みなさんの熱の入ったライブレビューをぜひお読みください!
管理人のへなちょこレビューは読まなくていいけど(笑)。


1999年2月7日(日)東京・赤坂BLITZ
text by あき

ブリッツを埋めた観衆の大歓声に迎えられて、5年半ぶりに私たちの前に現れた三人は、シンプルにタイトルだけ告げると、あの名曲を始めた。"Everything Must Go" そう!この曲で始まらなければ!だって私たち日本のファンは、彼らの決意表明をまだ直接聞いていなかったのだから。Jamesが、Jamesがいる!あのホワイト・レスポールが、彼の指によって音を生み出すべく作られたかのようなあの名器が、私の目の前で音を発している!
一曲目からいきなり最高潮に達した私の気分は、続くポップ・チューンyou stole the sun from my heartの始まりのミディ・テンポになだめられた…のもつかの間、サビを引き出す、あのうねるギターを合図に、また沸点に達してしまう。Nickyが跳ねる。私たちも跳ねる。気恥ずかしくなるほどの素直なタイトル、思わず笑みがこぼれてしまうキャッチーなメロディ。そこに彼らのエナジーが加わると、こんなに気持ちのいいものなのか!
Jamesが、いつものレスポールから、もっとシンプルな音が出そうなギターに替えた。乾いた音が欲しい曲。Slash 'n' burnでないとしたらこれしかない! "K, k, k, Kevin Carter!!" ライブで絶対に映えるだろうと思っていたとおり、いきなりみんな大ノリ。
続いて、会場全体を心地よく揺らすには必要不可欠のナンバーであると同時に、これ以上の適役もないほどのリズムを持った曲、la tristesse dureraが流れてきた。Nickyのひょろりと伸びた長い手足がいつも以上にかっこよく見え、私たちも最高にハッピーな気分になる。「悲しみは永遠に消え去らない」と彼らとともに歌いながら。 Jamesが口にした次の曲名を聞いて、私は――いや、私だけではないだろう――耳を疑った。ほとんどあきらめていたこの曲を聴けるとは!!そんな喜びに浸る間も与えてくれないままJamesがあのリフをかき鳴らし、 "Stay Beautiful!" へと突入!視界の端で、人の手や足が蠢いている。ボディ・サーファーがすでに出現しているらしい。私が体験していていない初来日も、きっとこんな風に"野郎ども"が暴れまくっていたに違いない。7年だろうが5年だろうが、そんな時の流れなんて、今ここでは何のギャップにもなり得ないと確信した。
Manicsの曲の中でも好きで好きでタマラナイこの曲のタイトルを、Jamesが口にした。"Yes"。そして…、" You can buy her, you can buy her. This one's here, this one's here, this one's here and this one's here. Ev'rything's for sale" まさかあのSEが流れてくるとは!!今まで、このSEがライブで使われたというのは聞いたことがない。全く予想外の演出に半狂乱になる。私は、今、yesを聴いている。そう理解した瞬間、涙が溢れてきた。私は、胸元を押さえつけるバーに突っ伏して泣いた。私がライブで泣いたのは、"5年半ぶり"だが、鳴咽を伴って泣き崩れるのは初めての経験だ。限界まで張り詰めたRicheyの歌詞、ひねりの効いたSeanのドラム、クールなラインを描くNickyのベース、優しく、そして激しいJamesのギターにボーカル、泣き所を押さえたコード進行。それらが総動員で、私のセンティメンタリティの全てを引きずり出す。THBツアーでしか聴けないと思い、ライブで聴くチャンスは一生訪れないだろうと思っていた。でも私は、実際にこの耳で直接聞いたのだ!!あの詞を、あの歌を、あのギターを、あのベースを、あのドラムを!
Yesで放心状態の私を、tsunamiが優しく迎えに来た。Tsunamiとは、もちろん日本語の「津波」を語源とするのだが、英語では、自然現象だけでなく、「感情の高ぶり、気持ちのうねり」も意味する。この曲を聴くと、Manicsが優れたバランス感覚の持ち主だということも認めないではいられないだろう。明るいとは到底言えない詞を、心地よいサウンドで料理するのが本当にうまい。その両要素が最高の割合でブレンドされた時、その曲は、ただの楽曲から、私たちの心の奥深くまで浸透するマスタピースとなるのだ。
続くready for drowningで、彼らは、「まだまだ終わらせるつもりはない」と歌う。自ら終わらせてしまう方が楽だ、とかつて彼らが歌ったのを覚えているだろうか。あの頃の彼らもそうだった。生きつづけていく事の、何と惨めで苦しいことか! "だからこそ"、彼らは続ける事を選んだ。苦しみもがく彼らは、そこから新たな、そして私たちが想像もつかないほどのエナジーを以って、そのクリエティヴィティを発揮してきたのだし、これからもそうありつづけるのだろう。
次のno surface all feelingを聴いて、Jamesが以前、「情熱的passionate」という言葉が嫌いだと言った事を思い出した。自分がそういう人間に見られるのも嫌だと言った。しかし、彼ほど情感豊かな表現をするアーティストに対して、誰がその言葉を避けて通れようか。確かに"情熱的"という言葉は、誤解を受けやすい言葉ではある。感情を前面に押し出すばかりが"情熱"ではないと私は思う。情熱とは、心の中の熱い動き。ふつふつとたぎる想い。表に出ていても、内に秘められていても、その存在を否定する事は不可能だ。そして、内に秘めていた分だけ、そのエクスプロージョンのエネルギーは大きくなる。他の固体である私たちの心の中にも大きく影響を及ぼすほどに。
「次は、"すご〜く古い曲"だよ。」とJames。会場が期待にどよめく。Sweet Home Alabamaのフレーズをさわり程度に弾いて、 "baby love, oh, baby love, …" Jamesが歌い出した!!私は、このSupremesの"baby love"が、その"古い曲"の始まりを意味するのかを知ったその日以来ずっと夢見てきた念願のこのフレーズを、Jamesと一緒に歌う(私は"叫ぶ"だったが)ことができたのだ―― "…baby, baby, MOTOWN JUNK…!!" これだよ、みんなの期待していた"古い曲"は!そんなオーディエンスの喜びが爆発し、早くも、私とステージとの間を男の子達が次々に連れ出されていく。その顔は皆、もちろん笑顔だ。セキュリティをはじめとするスタッフの皆さんに迷惑がかかっていることは承知の上で言わせてもらう。私はうれしくてしょうがなかった! 続く、Motorcycle emptinessは、A design for lifeとともに、一般のリスナーにも名曲として認められる程、プロフェッショナルな曲だ。(もちろんmanicsらしさを十二分に備えた上で、だ。)それにしても、つくづくこの詞というのは、"Tokyo(今の日本)"にぴったりだと思う。そして、この曲を歌うにふさわしいシンガーは、彼をおいて他にはない。このunder neon lonelinessを癒すかのように、彼は喉と弦を美しく震わせた。
冒頭の、冷たく金属的な音が印象的なif you tolerate this your children will be nextは、Jamesがニュー・アルバムのプロモーションのため単独来日した際、FM番組でライブ・パフォーマンスを披露した曲でもある。そのシンガーとしての実力に、スピーカーのこちら側で聴いていただけの私も、改めて驚嘆させられたものだった。そして、ここBLITZでも。
Jamesのみがステージに残され、彼がまたギターを替えた。アコースティック・ギターだ。"Black dog"という言葉に、ちょっと意外な贈り物といった喜びをあらわす私たち。さらに、Jamesが笑顔で「Not "DAMN DOG"」とうれしい追い討ちをかける。Jamesがアコギをかきならす様も、気負った感じがなく、穏やかな雰囲気の中で、彼の発するバイブに身を委ねた。そして、「東京のファンに、ちょっと遅いクリスマス・プレゼント」と言って続けられたのは、WHAM!のlast Christmas。この曲を彼らがカバーしていたのは知っていたが、何しろ季節限定品である!2月だし、当然無理だと思っていた。本当に、素直に「うれしい」と思った。
前回の来日の時も、彼のアコ・セットは素晴らしかったが、今回はさらに、英国No.1バンドのシンガーとしての貫禄がつき、一人で会場内の全てを圧倒していた。彼のギターとボーカルだけが、だだっぴろい倉庫のような空間に響き、私たちは息をするのも忘れて聞き入った。私の視界の端で女性が泣き崩れるのを、私は見逃さなかった。 Seanとnicky、そしてキーボードのNickも戻ってきた。「これでnobody loved youなんてやられちゃったらたまんないな。」という"悪い予感"が的中した。あの"空間"を目の前にしてこの曲を聴くのは、本当につらかった。早く終わって欲しいとさえ思った。Never had a chance to take you home / there's no reason / just another tomorrow 彼らの終わりのない苦しみが、私の心を裂く。Nickyは、なぜこんなにも素直な言葉で自らの心情を露呈してしまうのか。あまりにも悲しく、そして美しい。ドラマティックなアレンジに飲まれないJamesのボーカルを耳に、私はまたもバーに突っ伏してしまった。
このニッキーの名(迷?)演技も「記憶がない」というのか、アンタ・・・
そんな感傷をぶった切るように始まったAustraliaに、待ってましたとばかりに泳ぐ人!人!人!この曲では、ステージに上がった人もいたように記憶している。正直、「いいなぁ、男の子は〜。」と思った。その勢いに押されてか(?)Jamesが途中、歌詞を間違えた。さらに…、このライブで一番感動したことがこのあと起こった。(が、恥ずかしくてここでは書けない。)
リズム隊がステージに残ったまま、「This is Yesterday」とタイトルが告げられた。この曲はアコギ・バージョンの方が圧倒的に多いようだが、やはりアルバム・バージョンの方がかっこいい。淡々と流れていくリズムに絡むメロディ。エフェクトだかなんだか知らないが(ほんとに知らない)、あのイントロだけで背筋がぞくぞくしてしまった。
そして、"design for life" 今やUKの若者のアンセムとまでなった名曲だ。イギリスでのライブのように大合唱とはいかなかったようだが、この曲に対する反応は、初期の曲に対するものと同様、とても良かったと思う。もちろん、表現のされ方は全く違うが。
Design for lifeというタイトルを聞いたとき、最初に頭をよぎったのは、、「まだyou love usをやっていない!」ということだった。それはつまり、you love usでのシメを意味していた。この瞬間、今回のライブに際しての私の願いの成就は完成した。このレポートも、最後をかっこよく決めたいところだ。が、はっきり言って何も覚えていない。メンバー紹介、そしてJamesによるタイトル・コール、"YOU LOVE US!" それ以降の記憶がない。あとで、ロッカーの中の荷物を取り出しながら「そーいやー。Heavenlyバージョンじゃなかったなー。」と思っただけだ。

