あくまでもこれらのレビューは個人的意見なので、怒らないでね!(^^;
また、皆さんのご意見をお待ちしています。


デビュー当初は「所詮ルックスとスキャンダラスなイメージだけ、音楽的な見所は ゼロ」とさんざんこき下ろされたマニック・ストリート・プリーチャーズ。数年後 彼らが国民的バンドとして敬愛されることになろうとは一体誰が予想しただろうか ?田舎のバカ・パンクの域を出なかったインディー時代から、アメリカンHR/HMに傾倒した1st〜2nd、オルタナティヴ・シーンの影響の濃いダークな3rdを経て、ブリット・アウォードのベスト・アルバム賞まで獲得した大ヒット作の4th、「今までの中で最も美しいアルバム」といわれる5th、知的なパンクの真髄を見せ付けてくれた6th、綺羅星のようなヒット曲が詰め込まれたベスト集を経てより洗練を極めた7thに至る経緯を見ると、人間一生懸命努力すればこれだけのことができると励まされる思いがするであろう。以下はそんな彼らの軌跡をアルバム毎に追っていくものである。

1.GENERATION TERRORISTS(1992)


アルバムデビュー前にいきなり「30曲入りの2枚組アルバムを全世界でナンバーワンにして解散する」と発言し 、その後長きにわたってマニックスを語る上で欠かせない事件となった「解散宣言 」。本アルバムはこの「解散宣言」によって客観的な評価を阻まれてしまった不幸 なアルバムである。「解散宣言」によればこのアルバムは30曲入り2枚組でしかも全世界でチャート1位を獲得するはずのものだったのだが、実際は18曲(日本盤では19曲)入りCD1枚(LPは2枚組)、チャートは全英13位止まりという結果に終わっており、故にこのアルバムは「失敗作」でマニックスは「とんでもないイカサマ野郎」だと結論づけるものもあらわれた。だがこれらの外的要因を抜きにして純粋に音楽的観点で見れば本作は実に聴きどころにあふれた快作である。当時彼ら は好きなバンドとしてガンズ&ローゼズとパブリック・エナミーを挙げていたが 、前者の影響が「SLASH N' BURN」、後者は「REPEAT(UK)」(冒頭部SEにPEの「COUNTDOWN TO ARMAGEDDON」がサンプリングされている)とそのヒップホップリミックスである「REPEAT(US)」(PEのエンジニアをしていたニコラス・サンサノが参加している)に見られ興味深い。その他有名ポルノ女優トレーシー・ローズとのデュエットで話題になった「LITTLE BABY NOTHING」、現在のマニックスサウンドにも通じる叙情的で美しい名曲「MOTORCYCLE EMPTINESS」、アルバム最後を飾る(日本盤は最後から2番目)ギター弾きまくりの大作「CONDEMNED TO ROCK'N'ROLL」をはじめ全体的にハードでありながらキャッチーなメロディーと大陸的明朗さを持った曲が多く、どちらかというとUKインディー音楽ファンよりも先入観のないHR/HM系ロックファンの間で好意的に受け入れられたようである。実際HR/HM誌の大御所である某B!誌でもしばらくの間マニックスを取りあげていた時期があり、アルバムレビューでも本作には88点(とみぃさん情報による)と高い得点をつけている。


2.GOLD AGAINST THE SOUL(1993)


「GENERATION TERRORISTS」のリリース後、マニックスは92年5月に待望の初来日 を果たすが、バンドのあまりの演奏能力のなさに日本の洋楽関係者は皆あきれかえ った。特にインタビューでは比類のないインテリぶりを発揮するリッチーなどは実 は全然ギターが弾けないことがステージで暴露されてしまうというダサダサぶり 。「解散してしまった方が彼らのためなんじゃないの」という声すら聞かれたが 、この時期マニックスに解散の意志はとっくのとうになくなっており、むしろより 意欲的にバンド活動に取り組んでいる。この年の夏にはレディング ・フェスティバルに参加して熱演をみせ(でも演奏自体はあくまでもヘタ)、また 秋にリリースされたNME誌40周年記念CD「RUBY TRAX」での「THEME FROM M*A*S*H*」のカヴァーで聴ける一層のHR/HM寄りは来る2ndアルバムの傾向を予感させるものであった。そして翌年6月にリリースされたのが本作であり、前作ですでに見られたハード・ロック指向を一層強め、レビューでもシン・リジィやヨーロッパが引き合いに出されるほど音像・メロディーともに70年代〜80年代HR/HMを彷彿とさせる一方、ストリングスやキーボードを導入したことで本来のマニックスの持ち味である哀愁漂うキャッチーさが前作以上にふんだんに発揮された好盤である。
 実はこのアルバムは嫌い、という人が意外に多い。「解散宣言」の反故を決定づ けたということもあるが何よりもあまりにも曲がヘビメタ的すぎる、というのがそ の理由であろう。もともとジェームズやニッキーがこの系の音楽が好きだった、と いうのもあるが、その他に同時代にデビューしたUKインディーバンドが大嫌いな マニックスであるから彼らとの差別化を進めるために最も非インディー的な音楽を 求めた結果HR/HMに行き着いていしまったというわけなのだろう。しかしだか らといってマニックスがLAメタル的享楽主義者になったというわけではないのだ からそんなに毛嫌いする必要もないのでは、と思うのだが。流麗なギターとストリ ングスがドラマチックな「FROM DESPAIR TO WHERE」、静かな出だしからサビにかけ ての盛り上がりが素晴らしい「LA TRISTESSE DURERA」、クイーンを彷彿とさせる 「LIFE BECOMING A LANDSLIDE」など、楽曲としての完成度は前作を大きく上回るも のであり、特に作品毎にめざましい進歩を遂げるジェームズの熱血ヴォーカルを堪 能したいむきには強くおすすめできるアルバムである。


