2004/8/9~8/30
このページに掲載されている写真の無断転載、使用を禁じます。すべての著作権は越智隆治に帰属します。 Copyright(c)Takaji Ochi / No reproduction or republication without written permission.
2004年8月、約3週間の日程でトンガのヴァヴァウ島に滞在。水中でのザトウクジラ撮影を行った。このレポートはそのうちの数日間に遭遇したクジラとの記録を掲載している。実際には、合計で17日間海に出て、水中でクジラの撮影に成功したのは14日間。天候不良、ボートの故障などで海に出れなかった日は4日間。海に出た日でクジラの水中撮影に成功した確率は 82.3%、海に出れなかった日も合わせると66.6%。ちなみに、海に出てボート上からクジラに遭遇、撮影した日は100%になる。これはかなり高い遭遇率であると言えるだろう。
時には、目の前にクジラの親子が動かずにいるのに、「今日はもういいよ。撮影につき合ってくれてどうもありがとう」と言って、切り上げてしまうことも何度かあった。言い方が大袈裟かもしれないが、あまりに撮影できてしまうので、後半には、伊豆でクマノミでも撮影しているかのような心の余裕を持てるくらいになっていた。今までトンガに来たことのある海外のカメラマンなどに聞くと、僕の遭遇率が信じられないと口々言う。現地でも、撮影から戻ってきた僕に、ホエールウォッチングのサービス、セーリングサファリのNZ人オーナーのジョンが「今日はどうだった?」と聞くのに対して、「当然の事だけど、今日も凄かった、凄く良かった」と連日答えるので、「お前は良くなくても良かったって答えてるんじゃないのか?普通、カメラマンは毎日今日もだめだった、昨日もだめだったって言う奴ばかりなのに。本当にハッピーパーソンだな」と笑いながらも呆れられてしまった。何度かトンガに来たことのある友人のカメラマン、トニーにも「タカジの経験した事が普通だと思ってはいけない。それはかなりラッキーだ」と言われた。
とにかく、そんな風に言われるのだが、それであれば僕の動物運がかなり強いということなのだろうか。確かに、他の場所でも良く動物運が強いとは言われるのだけれど..。だからこのレポートを鵜呑みにして、こんなに簡単に会えるんだと想像してもらっては不味いのかもしれない。会えない時はまったく会えないらしい(らしいとしか僕には言えないのだが)。しかし、もし僕たちと一緒に行く人には、できれば絶対会えると思い込んできてもらった方が良いのかもしれないとも思う。あくまで気持ちの問題なのだが...。僕はヴァヴァウにいる間、スキッパーのオンゴを信じて、毎日当然会えるんだと思い込んで海に出ていた。
リポートが長くなってしまうので、以下は、滞在中の数日間だけの現地での記録を掲載する。それでも充分長いので、読んでもらわなくても結構なのだが、多分、これを読めば、遭遇状況がいかに凄かったかが理解してもらえると思う。
2004年8月15日
トンガ滞在1週間目。昨日の天気がウソのような快晴。風もほとんど無い。10時にセーリングサファリのフルークに乗船してクジラを探す。先週まで乗っていたヨットのメリンダ号と違い、スピードがあり、小回りが効くので、プロの撮影に使うのはうってつけのボートだ。しかし、本来はウォッチングにこのボートは使わない。あくまでセーリングサファリのオーナーが懇意にしているプロにだけチャーターさせている船だ。最初は西側の外洋。やはりいつもこちら側の方が透明度が高いそうで、ボート上から見ても透明度が高いのが分かった。Hung島沖でペア2組、シングル1頭を目撃するが、すぐに潜ってしまったので別の個体を探すことに。Foeata島南側でシングル、親子を発見するも、これもすぐに潜ってしまった。Ava Pulepulekai(海峡)でもシングル1頭。しかし駄目。
先週妊娠クジラたちがいた方に向かうと何隻かのウォッチングボートが見えた。皆探すのに苦労しているようだ。トンガ人スキッパーのオンゴが「島の内側に(同じセイリングサファリのホエールウォッチグボートの)ホエールソングもいる」というので、そちらの方に行ってみた。