考えてみれば、私は何と多くの事を今回の来日に期待していたのだろう!自分の欲の深さにあきれるばかりだ。そしてそれが全てかなった幸運に驚くばかりだ。しかし、結局のところ、you love usで終わらなくても、生yesが聴けなくても、stay beautifulが遠い過去の思い出に過ぎなかったにしても、私は満足したに違いない。だって、彼らがそこにいたのだから!


1999年2月7日(日)東京・赤坂BLITZ
text by ともかず

MANIC STREET PREACHERS(以下マニックス)の通算3度目、約5年半振りの来日公演が2/5大阪から始まった。僕にとっては2度目の来日公演だ。93年の来日公演を僕は2度観た。当時はここまで僕にとって大きな存在になるとは思ってなかったし、「好きな英国バンド」のひとつとしてしか接してはいなかった。正直な話演奏も巧くはなかったし、ライヴもあっという間に終わったという印象が残っていた。決してネガティヴな感情があった訳ではないが、当時聴いていた他のバンドと比べれば‥‥といったイメージが常に頭にはあった。では、いつから「大切な存在」になったか?いや、いつそれを確信したか?‥‥それはかなり時間の経った、昨年の新作を聴いてからだった。まずタイトルにやられた。『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』だなんて、いかにも彼等らしい直球じゃないか?そして内容。僕自身が93年から成長してなかったら、これを名盤だなんて声高らかに宣言しなかっただろう。そこへ来日の知らせ‥‥純粋にこれらの曲をライヴで聴きたい。ただそれだけだった。そして考えてみれば、5年半振り‥‥過去の自分への決別の意味もあった。本当に自分は成長したのだろ うか?と‥‥