3.THE HOLY BIBLE(1994)


「GOLD AGAINST THE SOUL」リリース以降、マニックスはボン・ジョヴィのサポートをしたりとますますスタジアム・ロックバンドの道を邁進しているかのように見えた。このままマニックスは勘違い的HR/HMバンドになってしまうのか・・・と一部のファンをやきもきさせたが、94年夏にリリースされた本作は予想を大きく裏切り前作とはうって変わってマニックスの持ち味の一つである叙情性・キャッチーさが大幅に後退し、代わりにノイジーで殺伐とした音像が前面に押し出された問題作。このアルバムではリッチーが歌詞の他に音楽的にもかなり関与していたこともあり、彼の自閉的・強迫神経症的なキャラクターがアルバム全体を覆うまさに「リッチーのアルバム」である。(アルバム全体の70%の歌詞をリッチーが書いている)ここで聴かれるジェームズ のヴォーカルもデモーニッシュで悪意に満ちたもので、マニックスの詞世界が最も 楽曲に反映されているアルバムといえよう。
本作はマニックスファンの間でもっとも人気の高いアルバムであるが、今までのマニックスの音楽のポップで明朗な側面が好きでファンになったリスナーは、このアルバムは一番つらいだろう。ワタシも最初はかなり戸惑ったが今聞き返してみると例えばブラーの「THE GREAT ESCAPE」→「BLUR」、ニルヴァーナの「NEVERMIND」→「IN UTERO」間に比べ前作との落差はそれほど感じない。音像こそ殺伐としているものの 、随所に聴かれるメランコリックなメロディーはマニックスならではのものであり 、この手の音楽にありがちな自己満足・自己完結的な雰囲気も皆無なのはさすがと いえよう。またリッチーの詞世界が好きでマニックスのファンになっている人は本 作が一番読み応え(?)があるのではないだろうか。拒食症のことを歌った「4st 7lb」の反応は多大なものがあり、しばらくの間毎日山のように殺到する自称拒食症 のファンからの詩や手紙にリッチー自身辟易するほどであったという。他 「FASTER」「PCP」など従来ながらの比較的ポップな曲もあり、「EVERYTHING MUST GO」以降からファンになった人にとっても聴かず嫌いはもったいないアルバムである。

4.EVERYTHING MUST GO(1996)


1995年2月のリッチーの失踪により活動停止を余儀なくされたマニックス。一時は解 散かという噂も流れたが、結局は1年近くの沈黙を経てジェームズ、ニッキー、シ ョーンの3人組として復活しファンを安堵させた。彼らにしてみれば幼少の頃より 強力な絆で結ばれていたリッチーの代わりを見つけることなど不可能であったし 、また音楽的にはほとんど貢献をしていなかったリッチーだったから代わりを見つ ける必要などなかったのだろう。96年春にリリースされた本作はリッチーの残した 歌詞が数曲ある他はニッキー単独の作詞によるものである。「EVERYTHING MUST GO」には「全品売り尽くし」という意味もあるが、本作には「リッチーのアイテム はこれですべて出尽くしたよ」というメッセージが込められている、というのは考 え過ぎだろうか?
さて肝心の音であるが、これがまた前作とはうって変わってひたすらドラマチック な叙情的熱血ロック。ストリングスやハープがふんだんに取り込まれ、今やアンセ ムと化している「A DESIGN FOR LIFE」をはじめ、否が応でも盛り上がってしまう楽 曲がずらりと並んでいる。中でもリッチーの歌詞によるものの1つ「SMALL BLACK FLOWERS THAT GROW IN THE SKY」は涙が出るほど美しい。
実はワタシは当初このアルバムにひどく抵抗を感じていた。なんかこの音楽性が 「これはリッチーの失踪の悲しみをへたマニックスが劇的な復活を宣言するアルバ ムだ。みんな泣いてくれ、思う存分泣いてくれ・・・」と言うがために意図的に選択されたもののように思えたからである。これならいっそのこと増○修じゃなくて伊○政則にライナー書かせればよかったのに。みんなメンメン泣くぞ。というのはもちろ ん冗談であるが・・・それはともかく今聞き返すとリリース当時に感じた作為性は感じられず今ではワタシのフェイバリット・アルバムとさえなっている。本作のドラマ チックな雰囲気はもともとマニックスの持ち味であった叙情性やポップ性がより洗 練された形であらわれた結果だろう。ブリット・アウォード受賞という話題性を抜 きにしても90年代を代表するアルバムとして後世に語り継がれるべき名盤である。

