KEI-SKI
GARAGE Co.,Ltd. 春谷 覚
サイドカーブはスキーの機能を決定付けるとても重要な要素のひとつです。
一般にサイドカーブといいますと半径(R)で判断される方が殆どだと思います(Rのきつい方が回しやすい)が、サイドカーブの作り方には様々あり、その種類は無限です。例えば、スキーのトップからテールまで一つの円弧で作る物、あるいは楕円弧で作る物、双曲線を用いた物。また、前半部分を円弧で後半部分を楕円弧にした物、スキー全長を何カ所かに分けて違った円弧を使ったりと、非常に様々なサイドカーブがあります。ですから例えば、単にこのスキーはRが15mだから回しやすい、21mだから回しづらいと、一概には判断出来ません。確かにRのゆるいスキーに比べたらRのきついスキーの方が深く回せる傾向にはあります。でも一番大事なのはフレックス(たわみ形状)とのマッチングであり、実際のターン時(角付け時)にスキーがたわんで、どのようなエッジラインを描くか、また角付けの角度・踏み込む力が変わっても常にきれいなラインを描けるかだと思います。
フレックスバランスもスキーの機能を決定付ける上でとても重要な要素のひとつです。
フレックスバランスとは、スキーのたわみ形状の事で、スキーの厚みの分布つまりコア(芯材)の厚みの分布によって決まります。殆どの方がご自分のスキーや、あるいはお店に行って展示してあるスキーを手で押して、スキーをたわませてみた事があると思います。一般に柔らかいほど回しやすい傾向にありますが、厚み分布の微妙な違いによって大きくかわります。(ケイスキーではコアを長さ方向に20等分してその部分の厚みを各々かえてバランスを作っています。)
カービングスキーが主流になる前はトップ部が柔らかく、センター部が硬いというバランスのスキーが多かったのですが、カービングスキーになってからは、トップ部がしっかりしていてスキー全長で均一にたわむようなバランスになってきました。これは、昔はテール部をスライドさせてターンしたのに対し、現在はスキー全長を有効に使ってターンするようになったからです。
トーションとはスキーのねじれ強度・バランスの事で、コア(芯材)の上下に使用する補強材によって決まります。補強材の量が少なければトーションは弱くなりますし、多ければトーションが強くなります。例えば、厚めのメタルを使えばトーションが強くなり、その結果エッジグリップが増し安定感も増します。ただ、度が過ぎると安定感はあっていいのだけど引っ掛かりすぎてスムーズにターン出来なかったりしますので、トーションが強い方が良いとは限りません。やはりサイドカーブ・フレックスとのトータルバランスになると思います。
芯材の厚みはフレックスバランスに直接影響してくるものなので、非常に重要です。(ケイスキーでは芯材を長さ方向に20ヶ所測定点を設けて加工しています。)非常に精度を要する作業(設計厚み寸法の±0.05mm以内で加工しています)で、例えばある測定点1ヶ所を開発段階で決定した厚みよりも0.1mm厚く加工したとします、するとその芯材を使って作ったスキーは違ったスキーになってしまうのです。見た目には分かりませんが、実際に雪上に行って乗り比べてみると違いが分かります。目に見えない部分ですが、製造段階では非常に重要な加工です。

スキーには、ターン切り換えをしやすくしたり、ターン中踏み込んだ時にその力がスキーのトップからテールまで伝わりやすいように、アーチベンドをつけています。アーチベンドとはスキーの厚み方向のカーブの事で、これもスキーの機能を左右する重要なものです。
アーチベンドはプレス(成型)時につけるもので、このベンド形状がきれいなラインを描いていないとスキーをたわませたときにきれいなエッジラインが得られません。例えば、同じサイドカーブ・同じ厚みの芯材・同じ補強剤でスキーを作ってもベンド形状がうねっているものときれいなものとでは全く違った感じになります。

滑走面のフラット加工は滑走性やターンのしやすさ、安定性などに関わってくる重要な加工です。コンケーブ(エッジが滑走面より高い)の場合は、滑走性がおちる事はもちろん、エッジが雪面に引っ掛かってしまいスムーズなターンが描けませんし、コンベックス(滑走面がエッジより高い)の場合は逆に、エッジグリップが定まらず安定したターンが描けません。
チューンナップは、スキー本来の機能を100%発揮させるためにとても重要な作業です。滑走面に入れるストラクチャー(滑走中に雪との摩擦によって生じる水を吐き出すための細かい溝の事)は、その深さ・ピッチ等で滑走性やターンのしやすさが変わります。きれいなストラクチャーを入れるためにはまず滑走面がフラットでなければなりませんし、ストラクチャーを入れる際にストーンマシーンの石を高速にして通したり、圧をかけすぎて通したりすると滑走面に焼きが入ってしまうので、ワックスが浸透しずらくなったりします。エッジのベベリング加工はスムーズなターンの導入・抜け、また、アイスバーンでのしっかりとしたエッジグリップなどあらゆるターン(カービング・スキッド)をスムーズに描くために必要不可欠な作業です。一般にお店で展示されているスキーは機械による加工のため、ベベル角が均一で無かったり、エッジの角がきちんとでていなかったりしますので、チューンナップ専門店でチューンナップしてもらう事をおすすめします。(ケイスキーでは製品全てに、手仕上げによるフルチューンナップを施しています)