2/7(日)、東京公演初日となるこの日は唯一の休日公演ということもあり、会場はほぼ満杯だったように思う。僕はかなり若い整理番号だったので、ほぼ最前列中央に辿り着く事が出来た。定刻より30分押しの18時30分、会場が暗転しオープニングのS.E.が流れ出す。いよいよだ‥‥そしてメンバーがひとりひとりと所定の位置まで歩いていく。見える、すぐそばにあのジェームズ、ニッキー、ショーンがいる!!! ライヴスタート!1曲目は"Everything Must Go" 。まず驚いたのは音がクリアーだった事。よくよく考えるとこの1年ちょっとの間、僕が観たライヴは全てここ赤坂ブリッツでだった。その中でも郡を抜く音の良さだったと思う。そして演奏が異常に安定している。ショーンのリズムキープはアルバム毎に良くなってきてるが、現時点でここまで叩けば誰も文句は言えないだろう。ニッキーは‥‥相変わらず、というか。(笑)唯一、ニッキーはニッキーのままだった気がした。勿論演奏力はあの頃とは比べ物にならないが。そしてジェームズ‥‥予想以上に声が出ている。この時期来日アーティストは風邪にやられる事が多いが(例えばSting)全く関係なし、な様子。そして彼の身軽さ!ヴィデオ『EVERYTHING LIVE』を観た事がある人なら判ると思うが、ギターを弾きながらクルクル回るわ飛ぶわで大暴れなのだ!なんて見とれていたら後頭部に蹴りが入る。既にボディーサーフが始まってる!「へっ!?この曲でもう?」って思う隙もなく1曲目が終了し、2曲目に突入。僕がライヴ1曲目だと予想してた"You Stole The Sun From My Heart" 。イントロ部分のリズムはシーケンサーを使用、それに合わせジェームズがクリーントーンでアルペジオをつま弾く。サビに入る直前にジェームズが「イチ、ニー、サン、シー」とかけ声。ギターが歪み出す瞬間にジェームズ、ニッキー飛び上がる!それに合わせて僕らも飛ぶ!とにかくジェームズ、よく動き、よく歌う。この男の歌唱力は過小評価されているような気がしてならない。現在のロックシーンを見回してもこれだけの声量・歌唱力をもったシンガーはいないのでは?しかも「最高にエモーショナルなギタープレイをしながら」である。既にこの日何度目かの鳥肌が‥‥ここでニッキーに目をやると、膝でリズムを取りながら目を瞑り、歌っている‥‥勿論、その声は聞こえはしないが。とにかくニッキーも気持ち良さそうに歌っている。ここでジェームズ、ギターを白のレスポール・カスタムからテレキャスターに持ち替える。3曲目は「K, k, k, k....Kevin Carter!」端切れの良いリズムに合わせてジェームズ、ニッキーが飛ぶ。真正面にいるからという訳ではないが、やはりジェームズに目がいってしまう。彼の歌唱力/ギタープレイは正真正銘の本物。アルバムと違い、ソロパートはギター。ハーモナイザー(エフェクターの一種で、元の音にその1オクターブ上(または下)の音が被さるエフェクト効果が得られる。)がかかったギターソロは原曲に忠実だった。
続いてはこの日唯一の『GOLD AGAINST THE SOUL』からのナンバー、"La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)" 。ここまでの曲構成/流れ、完璧である。こうやって聴いてみると2ndの曲というのが如何に『3人体制』になってからの音に近いかが伺える。だがサポートメンバーのマイク・ネイスミスのキーボードの音が小さいような気がする。後ろの方で聴いてた方にはどのように聴こえたのだろう?この曲などはギターに絡むピアノが重要な気がするのだが‥‥ソウルフルなジェームズの歌に酔いしれる。また鳥肌が。
「次の曲は‥‥」‥‥っへ!?今なんて言った?僕の聞き違いか?‥‥"Stay Beautiful"!UKツアーではたまにやってたみたいだが、誰も「絶対」がない事を知っている。だからこそ、このハプニングには皆、気が振れたかのように大暴れ!ボディーサーファー続出、感極まって涙する女性多数。1stからの曲とあってか、リズムは昔のように走り気味だが、この時代の曲にはこれが合ってるような気がする。打ち合わせた訳でもないのに、皆が叫ぶ。
     ♪Don't wanna see your face. Don't wanna hear your words.
         Why don't you just♪..........FUCK OFF!!!
我を忘れる位に興奮する僕に次々と襲い掛かる名曲の数々。次の曲は"Yes"。マニックス史上、恐らく最も演奏に注意が必要な唯一の変拍子ナンバー。しかしリズムキープはしっかりしてるし、演奏も完璧に近かった。ここで初めてステージ向かって左側の空白部分に気付く。あ、そうか。今でもあそこにはリッチーがいるんだ。恐らくメンバーにとってはそうなんだろう。勿論僕らにとってもその気持ちは一緒。そう、目の前に見えるマニックスは3人(+1)だが、多くのファンの「心の目」には見えてるはずだ‥‥エンディングの独特なギターフレーズを後に、再び新作から"Tsunami"。イントロのシタールはキーボードがサンプリング音で代役。僕もレスポールをメインで弾くのでよく判っているつもりだが、とにかくジェームズのギターサウンドには圧巻である。アンプ自体も僕が昔使っていたマーシャル。なのにあのクリアーなクリーントーン‥‥そうか、マーシャルの上に乗っているトレース・エリオットか!(注;マーシャルやトレース・エリオットというのはギターアンプのメーカー名。マーシャルはメジャーだが、トレースは本来ベースアンプが主である)恐らくジェームズは「ディストーション系はマーシャル」「クリーン系はトレース〜」という風に設定を分けているのだろう。しかしどうしたことだろう‥‥この曲の美しさときたら‥‥ジェームズの声量はまだ落ちていない。続けざまに"Ready For Drowning"。僕が新作の中でも特に好きな曲だ。イントロのオルガンのフレーズがどことなくTHE DOORSを彷佛させ、歌に入った時の転調がまた絶妙に巧い。ジェームズという男、歌やギターの才能に恵まれているだけではなく、作曲の才能までも持ち合わせている‥‥同じ作曲をする人間としてジェラシーすら感じる。
次は僕が最も聴きたかった曲、"No Surface All Feeling" !この曲の美しさときたら‥‥正直に告白しよう。僕はこの曲で秘かに泣いた。みんなステージに夢中で、ステージのすぐ側にいる身長180cmの男が涙を流していた事なんて誰も気付いてはいなかっただろう。"Tsunami"からの「美メロ」3連発にやられた。目からはコンタクトが落ちそうな程の涙が‥‥何て美しい、何て激しくて、何て優しいメロディーを書くのだろうか、ジェームズ・ディーン・ブラッドフィールドという男は‥‥そんな僕を後目にライヴは進行していく。「次は古い曲だよ‥‥"Sweet Home Alabama"!」ジェームズがあのカントリータッチのイントロフレーズを弾き始めると、他のメンバーはそれに合わせて加わっていく。そして歌に入る直前に演奏はストップ。一瞬の間‥‥そしてギターを刻むように弾きながら、聴き覚えのあるフレーズを歌い出す。♪Baby love〜♪‥‥あぁ、いよいよ佳境に突入するな!♪Baby, baby, motown junk〜♪待ってました!初期の名曲、"Motown Junk"の登場だ!意外とリズムは安定しているし、演奏も歌もガッチリ決まっている。ボディーサーファーは前の3曲での鬱憤を晴らさんばかりに頭上を泳ぎ回る。勿論僕の頭に蹴りが入りまくる。でも全く気にならない。だって"Motown Junk" だぜ!?冷静でいられる訳がない!サビは大合唱。フロントの2人は飛び跳ね大暴れ。そして曲の最後の台詞、「We Destroy Rock'n'Roll!」が‥‥何故、「We Destroy ...」で止めてしまったのだろう?責めるつもりは更々ないが、やっぱりここまできたらカッコ良くキメて欲しかったなぁ‥‥でも、今の彼等には『Destroy』する意味がないのかもしれない。あるいは‥‥いや、やめておこう。この話はまた今度だ。