Oto島とAva島の間でクジラのブローを発見。しかし、すでにホエールソングがついていて、ゲストを泳がせていた。無線で確認したところ、どうやら親子らしい。一緒に泳げそうだというので、僕らは西の外洋への出口付近で別のクジラを探しながらホエールソングのゲスト20人が全員入るまで待つ事にした。ここでは、一度に入水できるのは4人までというルールだから、20人だと5回交代しなければいけない。20人が全員泳げるくらいフレンドリーなのかと、半ば疑いながら、遠くに見えるホエールソングを見守っていた。1時間くらいたってから、何やら無線でやり取りしていたオンゴが「ウエットスーツを着て泳ぐ準備をしろ」と言う。それでも「こんなに時間たったら、もうクジラ逃げてるんじゃないの」と半信半疑のまま、急いでウエットを着て水中カメラのセットをする。ゆっくりと、少しづつ近付いて行くと、水面にプカプカ浮いている大きなザトウクジラの背中が見えてきた。「あれだけ人が入ったのに、同じ場所で浮いてるよ」。毛塚さんと僕は信じられないという気持ちでその親子の背中を眺めていた。「お〜」という毛塚さんの感嘆の声は心なしか震えていた。
ボートを近付けて、ゆっくり入水。僕はNikonos RS+13mmのストラップをタスキがけにし、手にはSEA&SEA NX-100+17~35mmレンズを持って、同じく2台のカメラを持つ毛塚さんと二人並んで、ゆっくり、ゆっくり接近を試みた。内湾なので、透明度はそれほど良くない。それでも15m程。最初に母親の全容が見えて来た。と、よく見ると、母クジラの頭の上に、子クジラがこちらにテールを向けてチョコンとのっかっている(親子B`、 No7,8)。まさにちょこんって感じだ。「す、すげえ!」心の中で叫びながら毛塚さんの方を見た。毛塚さんも目を丸くして、僕と目を合わせた。静かながら、気持が興奮しているのが表情から読み取れた。お互い、クジラに向き直り、撮影を始めた。
水面に浮いたままで、適度に距離を取っているからか、まったく逃げる様子が無い。母親と子供の視線をひしひしと感じる距離。完全に目があっている。こちらを見てる。優しいが、しかし強烈に印象に残る目だ。しばらくして、二人で水面に顔を出し「ちょっと潜ってみましょうか?」と言って、静かに潜ると、嫌なのか、母親が大きく体を反らして、移動を始めた。「しまった、やっぱり水面で我慢してれば良かった」と一瞬思ったが、親子クジラはしばらく水面から姿を消した。
本当なら、こんな状況に遭遇したら、2台のカメラを一気に撮りきってしまいそうだが、何故か毛塚さんも僕も、全て撮りきる事ができなかった。あまりに近くに、まったく動かずにじっとしている母子に二人とも見とれてしまったのだ。
一度ボートに戻ったのだが、フィルムを入れ替えている間に、また親子は目の前に浮上してきた。どうやらこの島々に囲まれた場所が生まれたばかりの子供のためには安全なのかもしれない。再度、二人で入水。先ほどよりも冷静になった二人は、同時に大胆にもなっていったので、撮影のためにますます接近していった。しかし、あまり近寄り過ぎると、母親が長い胸びれを静かに動かして、「それ以上近付かないでね、赤ちゃんが驚くから」といった風に、フィッシュアイのファインダーを覗き続けて、距離感覚の麻痺している僕らに注意を促す。
しばらくして再度、二人で確認しあって潜るが、やはり移動してしまう。しかし、またほとんど同じ場所に浮上してくるのだ。結局1時間30分ほど一緒に泳ぎ、フィルムも2台合わせて8本程使用した。途中で別のヨットの人たちが入ってきた(実際には、ホエールスイミングのパーミッションを持っていないので、入ってはいけないのだが...)が、僕らの後ろで見ているので、気にせず、水中で手を振って挨拶した。
しばらくして、ホエールソングがまた近付いて来たので、交代して別のクジラを探す事にした。それにしても、母子クジラがあんなにのんびりしているところを撮れるなんて感動した。毛塚さんは「もう今日だけで十分です」と言っていたが、まだまだ先は長い。