まずどんなスキーを作るかを決めたら、そのようになるような設計をおこします。サイドカーブの設計とコアの厚みバランスの設計、スペックの設計です。サイドカーブの設計では全体の平均のR(回転半径)をいくつにするか、また前半のR、後半のRをいくつにするか、ウェストの位置をどこにおくか、ターンの入りと出の角度をどうするかなどを決定します。コアの厚み設計ではスキーに力をかけた時のたわみ方、全体のフレックス(硬さ)をどうするかなどを決定します。スペックの設計ではどこにどんな材料を使うかで、乗り味をどうするか、高速安定性重視なのか操作性重視なのかなどを決定します。(例えばメタルの量を増やせば安定感が増し、グラスの量を増やせば反発が増し操作性が上がったりします。)
設計が決まったら次は試作です。まずは滑走面やメタル板、グラス板、芯材など各部材を設計したサイドカーブに切削加工します。次に芯材の厚み加工を行います。各部材が揃ったら今度は金型(設計したサイドカーブで作ったもの)に、接着樹脂を貼附した各部材を順番に入れて熱をかけてプレスします。これでスキーの形になります。プレスから出たスキーは今度は滑走面側、サイド側、表面側と各々仕上げ加工を行います。
スキーが仕上がったら、今度は雪上に持っていって滑走テストを行います。そこで意図したものになったかどうか、様々な条件(雪質・斜面・スピードなど)の中でテストを行います。その結果からサイドカーブや厚み、スペックの改良点を見つけだします。
満足出来るスキーが出来るまで、何度も設計・試作・雪上テストを繰り返し行います。最終的には試乗会でのお客さんの声を聞いて改良する余地があれば改良を行い、製品が誕生します。
メーカー技術者としての観点からアルペンスキーについて簡単に述べさせて頂きましたが、スキーというのはいろんな要素が混じり合って出来た芸術品だと思っています。たった一つの要素でもおろそかになっていたら、良いスキーとは言えません。
皆さんが本当に良いスキーを求めるならば、メーカーやスキー場が主催する試乗会に足を運んでいろんなスキーに乗ってみる事をおすすめします。その中で自分に合うスキーが見つかったら、今度はそれを購入する際に、お店に行ってベンド形状のきれいなものを選んで下さい。(包装されているので滑走面のフラットやエッジの状態までは見れませんので)。見方としては、スキーのトップを持ちテールを床につけてあなたの普通に立っている目の位置から、トップ側からテール側に向かってエッジがどういうふうなラインを描いているか見ること。あるいは、その状態からスキーのブーツセンター付近に片足を乗せて少しスキーをたわませた状態でエッジのラインがうねったりしていないか見てみるとわかりやすいと思います。そして購入したら滑走面とエッジの状態をみて良くなければ、チューンナップに出すことをおすすめします。
購入した後のメンテナンスについては、毎回滑った後にエッジ・滑走面の水分をふき取り、ワックスを貼附してください。ワクシングはアイロンを使用してホットワクシングするのが一番良いのですが、スプレー式等の簡単なものでも構いません。ホットワクシングする場合は、滑走面に焼きを入れないように注意してください、焼きが入るとワックスが浸透しずらくなります。焼きを入れないコツとしてはワックスが溶けづらいからといってアイロンを同じ場所に長くおかない事、ゆっくりでもいいので必ず動かしてあげて下さい。(熱をかける限度:ワックスが溶けて透明になっている時間が1秒以内。)焼きが入ってしまった滑走面は削りなおしてあげないと元には戻りませんので、そうなったらチューンナップショップに出してあげて下さい。
エッジについてはあまりかまわない方がいいと思います。もし角が丸くなったなと感じたら、オイルストーンや人口ダイヤ(ホームセンターにも売っています。なるべく小さい方が使いやすいです。)で目立てしてあげて下さい。やり方としては、まず滑走面側のエッジ面に沿わせて2往復くらい、次にサイド側のエッジ面に沿わせて2往復、最後にもう一度滑走面側のエッジに沿わせてかけてあげて下さい。ゆっくりで構いませんので、角にあてないように注意して行ってください。石を踏んだりしてエッジが欠けてしまうくらい傷ついたら、チューンナップショップに出してあげてください。
※ご参考: 著者の会社のHPアドレス=http://www.kei-ski.co.jp/
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