続けざまに"Motorcycle Emptiness" 。曲調こそハードだが、メロディーは今のマニックスそのものである。ショーンの叩く16ビートが心地よく体に響く。続く "If You Tolerate This Your Children Will Be Next"に引けを取らない完成度だと思う。この2曲は90年代前半/後半の彼等を代表するナンバー、いや、イギリスを代表するナンバーだと確信している。きっと2000年以降に、雑誌などでの企画「1990年代の名盤・名曲特集」に名を残すことだろう。それにしても "If You Tolerate This〜" に対する反応が弱かった気がしたが、それは曲調がああだからだろうか?単に前の方に集まった客がオールドファンばかりだったからだろうか?
ここで一旦、ジェームズを除く他のメンバーは袖に引っ込む。ジェームズはレスポールからギブソンのアコースティックギターに持ち替える。客から彼に何か声がかかる。「What?」とジェームズ、微笑みながら相手になる。和気あいあいとした雰囲気の中、"Black Dog On My Shoulder"の弾き語りが始まる。終盤のテンポが変わる部分辺りで、ジェームズがぽつりと一言、「東京のみんなに、ちょっと遅いけどクリスマスプレゼントだよ」‥‥そして歌い出したのは何と"Last Christmas"!去年のウェンブリー公演など、過去にもクリスマスシーズンにこの歌を歌うジェームズが確認されていたが、まさか2月にここ東京で聴くことが出来るとは夢にも思わなかった。隣では「何でクリスマスなの?」と宣う女性がいたが、いいじゃないか?ボーナスだよ、6年近く待った僕らに対する。最初の1コーラスで"Last Christmas"は終了。会場は笑顔と拍手に包まれる。それに続くは、切なくも美しい"Small Black Flower That Grow In The Sky"。アルバム『EVERYTHING MUST GO』の中で聴くと箸休め的な印象を受けたが、こうやってライヴ会場で聴くと全く違う印象を受ける。聴くシチュエーションでこうも違うものなのだろうか?いや違う。目の前にいるジェームズという男の歌唱力に圧倒されているのだ。このアコースティック2曲はどことなく3rd アルバムの頃の LED ZEPPELIN を彷佛させる、などと考えたのは僕だけだろうか?あのフレーズはジミー・ペイジに通ずるものがあると思うのだが‥‥しかし、本当に巧い。歌もギターも。これ以上の言葉が浮んでこない。
ジェームズのソロを終えて、残りのメンバーが再びステージに戻ってきた。バンド編成での再スタートは、CMでもお馴染みの名曲、"Nobody Loved You"だ。残念だが、この曲のイントロは完全には再現されなかった。パワーコードの上に被さる印象的なスライドギターのフレーズ‥‥こればかりはジェームズひとりでは再現出来まい。結局パワーコードのパートを弾く。でもそれでこの曲の価値が下がる訳ではない。やはり名曲は名曲。ミディアム〜スロウ・ナンバーが多い新作の中でも、とりわけ「スロウでハード」なこの曲は、みんなにも好評なようだ 。サビでは大合唱が起こる。僕も既に声は枯れていたが、それでも最後の力を振り絞って歌う。5年半分の想いを込めて‥‥この曲のギターソロは恐らくジェームズが人前で弾く、初めてのスライドギター・ソロ。不馴れな為か内容的には大した事なかったが、それでも音楽に対して貪欲な姿勢が伺える気がする。よく昔はジェームズとスラッシュを比較する声があったが、さすがにスライドプレイに関しては全く別物であった。スラッシュはギターネックの上から被せるようにスライドバーを操る独特な奏法だが、ジェームズは至極オーソドックスな、ネックを下から抱えるような‥‥つまり普通に弾くのと同じ体勢でプレイした。まぁ、ジェームズは歌も歌うのでこの方がやり易いのだが。
再び勢いのある"Australia"がスタート。ボディーサーファー復活。この曲でライヴがスタートするのもいいが、終盤盛り上げる為に持ってこいだから、このポジションの方が正解だと思う。ジェームズは相変わらずくるくる回りながらギターをプレイし、ニッキーは飛び跳ねたり歌ったりで茶目っ気タップリだった。最後の方で、ジェームズが歌詞を間違え?たのか、ニッキーと顔を見合わせて笑ってしまい歌えなくなる。ライヴならではの御愛嬌。ライヴが始まったばかりの頃は、どこかステージ上にピンと張り詰めたものを感じていたのだが、それも 進行するにつれて徐々に和やかなムードへと変わっていった。それはメンバーのあの笑顔が全てを物語っているはずだ。大阪ではアコースティックで演奏された"This Is Yesterday"も今日はバンド編成でプレイされた。ジェームズは再びテレキャスターを弾く。弾き語りもいいが、やっぱりこの曲はアルバムバージョンの方が曲の良さが際立つ気がする。ダークで閉鎖的な『THE HOLY BIBLE』の中で唯一、従来の彼等らしさを醸し出すこの曲も観客に好意的に受け入れられた。
さぁ、ここからが本当のクライマックスである‥‥事前の情報で、最後の2曲は"You Love Us"〜"A Design For Life"だという事が判っていたが、何故かしっくりこなかった。確かに母国では"You Love Us"以上に"A Design For Life"の方がアンセム的ナンバーとして成り立っている事は判ってはいたが、やはりここ日本では 僕らにとって思い出深い1stアルバムのナンバーで締めて欲しい‥‥みんな、そんな気持ちでいっぱいなはずだ。そして運命の時。ラスト前の1曲は‥‥"A Design For Life"!内心ホッとした。お陰で初めて生で聴く"A Design ForLife"を心の底から堪能する事が出来た。もうここまでくると、頭から最後までみんな歌いっぱなしだ。拳を振り上げる者もいれば、涙を流す者、ただ音に合わせ体を左右に揺する者‥‥それぞれがそれぞれの楽しみ方をしている。そしてステージ上の3人も‥‥最後のドラムオンリーのパートでは、観客がリズムに合わせて手拍子。そして大歓声。いよいよである‥‥お待ちかねの「大ラス」は"You Love Us"!残り少ない彼等と共有できる時間を、最大限の力を振り絞って歌い、踊り、暴れる!コーラスではこの日一番の大合唱が‥‥もうどうなってもいい、明日なんか来なくてもいい‥‥そんな気持ちで僕も大暴れする。本当の「見せ場」はこの後起きた‥‥何とニッキーはベースをローディーに渡し、ベースアンプ上に乗っていた白いロープのようなものを持つと‥‥な、縄跳びぃ〜〜〜〜〜!?(爆)噂には聞いていたが、これ程までとは正直驚いた。ステージ狭しとニッキーはリズムに合わせて縄跳びしながら動き回る。そう、僕が常日頃口にしてきた『既成概念のぶち壊し』。これこそそれではなかろうか?これこそ『Real Rock'n'Roll』ではなかろうか?あそこまでクールに振舞って、最後にこれかよ!?‥‥ったく、ニッキー。あんたって人は‥‥素敵すぎるよ、本当に。ニッキーには目もくれず、ジェームズはひたすら歌い、ギターを弾きまくる。そしてエンディング‥‥マイクスタンドをぶち倒し、ギターのフィードバック音が響く中、マニックス東京公演初日は終わりを迎えた。鳴り止まぬ拍手、アンコールを求める声。しかし彼等は戻っては来なかった。客電がついた後も僕はその場を動けずにいた。放心状態。いつ以来だろうか?ライヴでここまで放心状態に陥るのは‥‥ハッキリとは思い出せないが、ここまで充実しきったライヴは過去なかった気がする。2/7に体験したマニックスは27年生きてきた僕にとって、忘れられないライヴになりそうだ‥‥