その後1頭のシングル(No9)に水中でトライ。しかし、移動しているので、2〜3カット撮影しただけだった。結局それでこの日は終了。港に引き上げた。今日の親子クジラとの遭遇は、今までのザトウクジラのシャイな印象を大きく変える出来事だった。本当に感動した1日だった。
親子B`:個体No7 and 8
2004年8月16日
毛塚さんが体調不良のため、ボートに乗れず、スキッパーのオンゴと僕二人で出かけた。午前中、南東のリーフで5〜6頭くらいのメイティングポッド(メイティングポッドA)(交尾のため、1頭のメスを数頭のオスが追いかけている状態)を発見した。1頭のメスを5頭程のオスが追いかけていた。激しくブローしながら移動していく。さすがにこの数で移動する大人クジラの群れは迫力ものだ。オンゴが「群れの前に落とすから、入れ」と言う。「え、マジで!?」内心躊躇したものの、身体は勝手にウエットスーツを着始めていた。「用意はいいか?」と言いながら、オンゴはメスとオスの間にボートを滑り込ませた。「今だ!」、「えっ、こんなところで?真正面から向かってくるよ。こんな時に限ってなんで一人なんだ。」病気になって苦しんでいる毛塚さんを恨めしく思いながらも、カメラを持った身体を、命じられるままにボートから海中へと勢い良く滑り込ませた。入る瞬間に、何頭かのオスの背中が迫ってくるのが見えて、ありありと目に焼き付いた。「マジ、真正面だよ」自分の鼓動を感じながらも、クジラに向かって半ばヤケ気味に泳ぎ始めていた。
透明度は最悪、10m無いのではないだろうか。その事が余計に緊張感を増幅させる。「どこだ、どこにいるんだ」水面に顔を出し、向かってくるであろうはずの方向や、足元の海中を慌てて何度も見回す。眼下に数頭のクジラが潜行していくのが見えた。「無理かも」と思いながらも、少し潜って、カメラを構えシャッターを押してみた。が、ピンが合わないのかシャッターが切れない。しょうがない。この透明度と距離ではどちらにしても使い物にならない。結局入水はそれ一度で諦めて、ボート上から狙う事にした。しかし、延々と並走を続けているだけなので、適当に切り上げて別のクジラを探す事にした。
Ovaka島の南側の浅いリーフでオンゴが子クジラを見つけた。1頭で水面に浮いて遊んでいた。様子を伺っていると、2頭の大人クジラが同時に浮上してきた。母親とエスコート(親子C`+エスコート、No10,11,12)だという。しばらくすると、また2頭は潜ってしまい、子供だけが水面でプカプカと浮いている。
「ボートを近付けるから、潜らずに水面をゆっくり近付いていけ」とオンゴに言われ、ボートで近付けるギリギリまで接近してもらい静かに入水。ゆっくり近付いていくと、海中に降り注ぐ太陽の斜光の下に、母親とエスコートがじっと動かずにいるのが見えた。その上で子クジラは楽しそうに遊んでいる。
僕が近付くと、子クジラは正面きって接近してきた。ファインダーを覗いていて、「このままだとぶつかる!」と思った瞬間、子クジラは踵を返し、向かって右側にそれて、彼の右半身がフレームいっぱいになった。SEA&SEA NX-100の17~35mmの17mm側でテールまでいっぱいいっぱいだった。「子クジラにこんなに近寄れるなんて」と思いながら、しばらく夢中になって子クジラと泳いでいて、はっと我に返り、下にいる母親とエスコートの事を思い出した。下を見ると、2頭がゆっくりと浮上して来ていた。慌てて2頭を避けるように子クジラから離れた。
エスコートが僕と親子の間に割って入る。緊張する。そのまま泳ぎ去ったと思ったら、またすぐ近くの海中で停止しているとオンゴが教えてくれた。一度ボートに戻って、同じ要領で何度か入水してみた。母子、母子とエスコート、子クジラだけと、様々なバリエーションの撮影ができた。この母親はエスコートよりはるかに大きかった。昨日の母親より全然大きい気がする。オンゴが、子供は生後2日くらいと言っていた。実際に生まれた場面を見たわけでは無いので、本当かどうかわからないが、18年ものクジラガイド経験のある彼の言う事だから、いい加減な目測でもないだろう。
