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030225   経済学に何ができるか(3)「需要と供給」
 
 需要と供給
 
経済は「需要と供給のバランス」によって成り立っているといいます。その「需要と供給のバランス」というのはどうやって実現するの でしょう。
 

話をわかりやすくするため、二人の売り手と二人の買い手が取引するという、最も簡単な例で考えることにします。AとBが売り手、C とDが買い手だとします。Aは大企業Bは小企業で、そのためAは20円で売ってもよいと考えるのに対して、Bは40円以上 で売らないと引き合わないと考えます。またCは高所得者Dは低所得者だとします。Cは50円でも買いたいと思いますが、D は30円以上では買えないと思っています。なお売り手の供給量はAもBも一個、買い手の需要量はCもDも一個と仮定します。
 
この四人が集まって取引をすると、価格は35円(正確には30円から39円の間)に決まります。〈中 略〉その理由を述べてみましょう。
 
仮に価格が25円に決まったとします。この価格ですと、Aしか供給できません。Bは40円以上の価格で売らないと、 損をするからです。しかし需要者の方は、CもDもこの価格なら買えます。従って25円では、供給が1で需要が2となり、品切れとなって価格は上昇す るでしょう。
 
もし45円まで価格が上昇したら、売れ残りが発生します。この価格なら、AもBも供給できますが、需要できるのはC だけです。Dは30円以上なら買えないからです。従って供給は2で需要が1ですから、売れ残りが発生するのです。そして価格は下がります。
 
もし価格が35円に決まるならば、需要と供給が一致し、品切れも売れ残りも発生しません。この価格ならAだけが供給 できますし、またCだけが需要できますから、需要と供給が1となります。従って品切れも売れ残りも起こりません。〈中略〉

価    格 供  給 者 需  要 者 市 場から排除される者 需 要と供給
25 円
C・ D

供 給<需要
35 円

B・ D 需 要と供給が一致
45 円 A・ B
D
供 給>需要
 
こうして今や、均衡価格が成立する筋道は全く明らかです。25円という価格では、供給者Bが売買に参加できません。すなわちBは取 引から追い出されたのであり、市場から排除されたのです。逆に45円という価格では、需要者のDが売買に参加できません。この場合はDが市場から排除され たのです。そして35円。この価格では供給者のBと需要者のDが、一緒に排除されます。そのことが需要と供給の一致に導くのです。
 
需要と供給が一致すると言うことは、とんでもない残酷なことなのです。Bは小企業であり、供給者の中の弱者です。Dは低所得者であ り、需要者の中の弱者です。こういう弱者が排除されることによって、需要と供給が一致するのです。〈中略〉
価格を上げたり下げたりすることによって、弱者を排除していく。その結果として、需要と供給の一致が実現する。これを価格メ カニズムと称しています。

 
需要供給の一致というのは、とても残酷なことですが、価格メカニズム以上の優れた方法はおそらくありません。弱者を 救済すべきだという正義感だけでは、かえって悲惨な結果を招きます。社会主義の失敗はそれを物語っていると思います。
価格メカニズムが残酷なメカニズムだということを知ることは、何より大切なことだと思います。それを知った上で、その残酷さを軽減 し克服する方策を見つけて採用することが最善の方法だと思われます。
 

引用文献:伊賀隆著『経済学に何ができるか』講談社現代新書(1980年3月20日)

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