5.THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS(1998)


前作「EVERYTHING MUST GO」の大ヒットにより本国では新世代のマニックスファン が急増し、デビュー時からのファンとの対立が音楽誌で話題になるほどにまで幅広 い支持層を獲得したマニックスだが、前作がリッチーの残した歌詞に基づいてレコ ーディングされたアイテムを含んでいたものであったので、本作が3人だけで作っ た最初のアルバムということになる。アルバムのタイトルはウェールズ出身の労働 党左派指導者であったAneurin Bevanの演説の中の一節からとられたものであり、さ らにアルバムジャケットの撮影場所が北ウェールズのGwynedd州Portmeirion(60年代のTVドラマ「The Prisoner」の舞台にもなった場所)であることから、デ ビュー当時は憎悪すらしていた自分たちの出自をここへきてようやく誇りを持って 受け入れることができたと推測される。ニッキーが本作で初めて歌詞クレジットに 自分の本名であるJones姓を用いたのも見逃せない(JonesやEdwardsはウェールズ人 に非常に多い姓)。
さて音楽面に視点を移すと、本作は基本的に前作の延長でありながら前作の流麗さ 、優美さがさらに強調された造りとなっている。またスロー・バラードが多いのも 特徴であり、静かなポジティヴィティーがアルバム全体を包んでいる。 これまでのマニックスのハードな面、激しい面が好きだった人には、このアルバム はやや物足りないかもしれない。前作のダイナミックさ、やもすると「クサい」と もとれるキャッチーさが本作ではやや後退しているからである。特に「A DESIGN FOR LIFE」級のスタジアム合唱ナンバー(何それ)を期待した人はがっかりするの ではないだろうか。だがマニックスの本来の持ち味であるメランコリックなメロデ ィーは本作においてますます洗練され、またコクを増してきたように感じられる 。特に7曲目「I'M NOT WORKING」と本編最後の曲「S.Y.M.M.」の卒倒しそうな美しさときたら!本作で初めてすべての収録曲の作詞を1人で担当することになったニッキーの歌詞もシンプルでわかりやすい。
なお本作は前作に引き続きブリット・アウォードのベスト・アルバム賞を獲得し、マニックスの根強い人気を印象づけた。


6.KNOW YOUR ENEMY(2001)


1999年末にカーディフ・スタジアムにおいて大々的に行なわれた「ミレニアム・ライブ」はマニックスの10年にわたる音楽活動の総括といえるものであり、その後マニックスの音楽性は大胆に変化している。そのさきがけとなったのが2000年1月にリリースされたシングル「THE MASSES AGAINST THE CLASSES」(曲自体は99年夏のV99にて既に披露されていたが)であり、来るアルバムが前2作とは全く異なる路線になる予感を抱かせるものであった。
それからさらに1年を経てリリースされた本作は多くのファンの予想通り前2作の叙情路線を離れ、ドライで硬質な攻撃性を前面に押し出した作品である。しかし一方で以前のマニックスにはなかった実験的な要素を大胆に取り入れており、本作の路線が単なる「原点回帰」ではないことを実感させられる。確かに従来からの王道ポップ路線も残しつつパンク〜ニューウェイヴから70年代ディスコ(!!)まで互いに全く異なるタイプの曲が雑多に詰め込まれているところは1st「GENERATION TERRORISTS」を彷彿とさせるし、前2作に顕著であった過剰な叙情性を一切排しているところは「THE HOLY BIBLE」的だ。ニッキーの歌詞も前作とはうってかわってアグレッシブである。しかし初期の作品に顕著であった「怒り」がしばし「目隠しをされたまま闇雲にこん棒を振り回す」印象であったのに対し、本作にみられる怒りの表現は彼らの過酷ともいえる人生経験で研ぎ澄まされた知性に加え長年のバンド活動の中で培われてきた演奏能力の飛躍的な向上によって格段に自由度・洗練度の高いものとなっている。いわば「大人の怒り」であり、このような表現ができるバンドは他にはちょっと見当たらないのではないだろうか。
さらに特筆すべき点は音楽面での彼らの役割分担の変化であろう。ジェームズの作詞による曲とニッキーのリードヴォーカルによる曲がそれぞれ1曲ずつ収録されている。デビュー当時からのマニックスを知るものにとっては革命的な出来事だ。いずれも「何で今まで表に出してなかったんだ」といいたくなる完成度の高さである。
全体的に歌詞・曲ともにハードで攻撃的ながらも、どことなくヒューマンな温もりと明朗なポジティヴィティーが伝わってくるアルバムだ。