僕たちがこの親子に遭遇して、3時間以上たってから、3頭がそのリーフから移動を始めた。子クジラは母親の側で何度も何度もブリーチングを繰り返した。30回以上はしていただろうか。母親もテールフラッピングやペクトルフラッピングをボートの目の前で何回も繰り返していた。子クジラもそれを真似するように後に続いた。見ていて微笑ましかった。
「母親は怒っているのかな?」とオンゴに訪ねると、「いや、子どもに教えているんだよ、こんなふうにやるんだよって」と笑いながら答えた。今までイルカやクジラがテールフラップとかして水面をたたくのは、「邪魔するな」という合図だと認識していたが、まあこんな考え方もあるんだな。
しばらく一緒に並走して、Ava Pulepuekai海峡の中程まで来た。ホエールウォッチングの許可を持っていない他のヨットが何隻かついてきていた。3頭の姿が見えなくなったと同時くらいに、遠くで大人のクジラがブリーチングを始めたので、そちらに向かう。
しかし、接近するとブリーチングを止めて潜ってしまった。オンゴは「交尾を終えたオスだろう」と言っていた。「なんでわかるの?」と聞くと、交尾を終えたオスは、俺は今セックスしたぞ!やったぜ!って皆に自慢するためにブリーチングするんだ」と言っていた。本当にそうなのかどうかはわからないが、面白い発想だし、なるほどと納得してしまう。それにしてもフルークは速い。メリンダだったら、この移動に1時間くらいかかりそうな距離を、ほんの数分で移動してしまう。
結局この日はこれで終了。しかし、2日連続で様々なバリエーションが撮れて本当に今回だけでもクジラの写真集が作れそうな勢いだ。それにこのままではフィルムが足りなくなってしまいそうで心配だ。正直言って、毛塚さんと1週間で帰っても良いくらいだ。
親子C`:母親、個体No10のテールフラッピング
2004年8月17日
毛塚さんの体調も何とか戻ったので、二人でボートに乗り込む。しかし、空は曇り空であまり良いコンディションとは言えない。東側まで来たところで、オンゴがステアリングの調子がおかしいと言い出した。オイル漏れしていて、舵が思うように取れないのだ。
一度戻って修理しなければいけなくなった。修理している最中にだんだんと天気が良くなってきた。早く直らないかと気をもんでいたのだが、結局この日は、直らないということで、撮影はキャンセルになってしまった。残念。
しょうがないので、昼寝をした後に、僕だけ山に登ることにした。もし、本当に眺めが良ければ、天気の良い時に撮り直しに来ればいいし。そう思って出かけたのだが、たどり着くまでには、結構な時間と体力を要した。カメラ機材を背負っていたから尚更だ。飲み物も持ってきていなかったのは軽卒だったかも。眺めの方もまあまあだったが、天気の良い時に撮り直ししようという程ではなかった。
2004年8月18日
天気は曇り時々雨。空は青空の見えないくらい雲で覆われていた。しかし、無風でべた凪ぎ。今日はEukaf島やEueiki島よりさらに南側でクジラを探していた。最初に出会ったのは、スパイホッピングばかりするシングルクジラ(No13)。近くまでボートを寄せてもずっとスパイホッピングしていて、かわいかった。その近くで2頭のクジラの、多分オスの方がブリーチングしていたので、そちらに向かった(Eueiki島の北側)。しかし、近寄ると何もしなくなったので、また別のクジラを探す。