前回の来日から約5年半が経ち、僕はただ歳を取り、彼等は3人になった‥‥外見はお互いに変わってしまったが、中身は‥‥実は何も変わってないのかもしれない。確かにいろんな意味で成長はした。でも気持ちだけは‥‥そう思えた事を嬉しく感じた、そんなライヴだった。そして僕の中で何かが「弾けた」気がした。『何かが変わる』‥‥帰りの高速の上で、僕は東京の星空の下で「決定的なもの」を見つけた気がした。


1999年2月7日(日)東京・赤坂BLITZ
text by 管理人

この日は東京3公演の初日であり、日曜日ということもあって昨年秋のチケット発売当初から予約が殺到し、結局チケットを入手できず涙を飲んだ人が続出するほどであった。したがって客の入りという点ではこの日が一番といっていいだろう。そのせいか開演前から客の気合いのいれようにはもの凄いものがあり、サウンドチェックで音を鳴らすたびに「ウワーッ」「ギャーッ」という歓声が・・・。
前回の来日当時まだ一部のカルト的な人気を得ていたに過ぎなかった彼らだが、今回は名実ともに本国イギリスでNo.1の人気を誇る国民的バンドとしての来日公演である。前回の来日公演を知るオールド・ファンにとっては果たして彼らがどれほどまでに変わってしまったのか正直言ってこの目で見るのが恐いという気持ちがあっただろうし、新作を聴いてファンになった新しいファンは、ストリングス抜きで彼らの持つ豊潤でスケールの大きい音世界を果たして再現できるのかという疑問が少なからずあったと思う。筆者も、内心かなり不安であった。

しかし、最初の曲「EVERYTHING MUST GO」が始まってみるとそれまでの不安は瞬時に吹っ飛び、彼らの推進力あふれる演奏にぐいぐいと引き込まれていった。ジェームズの、もはや身体の一部とすら化している白いレスポールから鳴らされる高らかで流麗なギター・サウンドはもちろんのこと、ショーンの安定感のあるドラミングといい、ニッキーのスタイリッシュかつ堅実なベース・プレイといい、どこをとっても破綻のないアンサンブルに演奏終了まで圧倒されっぱなしであった。デビュー当時のヘタクソ時代を知るものにとっては感慨深いものがあったと思うし、新作からのファンはステージ上のアグレッシブで熱気あふれる演奏にアルバムとは違った魅力を発見したことと思う。「KEVIN CARTER」のトランペットパートをギターで代用してアルバムよりもよりソリッドな響きを与えたのも効果的だったし、「LA TRISTESSE DURERA」「STAY BEAUTIFUL」「MOTOWN JUNK」など初期の頃の作品は前回の来日公演の時と心の中でひそかに比べてその演奏の上達ぶりに素直に喜びたい気持ちと一抹の寂しさが交叉する感情を抱いたファンもかなり多かったのではないだろうか?またアルバムでは音がややデッドで閉塞的な印象を受ける「YES」はライブで聴くとよりアグレッシブで開放感に満ちているのも新鮮に響いた。
またジェームズ1人のアコースティック・セットで歌われた「BLACK DOG ON MY SHOULDER」や「SMALL BLACK FLOWERS THAT GROW IN THE SKY」などは、マニックスの音楽が持つメランコリックな優美さ、繊細さがよく伝わっていた。どちらもジェームズのヴォーカリストとしての力量の凄さを知るに充分な選曲で、マニックスの魅力は彼の声に負うところが多いことを今更のように再認識させられた。この2曲の間に「東京のみなさんにちょっと遅いけどメリークリスマス」ということでワム!の「LAST CHRISTMAS」。デビュー当時の彼らには全く考えられない選曲だがジェームズのやや甘口のヴォーカルにはよく似合う。

視覚的な面で印象に残ったのは、ステージ・パフォーマンスにおけるジェームズの存在感の大きさである。前回の来日ではどちらかというとニッキーがステージ上を派手に動き回って観客の注目を一人占めしていた感があったが、この日のステージでは片足であの体型からは想像できない(←失礼^^;)速度でくるくる回りながらスキップするジェームズに比べニッキーの動きはリッチー在籍時代に比べるとやはりおとなしく、何曲かは座り込んでしまう場面もありかなりはらはらさせられた。しかし最後には「YOU LOVE US」で先の大阪公演と同様素晴らしい縄跳びを披露してくれた。ここら辺は天才(天災?)パフォーマーの面目躍如である。