7.FOREVER DELAYED(2002)


新曲2曲(「There By The Grace of God」「Door To The River」)を含む、マニックス初のベスト盤である。当然ながらデビュー時に「1枚アルバムを作って解散する」を実現していたら到底かなわなかった企画である。マニックスのシングル曲はチャートを意識してかアルバムのイメージに必ずしも沿っていないポップ寄りの曲が多く、したがってピンとこない曲も多々あるのだが、通して聴くとマニックスのやってきたことは最初から殆ど変わっていなかったことに驚くであろう。どんなに攻撃性や敵意をむき出しにした内容の曲でも、その根底に流れているのは叙情的でメランコリックなメロディーであって、これがマニックスを過激さだけを売りにする無数の自称パンクバンドと一線を画す点である。できれば音楽性の変遷がより明確にわかるように年代順に並べてほしかったがそれは同名のDVDのほうにゆずろう。CD2のリミックス集はコーネリアスやケミカル・ブラザーズなど著名なアーティストによるリミックスが並び、どの作品もマニックスの曲の持つポップス感覚を独自の方法で引き出している。


8.LIPSTICK TRACES(2003)


過去のマニックスのシングル曲のB面曲やカバー曲を集めた、いわば「裏ベスト」であるが、「表」であるベスト盤「FOREVER DELAYED」よりも人気が高いようである。それは、アルバムのコンセプトに縛られず彼らの好きなように作られた、いわばマニックスの本音が表れている曲群であるからかもしれない。白眉はリッチー在籍時の最後の録音曲である「Judge Yr'self」で、「THE HOLY BIBLE」期のダークな攻撃性がもっとも鋭角的な形で現れている。同じく当時未発表曲だった「Forever Delayed」は同タイトルである「表」に収録されておらず、こちらに入っているのが謎である。CD1が主にB面曲集、CD2がカバー集であるが、チャック・ベリー、ストーンズからクラッシュ、ガンズ&ローゼズ、はてはワム!までカバーしているアーティストの幅の広さには驚愕させられる。自分たちの好きな曲のカバーなのでいつものマニックスと違いリラックスして演奏しているのが伝わってくる。


9.LIFEBLOOD(2004)


マニックスは攻撃的な作品とメロウな作品を交互に出す傾向があるが本作はリリース前から「Elegiacなアルバムになる」と言われていた通り、実験的で攻撃的かつバラエティーに富んだ前作とは打って変わって「IF YOU TOLERATE〜」を髣髴とさせる流麗で洗練を極めつくしたようなアルバム。メンバーが多感な思春期の時に聞いて育った80年代ニューウェイブ(ザ・スミス、ニュー・オーダー、U2など)の影響が随所に現れており、曲を聴くたびに「あ、これまんまエッジのギターじゃん」とにやりとしてしまう管理人のようなオールドファンも多いのではないだろうか(個人的には「The Unforgettable Fire」〜「Joshua Tree」頃のU2の作風を髣髴とさせる曲が多いと思った)。全体的に外に向かって何かを主張するというよりはメンバー自身がリラックスして楽しんで作った感があり、そこが「地味」と評される所以かもしれない。さらにアルバム自体の統一感が高いゆえに、一曲一曲の個性が埋没しており、「何だかだらだら聞いているうちに終わっちゃった」という印象があるのは否めない。現在30代後半になるであろうUKロックファンならお気に入りのアルバムになると思うが80年代にはまだ生まれてないよという人でもマニックスお得意のポップで洗練されたメロディーは充分魅力的だと思う。ただしここで聴かれるマニックスは「Everthing〜」以降の路線の踏襲であり、本作にてリッチーの影は完全に払拭されたように思われる。そこがこのアルバムの全体を支配する「透明な虚無感」なのかもしれない。


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