すぐにエスコートつきの親子(親子A, No14,15,16)を発見。接近を試みるが、移動して水中になかなか入れない。途中で3頭ともにブリーチングを始める。めちゃくちゃ近い。しかも、同時にトリプルブリーチングまでしてみせてくたが、僕はフィルムの交換をしていて、撮影できなかった。毛塚さんは、見とれていて、シャッターを切れずに震えるような大声で叫んでいた。Fua`amotu島のリーフに来たところで、動きが止まったので入水することにした。水面から底が見える程浅く、しかも透明度も良い。親子を撮りたかったのだが、エスコートに邪魔されて、近付けない。しかし、そのエスコートが面白い行動を取っていたので、それを撮影することにした。エスコートに気を取られている間に、親子はその浅いリーフからまた移動を始めた。しばらく追尾するが、また別の親子(親子B)、しかもエスコート無しを発見したので、そちらを追尾することにした。しかし、別のボート(ホエールソング)のゲストがまだまともに見れていないので、その親子も譲って、遠くでブリーチングしているクジラの方に向かう。
Fua`amotu島前でやはり近付くとブリーチングしなくなったが、テールフラッピングを何回かしてくれた(No17)。そいつも移動を始めたので、少し離れた場所で何頭かがブローしているのが見えたので、またそちらに移動した。親子+エスコート(親子C、No18,19,20)の他に2頭、かなりの迫力で移動していく。無線でホエールソングに連絡、そちらも近付いてきた。しばらくは2隻で追跡する。まだ水中で見れていないので、最初の入水は向こうに譲ったが、こちらも、接近してきたクジラに反対側からエントリー。3頭一緒の写真も撮るには撮ったが、暗くて透明度が悪かったので、ちゃんと写っているかわからない。
しばらくこの親子+エスコートを追尾していたのだが、ホエールソングに乗っていたイギリス人女性が一人、まだ水中で見れていなかったという無線が入ってきた。向こうは船足が遅いから、もう港に引き上げなければいけないというので、こちらに乗せて見せてあげることにした。最初は近くにいた大人の2頭に接近したが、移動していて入水は難しそうなので、親子Cの方に戻って3回程エントリーした。暗いが、水中で見れて彼女は満足したようだった。この日はそれで終了、港に引き上げた。
2004年8月19日
曇り時々晴れ、ベタ凪ぎ。この日は今までで一番遠出をした。フルークには僕らの他にオーストラリアのメルボルンから来たデイビッドも同船していた。彼は去年、1週間くらいここに訪れて、クジラウォッチングをしたが、まともにクジラに会えたのはほとんどなかったそうだ。今年も別のボートに乗っていたが、グループで来て、スピードも遅く、スキッパーの腕もあまり良くないので、1日で良いから乗せて欲しいと頼んできたので、乗せてあげることにした。
午前中はブリーチング2回見ただけで、なかなかクジラが見つからなかった。しかし、12時30分過ぎ、メイティングポッド(メイティングポッドB)を発見。日本でなら、絶対危ないから入水させてもらえない状況なのに、オンゴはまた「入れ」と言う。初回、群れが水中で留まっていたので、3人でゆっくり近付いていった。群れのかなり近くまで接近。撮影に成功した。
しかし、その後2度チャレンジしたが、移動を始め、僕らから逃げ続けるので、なかなか撮らせてもらえない。顔を水面に出すと、すぐ目の前を泳いでいるように見えるが、透明度のせいもあり、水中ではぼや〜っと見える状態で追尾する状況がしばらく続いた。このとき、6頭までクジラがいるのを確認した。ボートに上がってから、皆で握手をして喜んだ。デイビッドは、「こんな事は去年はまったくなかった」と言っていたし、毛塚さんも「写真はうまく撮れなくても、メイティングポットに入れただけで満足です」と興奮していた。
オンゴはこの日も、なかなかクジラに会えていなかったホエールソングを無線で呼んでいたのでしばらくはこのメイティングポッドを2隻で追尾していた。こちらはしばらく様子を見ていて、あちらには何度か入水するチャンスがあったにもかかわらず、クジラの数と迫力に圧倒されているのか、ゲストが入ろうとしない。僕らは、しばらくゆっくり追尾を続けながらボートの上でランチを食べ、その後ふたたび同じポッドBを追跡。うまく前に回り込んで、群れがボートに向かってきたタイミングでエントリーすると、向きを変えて逃げ始めた。毛塚さんが数えたかぎりでは、8頭以上いたらしい。撮影は何カットか成功。しかもベタ凪ぎだったので、水面にクジラが写っていた。