この日のライブは、新作を聴いて初めてマニックスファンになった人にとっても、デビューから熱心に聴いてきたオールドファンにとっても、素晴らしい一夜となったのではないだろうか?個人的にはジェームズのヴォーカルがやや力みすぎていたことと、派手なギターソロを期待していたのにそれも抑えぎみだったのがちょっと心残りだったが、それを補ってあまりある音のクリアーさ、明朗さ(これは会場の赤坂ブリッツの音響の良さに拠るところが大きいが)でマニックスの音楽の魅力が遺憾無く発揮されていたと思う。改めてこのバンドのファンでいて良かったと思えるライブであった。


1999年2月8日(月)東京・赤坂BLITZ
text by ノブユキ

カサマ君へ
1992年のマニックストリートプリーチャーズのライヴの日を覚えているだろうか?君には苦い思い出かもしれないけど。大学で偶然、同じ日のライヴに行くことを知り、一緒に行こうとしてたんだけど、君はあの日、バイトの面接があるんで先に行っていてほしいというので、僕は先に会場に入ってライヴを観ていたんだ。ライヴが終わりクラブチッタ川崎の前に座り込んでいると駆け足でやってくる人が見えた。それが君だった。そしてライヴが終わってたことを知るとがっくり肩を落としたんだった。あのころ、演奏する曲がなくて45分で終わるので有名だったんだ。

「最初で最後の来日公演」と銘打たれたライヴはかなりの盛り上がりだった。「終わりを前提に生を輝かせる」なんて言う言葉が当時のロッキンオンにあったりしたものだ。当時の彼らは僕の生きる拠り所、ロックを聴く根拠だったんだ。と同時に自分達の世代で華々しく自爆するセックスピストルズの代わりを観てみたいという残酷で身勝手な欲望があったことも事実だったんだけど。

だから、そのあとで解散撤回宣言が発表されたときには心底失望してしばらく彼らの音からは一切離れていたのだった。君とも、就職直前に「最近の新人ではオアシスいいねえ」などという会話を交してお互いバラバラになったわけだ。音楽雑誌でリッチーの失踪のことは知っていたし、だけどそれでも彼らの音を聴く気にはなれなかった。

僕がマニックスを再発見したのはボスニアのチャリティーアルバム『HELP』でBJトーマスのカヴァー「雨にぬれても」を聴いたからだった。それにしたって、あのアルバムには何のクレジットもないから(輸入盤)、ブー・ラドリーズあたりがいいカヴァーしているな、としか思わなかったんだ。しばらくしてマニックスの手によるということを知り、そして『EVERTHING MUST GO』を聴き、『Gold Against The Soul』『The Holy Bible』を買い空白を埋めていった。だけど、正直なところ、『Gold Against The Soul』『The Holy Bible』はなじめなかった。『EVERTHING MUST GO』はよく聴いたけど。去年、『This is my truth tell me yours』をよく聴いたものの、自分をマニックスのファンであることを認めるのに躊躇があったんだ。それは自分が一度見限ったバンドだからということもあって、今回のライブもチケットを予約して観に行く気にはなれなかった。たまたま、翌日の会議のために東京に来ていて、空き時間が出来たんで当日券で観ることにしたんだ。開演直前まで仕事の電話がかかってきて、赤坂で静岡の土地の話をするなんて、自分がバブル絶頂期のインチキ不動産屋になったみたいだったよ。7年もすれば人はいろいろ変わるものだ。 それと僕が行きたくなったもう一つの理由は、ぜひ自分の目でリッチーの不在をしっかり見届けておきたかったからだ。ギターの弾けないギタリスト。本ばかり読んでいるウェールズの田舎者。であるが故に持ち得たそれまでのロックに対する殺傷能力。彼の持つ言葉は一時期僕を捉えて離さなかった。

「EVERTHING MUST GO」から始まったステージ。チケットは2階席だったけど、僕は一階のフロアのやや前より、ニッキー側で観ることにした。リッチーのいた場所にはキーボード奏者がいた。自己主張はないけど、音楽的貢献としてはリッチーのギターを遥かに上回る堅実なプレイ。ショーンのドラムも、ニッキーのベースも以前よりは格段に上手くなっているけれども、やはりマニックスはジェームスが音楽のことを一手に引き受けている感じだった。これは7年前と変わらなかった。だけど、ジェームスの顔はオヤジ化して大嫌いだった以前の取引先のオヤジにそっくりになったのには苦笑だったけど。
そして大きく違ったのはバンド自体に余裕というか風格が出てきたことだった。本当、堂々としていたし、フレンドリーなMC,ショーアップされた照明、ジェームスのアクション。僕が観た日は体調のせいかやらなかったけど、ニッキーが縄跳びをしていたらしい。そうそう、ワム!の「ラスト・クリスマス」も前日はやったんだって。昔だったらファンに殺されているかもね。
ジェームスが「スウィートホーム・アラバマ」とコールして、レナード・スキナードの曲を演奏して、モータウン黄金期の象徴であるダイアナ・ロス&シュプリームスの「ベイビー・ラヴ」を歌いながら「Motown Junk」に突入するという演出。モータウンを否定して、ジョン・レノンの死を笑い飛ばす、かつての僕の指針だった曲をジェームスは歌詞をまともに歌わず、客の盛り上がりだけを煽っていく。このほかにも結構古い曲をいくつかやった。「Stay Beautiful」なんて最初なんの曲だか分からないくらいだったけど。アコースティックセットでは「雨にぬれても」をやってくれた。ジェームスはやっぱり声がいいなあと感心する。それから「You Love Us」。当初は完全に反語的な意味を持つこの曲が今では本当に愛されていることを確認する曲にもなっているんだ。

