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030212   未来のエネルギー(10)「核融合発電は有効か」
 
 核融合発電は有効か
 
エネルギー量を確保するという意味なら有効だと思います。
社団法人原子燃料政策研究会のホームページの「スタディ・レポート(6)『ITER計画におけるわが国の役割』吉川允二(日本原子 力研究所理事長)」(1997年)から引用します。
 

核融合の燃料となる重水素は、実際上、海水の中に無限にあります。何億年分もあります。もう一つはトリチウムですが、これはカナダ にありますし、原料となるリチウムは南米、北米等にたくさんあります。いよいよとなればリチウムは海水の中からも取れます。海水中のウランは10億分の3 ぐらいですが、リチウムは海水中に500万分の1ぐらいありますので結構取り易いでしょう。リチウムからトリチウムを作る方法ですが、核融合炉のブラン ケット部分にリチウムを置いておくと、核融合反応によって飛び出した中性子がリチウムにぶつかって核反応を起こし、ヘリウムとトリチウムができます。これ を回収して燃料とします。
100万kWの発電所の1年間の燃料で比較しますと、石油火力発電で年間130万トン、原子力発電ではウラン235を年間1トン 弱、核融合は発熱量が多いものですから、さらに少なくて、重水素とトリチウムの合計が160kgで済みます。いいかえれば、1日に500g弱の燃料があれ ば、100万kWの発電所を運転できるということです。重水素と三重水素の燃料1gで石油8トンに相当するエネルギーを発生することができます。

 
しかし、熱収支の面からは問題だと思います。
 

除熱については、ITERからは相当発熱がありますので、大規模な冷却が必要です。那珂研究所の場合は、いま地 元から頂戴している冷却水ではとても足りないので、霞ヶ浦と地下鉄ぐらいの大きなパイプで結びつける計画が進んでいますので、それを利用させても らえば那珂研でもできますし、北海道の苫小牧、青森県の六ヶ所村では、海水を使わせて頂ければ大丈夫です。

注)2002年5月31日政府は青森県六ヶ所村を、ITER(国際熱核融合実験炉)の日本誘致の 国内候補地とすることを閣議了解した。
 
現在計画中の実験炉ITERでさえ、想像を絶するほどの冷却水が必要です。それだけ発熱量が大きいのです。熱収支を考えた場合、大 変問題だと思います。
 
ITER(国際熱核融合実験炉)では、数億度のプラズマを閉じこめるため数〜十数ステラの磁場で閉じこめます。磁場は液体ヘリウム で冷却した超伝導コイルで作り出します。閉じこめる時間は1000秒が目標です。
 
見学した那珂研究所にあるJT−60(臨海プラズマ試験装置)では「1996年10月31日、閉じこめ時間1秒、温度1億度以上、 イオン密度50兆個/立方cmの重水素プラズマを実現しました。これは「重水素と三重水素が等分に混ざり合ったDTプラズマであれば、超高温燃料の 生成に要した外部加熱入力とDTプラズマで発生する出力が釣り合う臨界プラズマ条件を達成したものです。」(日本原子力研究所のパンフレットより 引用)
 
私の誤解なら訂正しますが、これはJT−60でエネルギー倍率1以上を達成したと言うことではないと思います。JT−60はコイル に超伝導コイルではなく、ふつうの銅線のコイルを作っているため莫大な電力を要します。超伝導コイルを使った場合に出力エネルギーが投入したエネル ギーを上回る条件を達成したと言うことだと思います。
 
核融合発電は、莫大なエネルギーを投入してはじめてそれを上回る出力が取り出せる発電方法です。そして現在想定している発電方法は 水蒸気でタービンを回して発電するということなので、熱効率は30数%程度です。ですから、実質的な熱効率(=電力量/投入エネルギー)は大変低いものに なってしまいます。私は未来のエネルギーの要件を満たさないと思います。地球の熱収支を考えた場合、取り出したエネルギーはすべて廃熱となって大気を暖め ることになるので、出力エネルギーが入力エネルギーを上回れはよいというわけではないのです。
 
今求められているのは、入力エネルギー量を抑えて多くの出力を取り出すことのできる発電方法です。熱効率を現在の 30〜40%から飛躍的に高める技術です。
 
熱効率が低くても、エネルギー源が太陽エネルギーであれば全く問題はありません。基本的に地球の熱収支に影響を与えることはありま せん。太陽放射エネルギーの積極的な活用がもとめられます。

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