追跡している時に、何度かクジラがボートに接近しすぎた時があったのだが、数頭がボートに向かってきて、目前で潜行、ギリギリでテールがボートに接触せずに潜っていった時にはさすがに皆で「わ〜お!」と大声を上げて興奮しながら見守ってしまった。ほんの数秒タイミングが遅ければテールがボートにぶつかっていただろうっていうくらいだった。結局入水は2回程で終了したが、メーティングポッドに入れただけで十分満足だった。
その後、若い母親と子を追跡するが、寄らせてもらえない。オンゴがボートのエンジンを切ってみた。しかし、シャイな親子は移動を続けた。この親子に接近するのは難しいと判断。彼らが泳ぎ去った後、エンジンをかけようとしたが、まったくかからない。どうやらバッテリー切れのようだ。しょうがないのでホエールソングに救助の無線を入れるが、すでに帰路についていて、ここまで戻ってきた場合、フルークはともかく、船足の遅いホエールソングは日没までに港に戻れなくなってしまう。別のボートに救助を求めたところ、スピードの速いホエールウォッチババウのボートが救助に来てくれた。予備のバッテリーと交換してもらい、帰路についた。
戻ってから、まだ体調が完全でない毛塚さんは部屋で休んでいたが、僕とオンゴとデイビッドはマーメイド(バー)で軽く乾杯をした。そこで聞いた話だが、オンゴは18年間、ホエールウォッチングのガイドをしている。彼の経験から言うと、海が荒れると西側(深い海)にクジラが集まり、海が穏やかな時は東側、あるいは南側の浅いリーフにクジラが集まるという。荒れているときに、浅いリーフの多い場所にいると、泳ぎの下手な子クジラなど、リーフにぶつかってしまうのではということらしい。彼のクジラの探し方には、そういう経験からか、一貫性があり、クジラの個体によって泳げるか泳げないかの判断も思いきりが良い。何より遠くからブローを見つけるのがとても早い。
今まで多くのカメラマンが来たが、ほとんどの人が彼に「あちらに行け、こちらに行け」と命令するだけで、彼はほとんどドライバーとしての役をこなすだけだったそうだ。しかし、僕は彼の長年の経験、勘といったものを生かす方が最善だと思う。僕に言わせれば、今までの遭遇率から言っても、オンゴは尊敬に値する最高のホエールガイドだ。彼の「今でも毎日クジラの事を学び続けている」という言葉にも感動した。しかし、頑固なところもあって、一度来て、気に入らないカメラマンとかだと、2度目に来た時には絶対その人のためにスキッパーはしない。そんな彼に「お前なら来年来ても、俺が毎日スキッパーをやるよ。それに家族も連れて来い」と言ってくれたのは嬉しかった。
メーティングポッドB:計8頭、個体No21~28
2004年8月20日
天気は晴れ後曇り。今日は毛塚さんの最終日。デイビッドは今日も乗船したいと言っていたが、さすがに毛塚さんにとっての最終日なので、申し訳ないが遠慮してもらった。しかし、毎度の事だが、この日も凄かった。スタートは10時30分と遅くなったが、まず切り立った島々の並ぶ西側に向かう。毛塚さんと二人して、「ここでブリーチングすれば、地形が特徴的でいいですよね」と話していたら、突然1頭のオス(No29)がブリーチングを始めた。ブリーチングは10回程続き、そのうち2〜3回は良い写真が撮れた。
その後、Ava Pulepulekaiに移動。「群れが見たいな」と思っていたら、そこでメーティングポッドC(6頭No30~35)に遭遇。しばらく追尾。無線で連絡したホエールソングも加わり、2隻で追尾。先にこちらがエントリーさせてもらう。2度程エントリーし、1度目は2〜3頭一緒の水中写真が撮れたが、2度目は、クジラたちが向かった方向と逆に移動してしまい、水中で見れなかった。
Luamoko島を挟んで、2隻で追尾を続ける。次にホエールソングのゲストが4人入水。その後 Hunga島沿いに移動する群れに向かって2人でエントリー。水中で見ることはできたが、あまり良い写真は撮れなかった。しかし、水底の方を泳ぐクジラが、エアを吐き出し、ブルーウォーターにバブルがさーっとカーテンのように海底から登ってきた。僕はそれを撮影しようとしたのだが、毛塚さんも撮影しようと近付いているのかと思ったら、そのまま両手をのばしてバブルカーテンの中に突っ込んでいった。どうやら、クジラのバブルにまみれたかったらしい。その様子が子どものようでおかしかった。
