない。量子力学的に考えなければならない」と。

 しかし,常温では十分正確にデューロン・プティの法則は成り立っています。そして,「熱はどこにたくわえられるか」(『科学入門教育研究 1集』つばさ書房・西尾仮説サークル・仮説社1983年)で示されたように,特に高校生には教える価値があることだと思います。

デューロン・プティの法則
 熱 が原子分子の熱運動のエネルギーである。
 したがって,物質が蓄える熱は,物質によらず,原子 数で決まる。
 一見まちまちで規則性など無いように見える比熱 が原子量で決まり,簡単に計算できる。

これらのことが簡単な実験から納得できるというのは感動的だと思います。

 デューロン・プティの法則とアインシュタインおよびデバイの比熱

 
デューロン・プティの法則

 固体元素の定積モル比熱が,常温付近ではどれもほとんど等しく,3Rである(Rは気体定数)
という法則。DulongもPetitもフランスの科学者 で,1819年に発表された。

  結晶中では,原子は格子位置の周りで3次元的な単振動を行っていると考えられるから,全エネルギー(運動エネルギーと位置エネルギーの和)は 3kT となる。従って,1モルの原子を含む固体の平均エネルギーEは,3RTとなる。定積モル比熱Cは,体積一定のもとでEをTで偏微 分することによって得られるから,

  

となる。
 実際下のグラフのように,ほとんどの単体固体は常温付近で3R=24.9J/mol・Kとなっている。

 図1(http://www.nucleng.kyoto-u.ac.jp/People/ikuji/edu/matsci/dulong.htmlよ り)
 
 ところが,よく見るとC,B,Be,Siなどの比較的軽い原子ではかなりずれている。また低温での実験が可能になると,測定値がこの法則に合わず3Rよ りかなり小さくなることがわかってきた。そしてT→0でC→0となるらしいことがはっきりしてきた。

  ◇ アインシュタインの比熱

 アインシュタインは,固体原子は(連成振動ではなく)独立に振動しているとし,N個の原子からなる固体を,振動数が全部共通に振動数νで振動する3N個 の1次元調和振動子の集まりと仮定した。そしてプランクの量子仮説に基づき,各振動子のエネルギーは勝手な値をとれず,0,hν,2hν,3hν,・・・ を持ち,各エネルギーを持つ原子の数は,マクスウェル・ボルツマンの分布則で与えられると仮定して次式を導いた。

  

この式は,
高温(hν/kT<<1)では
〜3R
低温(hν/kT>>1)では
〜3R(hν/kT)−hν/kT
と近似される。高温でデューロン・プティの法則を与え,T→0で急速にC →0 となり実験結果をよく説明した。

  ◇ デバイの比熱

 デバイは振動子がすべて同じ振動数νで振動するというアインシュタインの仮定を,振動数に分布があると修正して,いっそう実験とあう結果を導いた。

図2(http://www.ip.media.kyoto-u.ac.jp/htomita/statis/statis.pdfよ り)


引用文献
http://www.nucleng.kyoto-u.ac.jp/People/ikuji/edu/matsci/dulong.html
小出昭一郎著「物理学」裳華房(1975)


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