マニックスがシーンに登場する少し前の1990年前後にソ連を始めとして共産主義の体制が倒れて、資本主義が勝利したことによって「歴史が終わった」って言い出した学者がいたけれども、自分達の枠組みで物を考えれば歴史は終わったんだろうけど、そうじゃないことはその後の出来事を見ていれば分かる。終わりを前提に物を考えてはいけない。「世界」は簡単には物事を終わらせてくれない。つまり、デビュー当時のマニックスの「終わりを前提にして生を輝かせる」というのは彼らがウェールズの田舎者で終われば、きれいに完結したんだろうけど、彼らがイギリスで売れ、日本で支持されて、アメリカをツアーでまわることによって、彼らは自分達が思いもよらぬ「世界」というものに出会ったんだ。彼らは簡単に歴史を終わらせてくれない世界の真っ只中にいることを知ったんだ。それは「You Love Us」という言葉が反語でも皮肉でもなく、言葉そのものの意味として受け取る世界(=オーディエンス)を見つけたということと同じなんだ。そのために、彼らはこの世界で生き残って闘うことを選択して解散撤回宣言をしたし、それでも、この世界にいることに耐えられなくなってリッチーは姿を消したんだ。

僕は「a design for life」を聴きながら、もう一度リッチーの不在について考えようとした。だけど、全然考えは上手くまとまらなかった。このバンドは残った3人が世界に対してどう立ちう向っていこうかと、何とかしようとして、のた打ち回っているバンドなんだ。目の前で行われていることが全て。それがマニックスの真実なんだ。じゃあ、僕のは何だろう?僕に出来ることは彼らの歌を全身で受け止めること。

カサマ君、今回のマニックスは観に行っただろうか?


1999年2月9日(火)東京・渋谷ON AIR EAST
text by げんすけ

飯も食わずにきらびやかなホテルのネオンを抜けやって来ましたOn Air East!中に入って思ったのは「やっぱりスーツのやつはいない...」そうです。仕事帰りで私はスーツにネクタイという姿でした。中を一周しましたが(するなよ)「やっぱりいない...知っている人もいない。」しかも遅かったのでフロア中程の鉄パイプのあたりで一人寂しく待っていました。入り口でもらったチラシを隅から隅まで3回くらい読んで。でもしっかりジェームスとニッキーの中程に陣取りながら。「早く始まんねーかなあ。でも後ろだし見えるかなあ。」と思ったら始まったとたんに目の前に道が開け真ん中あたりまで行けました。
”Everything Must Go”でいきなりみんな飛んでます。次が”Faster”うぉー!いいのかあ!「俺は建築技師ぃーーー」みんな叫んでいました。”You Stole〜”Kevin〜”ときて”LaTristesse〜”でジェームスの声をしみじみ聞きます。 (そのまま飛んでる人もいた。みんな若いね、元気だね。)
ついにきたよ”Stay Beautiful” Why don't you just. Fuck off!!!”Yes”みんな狂ってます。
ところがここで目の前におっきな外人3人組。「見えねー」と思っていたら、彼らは”Tsunami”のときに波に流されどっか行ってしまいました。すかさずスルスルと前に行ったら目の前3m位の所にニッキーがいるじゃないですか!「うぉー!ニッキー!かっこいい!元に戻ってる!よかったよかった。」
ニッキーは最初サングラスをしてたけど途中で外しました。ちょっとパンダ?でも確かに最初の方で手ぇ振ってました。(のえるんさんに?)
”FromDespair〜”"Motown〜””Motorcycle〜”までやってくれて泣けた!本当に。
”IfYouTolerate〜”大合唱!”Mylittle〜””SmallBlack〜”渋いね。聞かせるね。
”Nobody〜”でニッキーがぴょんぴょん跳んでは右足を前へ出したはなぜ?振付か?”Australia”ではさびの後の所でニッキーも「ダダッダダッダダッダダッフーフー」と歌って(?)ました。”Thisis〜”で呼吸を整え、ラス前”Adesign〜”は感動的合唱。最後”You Love Us”ではみんなぐちゃぐちゃです。ニッキーが客の方に掲げてくれたマイクに向かって叫びまくっていました。ニッキーありがとう。きっと“最終日だから元気に飛び跳ねようヴァージョン”にしたんじゃないのかなあ。Last Christmas はやんなかったし、Faster やったしね。昔の曲もいっぱいやった。
Motorcycle Emptiness までやってくれて泣けてきた。ジェームスもニッキーも飛びまくってました。ショーンは黙々と叩いてました。ドラムを。
キーボードの人(ニック?)は見た目ローディっぽかったけどストリングス響かせました。
ニッキーは体調復活!という感じで結構にこにこしていました。(ばんそこう貼りながら)
でジェームスは例の外人3人組が壁になってよく見えませんでした。更に私の斜め前には"ThisIsMyTruth〜”のジャケットの真ん中の人によく似た人がいて「まさかジェームス?それともショーンのお父さん?」とずっと気になってましたが別人でした。客の方はやっぱり昔の曲の方が元気いいみたいです。みんな波のようになって右へ左へいってました。ダイブしたのも2,3人いたかなあ。(見えた限りでは)

結局アンコールは無しだったけど何か潔くてかっこいい!最後も”You love us” だし。曲もあんだけやったんだ。もう何も言うまい。. やっぱりオールスタンディングはいいね。すぐそこにニッキーがいたもの。やっぱりマニックス!!!と思いながら大汗かいて空腹と飛びすぎでふらふらしながら帰りました。知らない人が見たらただの酔っぱらいのサラリーマンに見えたことでしょう。 みなさんライブで汗をかいたら早めに着替えましょう。風邪ひかないようちゅういしましょう!


1999年2月9日(火)東京・渋谷ON AIR EAST
text by michiyo

とうとう5年4カ月ぶりに迎え討ったマニックス。「リッチーの不在」を確かめるのが怖くて東京公演3日間のみに的を絞り、いざ当日になってもおじけづいて家でモタモタしてました。初日のライヴはメンバーがステージに現れ最初の1音が鳴った瞬間に「おかえり」という気持ちがあふれかえって泣き、バンドの空気の中にリッチーの存在をイヤというほど見せつけられて泣き、終演後は「やっぱり自分の中でリッチー・エドワーズを超える存在はいない」「このバンドからは一生逃れられない」と改めて自覚して号泣。
2日目は、ニッキーの様子を見てへこんでしまい不完全燃焼。このままではいかんと迎えた最終日。前回と同じON AIRということもあるし、自分の気持ちに決着をつけようというか・・・リッチーが自分にとって大切な存在であることには変わりないんだけど、リッチーがいなくなってからの4年間モヤモヤしてたものに整理をつけようと思い(これまで抱え込んだマイナスをゼロ精算したかった)ムンクTシャツを着てリッチー側で観戦。この場所で、この距離で観てこそ、やっとマニックスのライヴにいる実感がわく。顔をクシャっとして歌うジェームス、ニッキーの開脚ジャンプ、黙々とドラムを叩くショーン。
そこにいたのは紛れもなく私の知ってるマニックス。目を閉じると93年の10月と同じ空気が流れてて、やっぱりリッチーの姿が服装までありありと浮かんできて・・・まいりました。目を開けると見えるのはアンプだけなんだけど。”NOBODY LOVED YOU”の時は目の前にぽっかり空いた場所しか見れなかった。
ジェームスとショーンが楽器を壊しているのを見て、ふと「ここのライヴで何らかの区切りをつけようと思っていたのはメンバーも同じだったんだ・・・」と思ったら、やっぱり泣いてしまいました。SELECTに載っていたHOLY BIBLEのツアーで最後にみんなで機材壊した話とか思いだしちゃって。