追尾を諦め、ランチ。その後別の個体を探しに行くことにした。その時に「次は親子ですかね」と冗談を言い合っていたのだが、Nuapapu島とKitu島の間を抜け、Luakapa、Oto、Ava島に囲まれた穏やかな場所で、なんと親子(親子E,No36,37)を見つける。水中に留まっているので、一度潜水したところをスノーケルで接近して、水面で待つことにした。最初に子どもが浮上。かなり成長していて、体色が黒い子だった。接近して子クジラを2〜3カット撮影、一応下にいる親を気にしていたのだが、透明度が悪く、どこにいるのかわからなくなってしまった。しかし、ふいに、下から勢い良く母親が水面に向かって浮上ししてきたかと思うと、僕の目の前でブリーチングをした。あまりに近かったので、水面で水しぶきを浴びてしまった。2度目があると危ないので、さすがに後ずさりしてし、毛塚さんと顔を見合わせながら、喜びと興奮で高笑いしてしまった。まさか水中でブリーチングシーンを見れるとは思わなかった。
結局、この親子はホエールソングに譲り、別のクジラを探すことにした。何やらオンゴが別のボートと無線でやり取りしている。前の日に救助に来てくれたホエールウォッチババウのボートだ。どうやら、僕が8/16に会った親子C`だとオンゴが言った。前についていたエスコートは見当たらないらしい。Euaka島近くで泳いでいるようなので、しばらく離れて見ていたが、2時30分にこの親子クジラを譲ってもらった。この親子に何度も入水。人慣れしていて、撮りやすい。
毛塚さんは一度など、移動を始めた親子の母親のペクトラルフィンにぶつかりそうなくらいの距離まで接近してしまって(本当は8m以内に近付いては行けないルールになっている)、「危ない!ぶつかる!」と思った瞬間、母クジラがうまくフィンを動かしてギリギリで避けていた。僕にとっては、そのシーンが今回一番興奮した瞬間だった。ちなみに毛塚さんはそんなに近付いたにも関わらず、興奮していてシャッターが切れなかったそうだ。
何度かフィルム交換をするうちに、ボートの上で、「こんだけ思っている事が実現するのなら、今度はイルカの群れか魚の群れと一緒に泳いで欲しいですね〜」とか冗談言っていたら、なんとゆっくり移動する親子の前にタカサゴの群れが集まっていた。子クジラは興味津々で覗きこみ、親子はその群れの横をゆっくりと移動していった。
こうなるともう、自分たちでも恐いくらい、思った事が実現することに、二人してびびりまくっていた。この日、かなり遅く、5時過ぎまでこの親子を撮影し続けた。毛塚さんが最終日なので、最後は一人で入ってもらって撮影してもらったりした。暗くなってきたので、港に引き上げた。毛塚さんには最終日だが、僕にはまだ9日間程日程が残っている。フィルムの心配があったので毛塚さんからフィルムを譲ってもらった。
親子C`:個体No10 and 11
毛塚さんがトンガを出発し、2日後にトニーが合流、一人で乗船した時も含めて、9日間のうち7日間海に出る。そのうち、最終日以外は毎回クジラの水中撮影に成功した。トニーは信じられないといった感じだった。今回、船上、および水中で遭遇、あるいは撮影した個体に、個人的にNoを付けて、何頭見れたかを記録していた。結果、同一個体と認識できたものは同じ個体Noを付けて、その数は70に達した。これは船上の場合はかなり接近できたもの、撮影できたものに限っているので、距離が離れた場所でのブリーチングやブローを確認したものに関してはカウントしていない。水中だけでも約50個体以上に遭遇した。
その他のクジラ
親子G+エスコート:個体No48 ,49 and 50 親子I :個体No59 and 60
トンガのザトウクジラと泳いでみたい方は下記アドレスにご連絡下さい。