勝手な思い込みかもしれないですが、それでも私は今回のON AIRはメンバーから会場指定があった、REVENGEに来たんだ、としか思えません。壊れたギターを拾い上げたニッキーの一種呪縛から解放されたような、ふっきれたような笑顔が忘れられない。本当にいいライヴでした。
目の前に立っていなくても、リッチーはそこにいる。やっと素直な目で現在の、これからのマニックスを見ていける。
そう思わせてくれた3人に心の底からありがとうと言いたいです。
長々とたわごとだらけですみません。


1999年2月9日(火)東京・渋谷ON AIR EAST
text by 管理人

今回の来日公演最終日である。この日の会場はオールドファンにとっては実に感慨深い渋谷ON AIR EAST(当時は渋谷ON AIR)。前回の来日(93年)の時にも使われたこの会場の規模は約1000人弱で最前列からステージまでの距離は1mもなく、人が1人入ってぎりぎりの狭さ。本国ではアリーナ級の会場を瞬く間にソールドアウトにしてしまう彼らを間近で見れる贅沢な日だったといえよう。

前日の公演でニッキーの体調が思わしくなく、タオルを顔に巻いてステージ後方で座り込んでしまい、前2回の公演で披露されたなわとびもなかったという話から果たして今日は大丈夫なのかと心配させられたが、いつもどおり予定時間を30分ほどすぎてメンバーが登場、ニッキーもすこぶる元気でファンの声援に笑顔で応えた。前日の一件があってかこの日は圧倒的にニッキーコールがすさまじく、「がんばって〜!」という声も聞かれた。
これは全くの主観であるが、マニックスのファンはオールドファンか新しいファンかは関係なくバンドに対してある種の「家族意識」「身内感覚」を多かれ少なかれ抱いているのではないだろうか。この日に聞かれたニッキーに対する声援もスターに対する「憧れ」というよりはむしろ自分の特別な親友や家族を「応援」する感覚に近いように感じられた。

「EVERYTHING MUST GO」で始まったのは前3公演と同じだったが、その次がいきな り「THE HOLY BIBLE」からの曲「FASTER」。今からちょうど4年前、「THE HOLY BIBLE」リリース後の日本公演が突然組まれたアメリカツアーのために中止になって しまい涙を飲んだファンにとってこの選曲は涙が出るほどうれしかったはずで、 ジェームズが曲名を言った瞬間観客フロアーがどっと沸く。この曲のおかげでテンションが俄然上がっていき、続く「YOU STOLE THE SUN FROM MY HEART」「KEVIN CARTER」でも赤坂ブリッツ以上の熱狂度で盛り上がる。「STAY BEAUTIFUL」ではお約束の「don't wanna see your face・・・」でここぞとばかりに大合唱。この日は「FROM DESPAIR TO WHERE」も取り上げており、大阪や東京初日の時よりも古い時代の曲の割合が増えている。これらリッチーの存在を否応がなしに思い起こさせる曲を演奏することに彼らは内心抵抗を感じているのではないか?という意見もあるが、ステージでこれらの曲を演奏する時の彼らの淡々とした表情を見る限り、かなり気持ちの整理はついているように感じられた。もちろんリッチーの不在は彼らにとっては今でも深い痛手になっていることには間違いないだろうが・・・

この日のジェームズのアコースティックセットは「MY LITTLE EMPIRE」と「SMALL BLACK FLOWERS THAT GROW IN THE SKY」。前者はアルバムではニッキーとのツインリードヴォーカルなので、この日もニッキーと2人で歌うことを期待していたのだがそれはかなわずちょっと残念。しかしこの曲におけるジェームズの熱唱は信じられないほど素晴らしく思わず震えがくるほどであった。あまり純粋に音楽面で評価されることの少ない彼らだが、ジェームズは間違いなく英国で最も上手いヴォーカリストの1人であろう。だてに「歌の国」ウェールズの国旗をアンプに貼っているわけではない。

ニッキーのベースプレイの上達ぶりにも目をみはるものがあった。「FROM DESPAIR TO WHERE」や「MOTORCYCLE EMPTINESS」などの初期の曲でさえアンプから聞こえてくるベースの音の太さに、「今までもこんなにベースがよく聞こえてたっけ?」と驚かされた。これはあくまで噂だが初来日の時はあまりにもヘタクソなのでベースをアンプにつないでいなかったという話も伝え聞いているだけにこの日のニッキーには終始圧倒されっぱなしであった。視覚的なところでも一つ一つの動きがあたかも計算されたかのようにビシッと決まるのである。いちいちポーズを考えているわけではないだろうからこれも長年のライブ活動から自然に身についたものだろう。ニッキーだけではなくジェームズやショーンの動きもどこをとってもフォトジェニックなカッコ良さであり、しばしまるでプロモーションビデオを見ているかのような錯覚にさえ陥った。これも英国No.1バンドとしての自信のなせる業なのだろうか?

ライブ終盤に近づき、「TOKYO, GET PISSED! DESTROY! DESIGN FOR LIFE!」というMCで始まった「A DESIGN FOR LIFE」。本国では彼らの一番の代表曲といわれる曲だがそれ以上にここ日本で盛り上がったのはラストを飾る「YOU LOVE US」。5日の大阪、7日の赤坂ブリッツではここでニッキーの縄跳びが披露されていたのでこの日もひそかに期待していたファンも多かったと思うが会場が狭すぎたせいか縄跳びはなくちょっとがっかり。その代わりマイクスタンドを持ち上げてステージ前方に進み観客の大合唱をひろってくれた。終始笑顔。これだけで充分!縄跳び抜きでも許す。

演奏終了でジェームズは白いレスポールを叩き壊してしまい、ショーンもドラムセットを壊してしまった。壊れたレスポールの胴体を拾って笑うニッキー。いやはや、あらゆる意味で「凄い」一夜だった。


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